第3話 俺の死と転生
俺は剣道のおかげで私大の金属工学関係の工学部に何とか入れた。
当然、俺は大学の剣道部に入部したが・・・そこにたのは鬼瓦・・・失礼神崎先生が総監督だった。
確か祭りの時に阿保面男の暴走族に絡まれていた栞を助けた際に、栞は
「私は一人娘で、私の父親は大学の教授なの。」
とか言っていたが・・・。なに?こんな鬼瓦みたいな教授の娘のはずがない・・・のに。
いやあったのだ。
栞と図書館デートを楽しんだ後、彼女の家に行くと玄関先に鬼瓦がいて
『出た鬼瓦!いえ神崎先生今晩は。」
ビビッて変な挨拶をしてしまった。・・・母親が駐在所の玄関で蛇を見て嫌がったのが良く分かる。
しかし栞の母親とは何度か話したことがあるが父親とはまだだ。・・・鬼瓦が
「いつまで娘を遊びで連れまわしている。」
と言って俺の頭に拳骨が落ちてきた。
本当に痛い・・・!
『エ~、まだ5時前で明るいぜ。』
と思っていたら玄関先で栞が父親の行動に驚いて泣きだりして
『ワアワア』
していたら栞の母親が
「玄関先で何しているの、貴方。」
と言って今度は鬼瓦先生が怒られて小さくなっている。
栞が俺の腕を離さないので、母親に栞ごと応接室に連れていかれた。
仏頂面の鬼瓦先生が俺の前で腕を組んで座る。
母親がお茶を出しながら
「栞が中学校1年生の時
『3年生の剣道部の南雲先輩、背が高くて、男前で、筋骨隆々としていて、剣道も強くて、私の進学希望の高校に行くみたい。』
と言っていたのを聞いたうちの旦那、県立武道館の一般稽古で、垂に南雲と書いた名札を見て、立ち合いをして中学生相手に思わず突いていたみたい。」
と言っていた。
今回の拳骨も、栞がとても楽しそうな顔をして帰ってきたのを見て、父親として大事な娘を取られたと思い、思わず拳骨を落としてしまったみたいだ。
「俺と栞は今まで図書館デートしかしていない。」
と言ったら
「ムウ・・・まあそうか。」
と言って呆れられた。
鬼瓦先生、今回のことで母親にも言われたのかいきなり
「栞と結婚前提なら交際を認めるが、一線を越えるなよ。」
と鬼瓦が鬼になる。・・・ア~怖い!
栞は、高校卒業後K市内にある国立大学医学部に入学した。
俺が警察官から刀工を目指そうと思ったのは、俺の伯父さんが鉄工所を経営しており、高校三年生で部活も卒業した夏休みにアルバイトをさせてもらったことがきっかけだ。
俺が高校生になったころ、親父の直上の兄貴が刀工の資格を取って、伯父さんの鉄工所の横の空き地で工房を作り、鉄工所で働きながら刀を打っていた。
俺の体を見て刀工の伯父が相鎚を打ってみろと、鎚を振らせられた。
刀工の伯父と馬が合ったのか、大学生になって少しでも時間があるとアルバイトとして時々相鎚を打っていた。
刀工のアルバイト等をしているうちに大学生の2年生がかかる大二病を患ってしまった。・・・う~ん中二病を患っておけばよかった。
刀剣女子ならぬ刀剣男子になっちまった。
栞とのデートの場所が図書館から刀剣を展示してある美術館になった。
アルバイトの経験から俺も刀工になってみたいという思いが強くなり大卒後、刀工の伯父に弟子入りした。
それから二年、俺は初めて小太刀を打った。
その小太刀が、今朝白鞘に入って俺のもとに届いた。俺は最初に打った小太刀を栞に渡す約束をしていた。
栞の家近くに来ると、炎が見えた。
栞の家が燃えている!
