第9話 俺6歳で酔っ払う
好奇心旺盛な俺は城門から外に出ようとしたが、さすがに門衛をしている爺さん兵士に
「外は魔獣や獣が一杯いる。
危ないから一人で出ては駄目だよ。」
と止められた。
外に出れられないとなると・・・どこか外に出れる場所を探す。
止められると外へ出たくなるものである。
王城内の俺の亡くなった母親が元住んでいた愛妾の離れの城壁が一部階段状に壊れている。
俺は守り刀を背負い、身体強化魔法を使ってその階段を降りていく、階段を降りた外の世界そこは魔王城の南寄りにある森
『インフェルノの森』
と呼ばれるこの世界ではわりと冒険者の初心者向けの森が広がる。
門衛の爺様が城門側から出るのを止めたのはそちらから出ると
『魔の森』
と呼ばれる冒険者でも中級者や上級者向けの森が広がる。
自然の階段を降りた先はインフェルノ森の端っこでこの辺りは魔王城に遠慮してか人の手が入っていない雑木林である。
木漏れ日が薄らとさして森の中は薄暗い。
俺は守り刀を片手に、その森に一歩足を踏み入れた途端いきなり一角ウサギに襲われた。
そいつは、その名の由来である頭の角で俺の心臓を突き刺そうと身体強化魔法を使って飛びついてきたのだ。
一角ウサギは草食動物ではない、れっきとした魔獣で雑食動物である。
その角で狩りをして倒した獲物を食べるのだ。
俺は守り刀を振るう。
守り刀が発光しながら一角ウサギを切る。
「ビキッ」
と声をあげて一角ウサギは黒焦げになって倒れた。
倒れると直ぐに光となって消えた。
消えた跡には
『一角ウサギの角』『一角ウサギの肉』『一角ウサギの鞣革』『一角ウサギの魔石』
が落ちていた。
『これがドロップアイテムか大量!大量!』
と思ってそれを拾っていると
『レベルが上がりました。』
と言うラノベでもよくある若い女性の声のアナウンスが脳内に響く。
その声を聴いた途端・・・き・・・なんか気持ち悪い!
酒を飲み過ぎた時・・・酒で酔っ払ったような状態だ。
これもラノベで良く聞くレベルアップ酔いと言う奴か!
一角ウサギの肉や鞣革の臭いがきつい・・・吐きそうで捨てる。
腰に下げた袋にはしっかりと一角ウサギの角と魔石を忍ばせた。
魔の森の端とはいえ、こんな所で倒れると獣や魔獣の餌食になってしまう。
魔王城の城壁をゼーゼー言いながら這いずるようにしてあがる。
何とかナメクジが這うように城壁を登り切り、母親の元住んでいた愛妾宅の内庭の芝の上に仰向けで横たわった。・・・ウへ!・・・空までグルグル回ってきた。・・・本当に気持ち悪い。
「で・・・殿下。」
遠くで誰か俺を呼んでいる。
「殿下!殿下!大丈夫ですか?」
オイオイあんまり俺を揺さぶるな!ただでさえ気持ち悪いのに吐く!吐いちゃいそう!
「ウエーッ」
「殿下本当に大丈夫ですか?」
と誰か・・・ポッチャリさんが俺を抱き上げた。
「汗が凄くて、熱も高い本当に大丈夫ですか?」
とポッチャリさんが俺を覗き込む。
ポッチャリさんはエルフ族と魔族のサキュバスとの混血で色香も薫る13歳。
サキュバスの魔性のような女の妖艶さとエルフの怜悧な女神のような美貌が合いまった凄まじい美少女が覗き込んでいる。
ポッチャリさんが俺を抱えて第一夫人の宮殿に駆け込む。
エンマ様にポッチャリさんが俺の様子を見せる。
「フウーン。大丈夫よ水風呂にでも入れて体を冷やせば一晩で治るわよ。」
とポッチャリさんに言って、様子を見るように俺の耳に顔を近づけると
「魔力酔いか?レベル酔いね?何をしたの?」
と言って俺の頬をフニフニした。
ポッチャリさんが俺を抱いて風呂まで連れて行き、俺を抱いたまま水風呂に入る。・・・クッ殺せ・・・若い美少女に抱かれたまま水風呂に入る等・・・クッ殺・・・気持ちいい。
ポッチャリさんの年に似合わない程の立派な巨乳に頭が挟まれて水に浮いているうちに、火照った体から熱が取れてそのまま寝落ちした。
朝、俺のベットには素っ裸のポッチャリさんが俺を抱いて寝ていた。・・・なんか嬉しい・・・(社長!)
