第12話 俺9歳で連れ出される!

 話は前後するが俺が6歳になろうとするある日、空き家・・・いや第三夫人の空き宮殿に近衛騎士団の副団長に付いた牛将軍の娘が入った。

 その娘は水牛のような大きくて立派な角を持っていた。

 魔王も新しく入った娘が気に入り、毎晩のように第三夫人の宮殿に通った。

 通えば俺が丁度9歳になった頃当然のこと魔王と第三夫人の間に子・・・それも男の子が出来た。


 ちなみに俺9歳のステータス画面は


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種族 --(魔族とエルフ族の混血種)

名前 ボドヴェル・マリヌーバ・ジョー

年齢

 魔王暦24562年1月15日生まれ 9歳

称号 魔王の王位継承権第一位、エンマ様の養い子、剛力王子

レベル 15


使える魔法

 身体強化魔法(固有魔法)

 異空間収納(レベル数に応じる)

 異空間販売・異空間購入(水のみ100円)


持ち物

 守り刀

所持金 5548万3014円


でレベルは15も上がったがインフェルノの森の魔獣だけではこれ以上上がりにくくなってきたようだ。

 所持金も5千万円を超えているがこの金はこの世界では使えない。・・・今のところ異空間販売で水を買うだけだ。


 何はともあれ今の魔王と第三夫人から夫人とよく似た水牛のような大きくて立派な角を持つた男子が生まれた。・・・俺に続く王位継承権第二位の男子誕生だ。


 俺はエンマ様にシオリと共に連れられて第三夫人の宮殿にお邪魔した。 

 この生まれたての赤子でも王位継承権を有する第二王子で、彼の胸からは強い明かりを放ち立派な角も明るい光を放つ。・・・う~ん明らかに魔法が使える男子の誕生だ。


 魔法か・・・俺は身体強化魔法がやっと使えるようになっているところだ。

 身体強化魔法が使えるようになったとっかかりは最初は座禅を組んでいたが上手くいかず、どうしようかと迷って守り刀を使って前世の剣道の素振りをしていた時である。


 身体を使って身体強化魔法が使えるようになれば、魔素の流れなどが手に取るように分かるようになったので、今度は精神集中の為に朝と夕座禅を組み、魔核を意識して魔素を体の隅々まで行き渡らせるようにイメージしている。

 それが功を奏したのか、今では魔核をイメージしただけで俺の体全体が白く淡く輝き身体強化魔法が楽に発動するのだ。

 身体強化魔法は体全体が魔素を纏った状態になり体の筋力が異常に強まる魔法だ。


 俺は魔族とエルフ族の混血の為か基礎体力が異常に高いようだ。

 例えば普通の魔族は身体強化魔法を使わなくても・・・前世の9歳児(小学校3年生)くらいで100メートルは平均20秒台だが、前世の普通の成人男性の平均値の・・・15秒台で走る事が出来る。

 普通の魔族は身体強化魔法を使えば夢の10秒の壁を軽く超える。

 俺はレベル補正のおかげで100メートルを9秒台で走り、身体強化魔法を使えば5秒台でも走れる。


 それに実際称号にも『剛力王子』等と表示されているように、今では宮殿にある大人3人がかりでも持ち上げれそうもない庭石をなんと軽々と俺一人で持ち上げる事ができるのだ。


 この身体強化魔法と呼ばれるものだが、これはエンマ様が教えてくれた10歳になったら受ける魔法鑑定で魔法とされている火(炎)魔法、水魔法、木魔法、土魔法、風魔法、治療(光)魔法それに闇魔法には含まれていない。

 それで魔法鑑定では魔法を使えない者として扱われ、結局魔王城から放逐される可能性が高いのだ。・・・それに俺、エンマ様の話では王位継承権第一位ながら今の魔王の子ではなく、いつの間にかすり替わった先代魔王の子なので本当に危ない状態なのだ。


 魔族なので10歳になれば魔法鑑定を受けるが、魔族以外で、例えば人族でも10歳になれば『加護の儀式』と呼ばれる適性の判定儀式が行われる。

 適正判定すると普通は農民だが、樵や商人、聖職者になる者もいるが、時には魔王討伐の主役『勇者』が判定の儀式で登場することがある。・・・勇者など魔族に害なす者が現れると魔族側が暗殺している。・・・う~んなんか怖い!・・・だから俺も後1年後には魔法判定の儀を受けなければならないが暗殺には注意をしている。


 何はともあれ第三夫人の宮殿で生まれた第二王子がうらやましい!・・・うん?

 視線を感じるどす黒い靄を纏った女官が俺を見ている。

 そうだ、俺の母親付きだった女官頭だ。・・・う~んいつの間にか第三夫人の宮殿に紛れ込んでいたのか・・・何か悪い予感がする。


 俺が第三夫人の宮殿からエンマ様の宮殿に戻ったその日の夜に俺の悪い予感は的中してそれは起こった。


 窓・・・窓と言っても窓ガラスの無い開口部で、人が出入りしようと思えば易々と出入りが出来るのだ。

 俺は誰か入って来ると感じて半覚醒状態で薄く目を開けると、何とその窓から魔王の紋章の入った鎧・・・近衛騎士の鎧を着た者達が音もなく5人も入ってきた。

 近衛騎士が入って来ると甘い良い匂いの眠り香が焚かれて俺も半覚醒状態から眠りに落ち、隣に眠るポッチャリさんの眠りをさらに深くする。

 近衛騎士達は俺の口を塞ぐと敷布や俺の胸にある守り刀ごと簀巻すまきにして縛りあげ、担ぎ上げるとまたその窓から音もなく出て行く。

 まあなんと手慣れた一連の動作で俺は連れ出されてしまったことか。


 口を塞がれた時に眠り香の甘い良い匂いを嗅がされて、無理に覚醒しかけた俺の意識がストンと落ちた。

 どうやら後宮等の魔王城内では命を取られないようだ。

 俺の守り刀も不思議な雷撃を今放てば俺を巻き添えにすると思ってか静かにしているのだった。

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