第6話 魔核・魔素・魔管・魔臓・魔力・魔法?

 ニーナの死後エンマ様が俺の養い親になった。

 俺はエンマ様に手をひかれて、後宮の離れの一室からエンマ様の住む宮殿に連れていかれた。

 後宮の中心部に6つの塀に囲まれた宮殿がある。

 その宮殿の内も外も大きさは大きいだけで、部屋だけなら今までの部屋とあまり大差は無い部屋が幾つかあった。

 部屋の窓には窓ガラスも入っていなければ木の枠で蓋をするのも同じ・・・それに部屋には豪華さが無いのだ。

 部屋の中には絵画等の美術品がない、タペストリーのようなものも下げられてもいないのだ。

 将来、絵画等の美術の発展が必要だな。


 人の着る衣装も絹が豪華だといわれる貫頭衣。

 衣装についても前にも思ったが貫頭衣で色が黒か白色では面白みがない。

 刺繍や裁縫技術、染色技術も発達させなければならないと思う。


 俺はエンマ様やシオリとは別の・・・隣の部屋が与えられた。

 ニーナ付の女官達は一応俺付の女官となってエンマ様の宮殿で働くことになったようだ。

 ただドス黒い靄を纏った女官頭は別の宮殿に配属されたそうだ。・・・う~ん何となくホッとしている自分がいる。


 エンマ様は魔王の正妻・第一夫人で、その他には第二・第四から第六と第三夫人が今のところ欠員だが五人もの夫人がおりそれぞれに宮殿が与えられているのだ。

 俺の母親だったニーナは愛妾と呼ばれる妾のような存在で、宮殿等は与えられず他の愛妾もニーナが住んでいたような離れで暮らしているのだ。・・・魔王が忙しいのは夫人や愛妾を抱くのに忙しいのか?


 魔王の子供の中で男子は俺だけで、庶子とは言え俺が王位継承権第一位になっている。

 それに第一夫人のエンマ様が俺の後見人だから地位としても安定している。


 この世界は魔法が使える。

 ポッチャリさんが赤子だった俺の下の世話の際に、お尻を洗う時や乾かす時に水魔法や風魔法を使い、部屋を明るくする時は明り魔法・ライトを使っていた。


 話を聞いているうえで、昔は時間や空間の魔法を使える人はいたのだが、今はいないようだ。・・・とは言え、時空間魔法のアイテム


『魔法の袋』


が古代の遺跡から発見、発掘されることが有るらしい。

 その魔法の袋だが、エンマ様が時々小さな袋から、それには入らないような物を出し入れしている事があるが・・・これが魔法の袋だ。


 俺はシオリとともにエンマ様の後宮にある宮殿で育てられている。 

 男子は10歳の時、魔法鑑定を受けると後宮から出されるのだ。

 魔法を使える子は後宮から出ても、そのまま魔王城に留まる事が出来るが、魔法を使えない子は王位継承権を持っていても後宮から出され、一般庶民に落とされる。

 こうなると魔王城内はもちろんのこと、魔王城の城下街にも留まる事は出来ないのだ。・・・外は魔物の世界だ。

 10歳で外の世界に出されれば命も無くなるのでこの世にも留まる事は出来なさそうだ。


 俺は4歳になった。

 深夜、部屋の扉の開く音が聞こえたので俺は目を覚ました。

 俺の部屋に眠っているシオリを抱いたエンマ様が入ってくるのが見えた。

 この世界の文明文化は魔法で何でもできるためか程度は低い、夜は真っ暗だ。

 エンマ様が見えたのは、エンマ様の頭から生えている大きな羊のような角が明るく輝いて見えたのだ、俺は


『エ~何で?美しく輝いて見える。』


と思って見ていると、エンマ様の心臓付近が衣服を通して淡く見え、手や足の指先、目も淡く輝いて見えた。

 俺はエンマ様が美しく淡く輝いて見えるのがとても綺麗で


『エンマ様が仏様のように光り輝いてとても綺麗だ。』


等と思っているとエンマ様が


「また、微妙に不埒な事を考えたでしょう。」


と言って俺の頬を指で突くとニッコリと笑う。

 俺はエンマ様に抱かれているシオリを見る。

 シオリの頭にも小さな羊のような角が生えていて、エンマ様よりも明るく輝いて見える。

 胸も淡く蛍のように輝いて見える。

 凄いな。・・・しかし胸が無いのは残念だ。

 3歳児では胸の無いのは当たり前だが・・・ああ残念だ!残念だ!


 エンマ様は俺が何を見ていたのか気が付き、シオリの淡く蛍のように輝く胸を指さしながら


「これは心臓の横にある器官で魔核というの、ここで魔素が作られるのよ。

 魔核から体全体に伸びるように明かりが進んでいる細い管が見えるでしょう。

 これを魔管といって魔核で出来た魔素を魔臓や指先そして目等に送っているのよ。

 魔核で出来た魔素を魔管を通して指先に集め、水や火等その人固有の魔法を放つことができるのよ。」


シオリの頭にある羊のような角を指差して


「これは魔臓というの。

 魔臓は魔素を溜めておくところで、魔族独特の頭にある角の様な器官なのよ。


 エルフ族やドワーフ族それにウサギ族のような亜人種の耳が尖っていたり大きかったりするのもそこに小さな魔臓があるのよ。


 人族のように角・魔臓が無くても心臓横の魔核から魔素が送られ、指先に魔素を集めて魔法を放つことができるわよ。

 魔素を作る魔核にもある程度魔素が溜める事は出来るのよ。

 魔素の溜まる量は個人個人だけど魔臓のある魔族は飛びぬけて多いのよ。


 魔法は大体、原則として一人一種類で、使う魔法が同じでも個人個人色や輝きが違うのよ、シオリの方が私より明かりが強いので魔力は強いと思うわ。


 一人一種類と言ったけど私のように水魔法や治療魔法等と何種類も使うことができる人がいるわよ。」


『・・・エーッ!ポッチャリさんは優秀なんだ!』


と俺は驚いた。


「滅多にないけど火(炎)魔法、水魔法、木魔法、土魔法、風魔法、治療(光)魔法それに闇魔法のすべてが使えることができる人がいるわよ。」


エンマ様は俺の手足を見て頭を撫でながら、


「ジョー、今は魔臓や魔管が無いかもしれないけど、10歳なる頃までには大抵の子は発達するものなのよ。

 頑張るのよジョー。」


と言って俺の額に軽くキスして


「今はもうお休みなさいジョー。」


と言って離れていった。


 俺は、その翌朝から座禅を組み、呼吸を整えて、魔核と魔素を感じるように努力することにしたのだ。

 まだ4歳児で、手足がまだ短い、上手く足が組めない・・・なので、足を前に投げ出して座る・・・がひっくり返る。

 俺がじたばたしていると、エンマ様が枕を使えばいいでしょうと、枕に座らせる。腰が落ち着いて精神の集中が楽になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る