俺は栞のことしか考えられなくなり、栞の家に向かって駆け出した。
「栞!いるか栞!」
と栞の名前を呼びながら玄関を抜けて、応接室に入る。
応接室に入るといきなり俺に向かって燃えている天井の梁が落ちてきた。
俺の足の上に燃える梁がのしかかる。
自分の肉の燃える臭いがする。
髪が燃え上がる。
呼吸をしようとすると咽喉に熱い煙が入り咽喉が焼き付く、呼吸が出来ない。
息が出来ない。
「苦しい。苦しい!」
俺は苦しみの中で意識を失った。
意識を失ったと思ったら。・・・同時に覚醒して、俺は小太刀を持って立っていた。
俺は周りを見る。
燃えている応接室が見える。
「熱ない?」
本当に熱くない!?俺の足元に燃えている俺が見える?
「俺は死んだのか・・・??」
そう思ったとき、俺の体が空に向かって登っていく。
栞の家の上に出る。栞や、鬼瓦先生、母親が庭にいた。
なんとまあ、俺は無駄死にをしたのか・・・?
俺はそこまで見ると、俺の体が光の塊となり、俺の持っていた小太刀も小太刀の形で光の塊となって俺を先導するように先を飛ぶ。
俺はものすごい勢いで空に向かって飛ぶ、足元は日本地図だ!大きく日本列島が見える。
雲を抜けると、足元は世界地図から地球儀の様な青い地球になった。
みるみるその地球が小さくなり、月の横を通過する。
周りの星々が流れていく。
俺の飛んでいく方向の宇宙が斜めに切られガラスのように粉々になる。
暗黒の宇宙の中に入る。
その中で光の塊・・・神と名乗る人物にあった?
その神から能力を授かり使命を与えられたのだが・・・?
その間の記憶が何故か曖昧だ!
またその宇宙が斜めに切られてガラスのように粉々になると、目の前に一つの太陽系が見えてきた。
俺はその太陽系内で青色に輝く星に吸い寄せられるように飛んでいく。
「その星は地球・・・か?」
違う見たこともない大陸が見える。
その大陸の中央に煙を上げている大きな火山が見える。
その火山の横に大きくて禍々しい城が見える。
その城に向かって俺は飛ぶ。
城が見えた時、俺を先導するように飛んでた小太刀の光を暫く見失う。
城に近づくと小太刀の光が俺を待っていた。
城の離れの一室にある窓・・・窓にはガラスは無く・・・ただの開口部から入っていく。
部屋の中には、横に長い耳を持った金髪の女性がいるこれはラノベ小説に出てくる
『エルフか?』
その女性のおなかは臨月で大きく、子供を産もうと苦しんでいた。
俺はその女性の腹にいる子供の中に入った。
俺がその子供の中に入ると直ぐに生まれでた。
ただ俺が入った子供からは何の感情も生きるているという兆候も無かった。
生まれ出ると直ぐに小太刀の光が俺の胸の上に飛び込んできた。
胸の上で小太刀の光が元の小太刀になると、なんとその小太刀から弱い雷撃が走り死んでいた俺の入った子供の心臓が動き出したのだ。
「チッ」
と誰かが舌打ちした?・・・俺の周りにはエルフの母親の他には、俺を取り出した産婆と女官が3人かそのうちの一人からドス黒い靄のようなものが出ている。
こいつか?
よく見ようとするとその女官が
「我が王に報告してまいります。」
と言って出て行った。
その女官が出ていき暫くすると、大きな羊のような角を頭に生やした、目つきが鋭く、黒いマントを羽織った大男
『悪魔・・・魔王か?』
が入ってきた。
俺を産んだエルフの女が俺を守ろうとするが、魔王はその手を払いのけて俺をじっと見ている。
魔王は俺の胸に持つ小太刀に気が付き、小太刀を取ろうとするが、小太刀から雷光が走り、魔王の手を打つ、魔王は自分の手を見て
「どこから湧いた小太刀か知らんが、魔王の我に抵抗するか。まあ良い、暫くは女。この小童の面倒を見ろ。
十年後、小童の魔法鑑定まではこの城に置いてやる。
おい女官ども決してこ奴らを逃がすなよ。
小童の名前はジョーだ。」
と言って部屋から出て行ったのだった。
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