第11話 更なるレベルアップ

 インフェルノの森の魔物は地上をうろつくものばかりではない。

 空を飛ぶ翼のある動物では小さな小鳥から知性が高いとされる巨大なグリフォンや竜種が飛び回る。

 知性が高い為に巨大なグリフォンや竜種は討伐対象として国の軍隊が出てくるので魔王城の付近にはめったに現れる事は無く、現れても高高度をゆったりと飛び過ぎていくだけだ。

 大型の鳥類でいてもハゲワシと呼ばれる大きくても翼開長が3メートル程の前世で言う鷲の様な猛禽類が飛んでくる。

 こいつも高高度を飛んでいるが得物を見つけると急降下爆撃機のように翼を折りたたんで落下してその勢いで得物を鋭いくちばしで刺し殺して食べるのだ。

 木々が生茂った場所でも油断が出来ない枝の隙間を縫うように飛び降りてくるのだ。・・・う~んどうやら俺の金髪は良く目立つようで悪い意味でよく襲われる。

 ただ守り刀が危機を察知して打ち落としてくれる。

 こいつから出るのが魔石と鶏肉の他には『羽毛布団』と言う変わり種だ。

 これを異空間販売すると最低でも中銀貨2枚と小銀貨5枚の2万5千円もする。・・・ものによっては大銀貨3枚(30万円)もするのがドロップする。


 俺が出歩くのあまり快く思っていないポッチャリさんに最高級の羽毛布団をプレゼントしたら目をウルウルさせて


「殿下の為なら何でもします。」


と言って監視の目が緩んだ。

 ポッチャリさんの監視の目が緩んだのは良いが、これを目にしたエンマ様から


「羽毛布団を私にも頂戴、くれなかったらエリー(ポッチャリさん)に何処で手に入れてか言っちゃうよ。」


と言って羽毛布団を強要された。・・・しかしどこで目をつけられた?

 それで羽毛布団が手に入る度にエンマ様やエンマ様の娘のシオリ、それに女官達までもプレゼントする羽毛布団だけに羽目になった。

 高価な羽毛布団はプレゼントの品になるばかりで異空間販売をしたことが無い。 

 

 俺の主たる武器の守り刀だけでは、このように飛ぶ鳥や遠くの得物を狩る事が出来ない。


 弓矢・・・確かにこの森で倒している一角ウサギの角は鏃になるが弓矢を背負って城内を歩き回るのは不穏当だし悪目立過ぎる。

 紐に皿状の物を付けてそこに石を包み込むようにして投げるスリングも試してみたがブンブン振り回す音で魔物達に逃げられた。

 スリングでもスリングショット・・・玩具で言う所のパチンコを造ろうとしたが弾性のあるゴムがこの世界ではまだなかった。

 それでシンプルに投石だ。

 身体強化魔法を使って最初は遠くにいる魔獣目掛けて石を投げる。

 最初のうちは上手くいかなかったが2度、3度と繰り返すうちに当てることが出来るようになった。


 石に当てられて一角ウサギ等は驚いて逃げるが魔猪や魔鹿は俺よりも体格が大きいので襲ってくる。

 襲ってくる奴は守り刀で返り討ちにして異空間販売で俺の所持金になる。

 本当に守り刀様様で守り刀が無ければもうこの世には俺はいなかったと思う。

 インフェルノの森の中で狩りを続けて行けば投擲とうてきの命中精度と威力が上がっていく。

 7歳になる頃には2~30メートル離れた魔猪や魔鹿の額を撃ち抜くことが出来るようになり、8歳では上空を飛ぶ小鳥を撃ち落とす事が出来るようになった。


 その頃には樹木の上に隠れ家を造り弓矢を隠しておいて弓での狩も始めた。

 そんなインフェルノの森の通いが7歳、8歳と続いた。

 8歳にもなると一角ウサギの肉等はインフェルノの森の中で焼いて食べようとしたら匂いにつられた体長150センチもある魔狼が目を赤くして寄ってくる。

 魔狼は鋭い牙と硬い体毛、そして何より何匹も集まって襲ってくる強敵なのだ。


 確かに鋭い牙と硬い体毛で倒すのに手こずったが、俺の守り刀の雷光を纏った一撃は凄まじく、黒焦げになって光となって消える。

 魔狼は消えると魔石以外には鞣革と牙がドロップした。

 このぐらいの大きさの魔狼の牙では小銅貨1枚にしかならず、この魔狼の牙を加工しても刃渡り5センチ程の小刀で金にならない。

 加工した魔狼の牙のナイフは8歳児の俺が投げナイフとして使えば丁度良い長さだ。

 鞣革の方は小銀貨六枚(六千円)と一角ウサギよりも高めだ。


 ただ、あまり長い事インフェルノの森の中にいるわけにはいかない。

 長くて3時間、短くて2時間でポッチャリさんが探しに来る。・・・夜間等とんでもない!ポッチャリさんが隣の部屋で寝ているのだ。・・・う~んまたしても神田川の襖一枚のメロディーが聞こえそうな程薄い扉の部屋でポッチャリさんの寝息さえ聞こえる。


 と言う訳で・・・どんな訳で・・・俺のレベルは空中を腕で探すように振ると、ステータス画面と文字が書かれた透明の板が現れた。


~~~~~~~~~~~~~~~

 

種族 --(魔族とエルフ族の混血種)

名前 ボドヴェル・マリヌーバ・ジョー

年齢

 魔王暦24562年1月15日生まれ 8歳

称号 魔王の王位継承権第一位、エンマ様の養い子、剛力王子

レベル 14


使える魔法

 身体強化魔法(固有魔法)

 異空間収納(レベル数に応じる)

 異空間販売・異空間購入(水のみ100円)


持ち物

 守り刀

所持金 5050万5055円


等と表示される。

 レベル14がどんな強さかはわからないが、インフェルノの森の魔獣だけで8歳児の俺がここまでのレベルになったのだ。・・・凄くね俺。

 魔力量は魔石を舐めたり噛み砕いたりして体内に取り込めば魔力量が増えると聞いているがどの程度かは分からない。


 ところで称号の剛力王子は身体強化魔法を使って大きな庭石を持ち上げているのを誰かに見られて噂されたためだ。

 異空間収納には毎月貰っている中金貨1枚・・・流石王子様小遣いが月1千万円だぜそれ・・・が貯まりに貯まって90枚・・・両替しているので大金貨9枚9億円・・・も皮の袋に入れてあるのだ。・・・袋には同一種類の金を入れないと入らないのは不便だ。・・・不便と言えば異空間販売ではこの世界の金貨を両替して所持金を増やす事が出来ないのだ。・・・どちらも出来るならどちらの世界経済も破綻してしまうからかな?

 それに最近新たに出た


『異空間購入の水』


は前世で売っていた1本100円のペットボトル飲料だ。・・・空のペットボトルは異空間収納に入れて販売をポチッと押すと1円戻ってくる。空のペットボトルはオーバーテクノロジーなのでこの世界では使えない、飲み干せば何時も売っている。

 

 今回一角ウサギの焼き肉中に思った以上に魔狼が群がって出て来たので早めに切り上げて、城壁に出来た自然の亀裂の階段を登っていくのだった。

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