第15話 いざ、すみちゃんの家へ!
「よろしければ、明日私の家にきませんか?」
体育祭も終わって、7月に突入した初週の金曜日。いつも通りにお昼を4人で食べていると、すみちゃんがそんな提案をしてくれた。
そろそろ迫ってきた学期末試験の勉強会、という名目らしい。
「すみちゃんの家!?行きたい!」
「へぇ~、なんか珍しいね?すみから誘われること、あんまなかったし」
「そうなの?でも、私も少し気になるかも」
そんなこんなで、すみちゃんの提案通りに土曜日はすみちゃんの家に行くことに!
かのかの家には行ったことがあったけど、すみちゃんの家は初だもんね!うんうん、友達の家に行くのはやっぱり楽しい!
そうして土曜日!
かのかとゆかりちゃんとわたしの家でお昼すぎに待ち合わせをして、電車に揺られること大体20分。駅から5分くらいの教えられた住所に行って、私たちは驚愕した。
「こ、ここぉ?」
「え、ええ。そのはず、なのだけど……」
「うわー、すっごいな……」
わたし達の目の前にあったのは、なんとタワーマンション!パパっとその場で調べたら、地上50階建ての高級賃貸マンションだった!
い、いやいやいや!ナニコレ!?すみちゃんの家、もしかしてお金持ちだったの!?確かに気品とかお嬢様感はあったけど、このレベルのお嬢様!?
△
「いらっしゃいですね、3人とも♪」
「「「お、おじゃまします………」」」
ヤ、ヤバだこれ……!エレベーターに乗って、長い時間をかけて47階まで来たと思ったら、そこにはとんでもな広々空間が……!
「えと、とりあえずそこのソファにいてください。私は、とりあえず飲みものを用意してきます♪」
すみちゃんに聞けば、この部屋はすみちゃんのお部屋だそう。
そう、このわたしのアパートの部屋より3倍はありそうなこの空間が!
ど、どうしよう!すみちゃんが前泊まりに来た時、ぽや~っとわたしの部屋を見まわしていた意味が今になって分かった気がする!あれ、絶対わたしの部屋が小さいって思ってたんだ!そりゃそうだよね!?
「ね、ねぇ2人とも、あたしなんか怖くなってきたんだけど」
「わ、私も少し緊張してきたというか……。庶民には、凡そ考えられない空間でいるからかしら」
2人ともガッチガチになっちゃってるし、かくいうわたしもガチガチだよ!うわぁ、ベッドも滅茶苦茶広い……。わたしの家のベッドの何個分だろ?部屋の中も清潔で、The女の子って感じだし、そこはすみちゃんのイメージにピッタリかも!
………………あれ?枕もとの写真、なんか見覚えある?
「お待たせしました♪とりあえず紅茶と、お菓子にスコーンを持ってきました♪」
「持ってくる物までお嬢様だ!?」
うん、かのかには非常に同意する。だって、わたしが普段食べるお菓子なんてグミだよ!?家で飲むのもお茶とかいちごミルクだし、紅茶なんて飲まないよ!
「すみれさんって、その……。お嬢様だったの?」
「んー、そう言われればそうかもしれません。でも、このことはご内密に。家がお金持ちだからって、それだけで態度が変わる人もいますから」
なるほど、それはすみちゃんの言う通りかも。
クラスの皆は良い人ばっかりだけど、どこから漏れちゃうか分かんないし。すみちゃんのこれは、わたしの田舎出身と同じように親しい人にだけ知っていてもらいたい事なんだ。
ご内密にってことは、わたし達は親しい人だと思われてるわけで!ふふっ、なんだか心がポカポカしてくる。そんな風に思って貰えてるなんて、とても光栄だ。
「えへへ、もちだよすみちゃん!この4人だけの秘密、だもんね!」
「……はい、ことちゃんの言う通りです♪」
それからわたし達がしたことは、もちろん勉強!なんてしなくって。
「うわ、なにここ!?マンションの中にジムがあるの!?」
「ええ、24時間です♪」
すみちゃんにマンションの中を案内してもらったり!
「すごいわねすみれさん、この小説って確かもう手に入らないものなのに……!」
「父が読書家ですから、書斎に沢山古本が置いてあるんです♪」
滅茶苦茶に広い部屋の中を探索したり!
「そういえば、他のクラスの友達が体育祭の写真撮ってくれてたんだ!ほら、皆映ってる!」
「ふふっ、ゆかりちゃん目を瞑ってますね♪」
「ほんとだ!前々から思ってたけど、ゆかりって写真苦手だよね!」
「も、もうっ!慣れてないんだから仕方ないでしょ!」
どうでもいいような、学校の延長みたいな話をしたり。
学校が休みの日にこの4人で遊ぶのは初めてで、きっとわたしは終始ニコニコしてたと思う。わたしのだいすきな人達は、今日も今日とてすんごく可愛いのだ!
△
「ぶー、わたしも手伝うって言ったのに」
「まぁまぁ、折角2人が立候補してくれたんですから。今日は2人に任せましょう♪」
時間はもう6時を回っていて、今はゆかりちゃんとすみちゃんが夕ご飯を作ってくれてる。すみちゃんのご両親が今日は遅くなるそうで、それなら一緒に食べようと提案したのです!
最初はわたしが作るって言ったのに、ゆかりちゃんが是非作りたいって言いだして。それに便乗して、かのかがあたしも作るって言いだして。いつの間にか、わたしはお料理班からはじき出されてました!
そうやって待つだけになったわたしは、今はすみちゃんと横並びでベッドに座っていた。
「ことちゃんが料理上手なのは、私はちゃんと知ってますから。今度は私と一緒に作って、2人に食べてもらいましょう♪」
「そだね!よ~し、とんでもないおしゃれ料理を作るんだから!」
「……うん、その調子です」
コテンと、すみちゃんがわたしの肩に頭を預ける。
なんだかこの前見た少女漫画みたいだなと思いながら、わたしは少しだけドキッとした。
この雰囲気は知ってる。ゆかりちゃんやすみちゃんが、わたしに告白してくれた時。わたしに、好きだと伝えてくれている時の雰囲気だ。どことなくむず痒いけど、それでも嫌いにはなれない。
「んへへ、甘えんぼだねすみちゃん」
「……いけませんか?」
「ぜーんぜん!前も言ったでしょ?おっきい我が儘を聞いてくれてるんだから、このくらいの小さな我が儘は気にしないよ」
体育祭の少し前。ゆかりちゃんに話を聞いてもらったわたしは、すみちゃんにもゆかりちゃんと同じ話をした。
ゆかりちゃんも一緒に、改めて文化祭に告白の返事をしたい事を伝えて。そしてこんな状況を、2人は許してくれた。
『それじゃあゆかりちゃん。改めて、恨みっこなしですね♪』
『え、ええ。受けて立つわ、すみれさん』
歪なわたし達の三角関係に、わたしの主導権はどこにもないんだから。できるだけ、わたし達は2人の意に添いたいと思ってる。そうすればきっと、恋愛感情も芽生えてくれる。
でも、この雰囲気だったら言えるかも。わたしが都会に憧れたきっかけの、わたしの思い出の女の子に。
「ねぇ、すみちゃん。1つ、聞いていい?」
「はい。どうしたんですか?」
「すみちゃんって、小さいころにわたしと遊んだ事あるよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます