第17話 逃避行
俺は何とかドス黒い靄を纏った女官や近衛騎士の魔の手から逃げることができた。
俺を襲った兵士が持っていた戦斧を担ぎ上げて魔の森を流れる川沿いに繁える葦原の中を掻き分けながらマルク帝国の人族が住んでいた廃村の方に向かって進んでいると
『ブオーン』『ブオーーン』
と角笛の音が魔王城の方から聞こえ
『パカラ』『パカラ』『パカラ』
と砂煙をあげながら完全武装の近衛騎士団が一路、人族の廃村に向かって進軍していくのが見える。
『不味い!』
と思った俺は身体をできるだけ低くして葦原の中に身を隠す。
千どころか万を越える完全武装の近衛騎士団が走り去って行った。
俺には魔族によく見られる頭に角のような魔臓は無い。
それで人族に紛れればと思って人族、マルク帝国のハインリッヒ辺境伯が納める村へと向かっていたが・・・これでは
『飛んで火にいる夏の虫』
になりかねない何処へ向かうか・・・思案のしどころである。・・・等と
俺は万を超える近衛騎士団が通り過ぎたので、戦斧を立ててそれを杖に立ち上がり後ろを振り向くと・・・大口を開けた大蛇が目の前にいた!
驚いたら立てた戦斧から手が離れた・・・意図したことではない・・・意図したことではないが、ものの見事にその戦斧が大蛇の鼻っ面に当たり食い込んだ。
『しめた!』
勝機を見逃す俺ではない。
手放した戦斧を身体強化魔法をかけながら掴むと思い切り押し込んでいく。
大蛇の顔が二つに割れていく、それでも俺は
『身体も二つに割れろ。』
と念じながら大蛇の血を浴びつつもそのまま押し割っていく。
さすがに5メートルもある大蛇では、真っ二つにする事は出来なかったが、身体の半分くらいの所まで押し割った。
丁度そこに魔物の
俺はその魔石を右手でぐいと抜き取ると、光を発して大蛇が消えた。
大蛇が消えたが俺の右手には黒と白とのまだら模様の大蛇の魔石と・・・倒れた後にはドロップアイテムの
『大蛇の牙』が2本そして『大蛇の肉』
が落ちていた。
頭に女性の声で
『レベルが上がりました。』
とレベルアップの声が聞こえたのだ、その途端レベルアップ酔いか?・・・体が重い・・・体が鉛のように重くなった・・・これは不味い助けて!
『こんなところで倒れていたら同じように大蛇に襲われる逃げよう!』
と思って手足を動かそうとするが・・・意識が暗転した。
『ハッ!』
となって意識が戻った。
俺は葦原の中でそのまま倒れていただけのようだ。
意識がない間に獣等に食われたりしていないか身体をまさぐる。
大丈夫なようだ・・・ホッとして喉の渇きを覚えた。
俺は身体強化魔法を使って五感の感度を上げる。
葦原の先には川が流れているはずだ。・・・川の流れ
『サラーサラー』
と言う水の流れる音が聞こえた。
異空間販売でペットボトルの水を飲めば安全で良いのに川の水音にひかれた。
腰に落ちていた大蛇の牙2本を差して、大蛇の魔石と肉を異空間収納に入れた。
レベルアップで開かれたままになっているステータス画面では
~~~~~~~~~~~~~~~
種族 --(魔族とエルフ族の混血種)
名前 ボドヴェル・マリヌーバ・ジョー
年齢
魔王暦24562年1月15日生まれ 9歳
称号 放浪の王子
レベル 17
使える魔法
身体強化魔法(固有魔法)
異空間収納(レベル数に応じる)
異空間販売 水のみ100円
持ち物
守り刀
兵士の戦斧
大蛇の牙 2本
所持金 5050万5055円
と表示されていた。
称号が魔王城から連れ出されたからか以前の称号が消え去り
『放浪の王子』
だけになっている。
なんか前途多難を暗示するような称号だ。
レベルが俺を連れ出した兵士を倒したり、大蛇を倒したのでいきなり2つもランクアップしたのでレベルアップ酔いが酷かったようだが・・・レベルアップは倒した数もそうだが、倒した魔獣の強さ等のいろんな要素でアップするようだ・・・良く解らん!
それよりも喉の渇きっだ。
戦斧を杖代わりに
『サラーサラー』
と川の流れる音のする方に向かって行く。
川が見えた。
その川は幅2メートル程で澄んでおり水の流れが速いが・・・魚等はいないようだ。
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