ウヒヒ
もぞもぞと俺が動いたのでポッチャリさんが目を覚まし
「殿下!今日一日は無理しちゃ駄目ですよ!」
と怒られて、手早く貫頭衣を着て出て行った。
ところで俺の倒れる原因になった『レベルアップ』て何よ・・・それならステータス画面もついでに見れれば良いのに。・・・等と思ったら出たよステータス画面!・・・文字が書かれた透明の板が現れた。
~~~~~~~~~~~~~~~
種族 --(魔族とエルフ族の混血種)
名前 ボドヴェル・マリヌーバ・ジョー
年齢
魔王暦24562年1月15日生まれ 6歳
称号 魔王の王位継承権第一位、エンマ様の養い子
レベル 1
使える魔法
身体強化魔法(固有魔法)
異空間収納(レベル数に応じる)・異空間販売
持ち物
守り刀
所持金 なし
何と簡素なステータス画面か。・・・それに目の前にあると酔っているので気持ち悪いと思って目の前の文字を振り払うようにしたら消えた。・・・消えた?
アセ・・アセ・汗・・・どうしよう。
ラノベ風に
「ステータス・オープン」
と唱えても出ない。・・・中二病的で恥ずかしくて思わず周りを見回した。
『どうしようこの辺りだったが。』
と思って、消えたところを手で探るようにしたら同じものが出た・・・ホッ。
何度か払うようにすると消えて探すと出てくるのが解った。
俺の種族が混血の為か--か?
正式な名前がボドヴェル・マリヌーバ・ジョーか、父親の姓がボドヴェルで、母親の姓がマリヌーバその間に魔王暦24562年1月15日生まれの6歳児だということが分かったが、魔王暦か・・・この程度の表示ではあまり今のところ使い道・・・ウン異空間収納!?
試しに『異空間収納』と書かれた部分をポチッと押すとステータス画面№2と言う枠が出た!・・・1個だけ・・・レベルに応じてとはこういう事か!
生き物は駄目との注意書きがある。
それで袋に入れて持ってきた一角ウサギの角を入れたら
一角ウサギの角・・・加工して鏃に使う。磨り潰して飲めば精力剤になる。(ウサギは多産だから精力剤か。子供の俺には必要ない!大人になってハーレムでも創れば別だが!)
売れば大銅貨1枚(百円)・・・売却ボタンが出た。
と表示された。
売却ボタンをプチッと押すと所持金が百円になった。・・・大銅貨1枚ではなく何故か日本円の100円だよ?
袋の中に残った残った一角ウサギの魔石を入れたら
一角ウサギの魔石・・・魔工具のエネルギー源、磨り潰して飲んだりすれば魔力量が微妙に上がる。
時間が経てば消滅する為、販売価格は極めて安く1個中銅貨1枚10円だよ。・・・異空間収納中は消滅しない。
と表示された。
試しに魔石を出して守り刀を入れようとするが入らない。・・・意志ある守り刀は生き物扱いのようだ。
ポッチャリさんは今朝、朝食を持ってきたときも
「遊びすぎですよ。」
と怒られて消化に良い物をと水のようなスープを出された。
それで俺は朝食の水のようなスープに一角ウサギの魔石を砕いて飲んだ。
魔力が何となく上がったような気がした。・・・ステータス画面にはラノベでよくある生命力だの体力だの魔力だのの表示が無いので、魔力量がどれだけあるか解らないのだ。
それにレベル1でレベルアップか?・・・なんか変な感じだ。
今日一日はポッチャリさんの言いつけを守って良い子にしていよう。
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