第15話 答え合わせ


「答え合わせはアジトに来ればいくらでも見つかると思うよ?」

「アジト……?」

「そう、自分“達”のアジトさ。」


彼が自分“達”と複数で括った言い方をしたのはこれで二回目だ。

どうやら彼は一人ではなく、複数の人間と活動しているらしい。ロマン戦士とは似て非なる団体の人間として。


「来てみる?来るかどうかはお前さんの自由だよ。まぁ、行って得するより後悔する事の方が多いかもしれないから、そこら辺は自己責任だけどね。」

「い……行きます。」


徐に差し出された褐色の手を思わず真っ白な手で取り、握る。それはまるで握手をするかの様に優しく握り返された。男性にしては小さくて柔らかく、そして冷たく手荒れや細かな傷だらけでカサついた手だった。


「歓迎するよ、水篠ニコラちゃん。」


途端、優しく握られていた手がギュッと力強く握り直され、それに対し驚く間もなく強く引かれた。

店を出て裏道に入り、まるで何かに追われているかの如く素早く薄汚れたアスファルトを駆ける。引かれている為なんとか走れているが、着いていくのがやっとだ。


「ブ、ブラッドさ、ん……!」


早い、もう少しゆっくり、と沢山言いたいことがあったが、疲れと苦しさと酸欠で上手く声が出せない。

結局まともに言葉を放つ事は叶わず、ただただ安いドラマのワンシーンの様に裏道特有の薄暗く代わり映えのしないダクトだらけの景色が流れては去っていく。

一体どこまで進むのだろうかと彼を止めるのを諦めかけた途端、今度はガクリと視界が下へと下がった。

目の前スレスレを何かの角が通る。空が丸く遠くに飛んでいく。いいや、違う。自分自身が落ちているのだ。地面の下、丸いマンホールの下へ下へと。


「き……きゃあああああ!」


思わず出た甲高い悲鳴が、暗く狭い空間を走り去り、上へと飛ばされる。

擦れるお尻が熱い。異臭が鼻をツンと突く。真っ暗な筈なのに下へ落ちている自身の姿がハッキリと見える。

その全ての感覚を目の当たりにし、恐怖に囚われそうになったが__その前にドサリと背中に床がぶつかる衝撃が来たが為にそれには囚われずに済んだ。しかし背中はとてつもなく痛い。正直最悪以外の何物でもない。


「い、いったたたぁ……!」

「はい、とーちゃく!みんな〜、団長様が帰ったぞーい。あ、この人お客さんねぇ〜?」

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