第14話 三度目
ブラッドの言葉にゴクリと迫り上がってきた『やっぱり』という言葉を飲み込む。
自身の違和感の正体は、表立って出てこないロマン戦士の人間らしい部分だった。
欲深く、妙に計算が混じった、こちらをコントロールしようとしている様な……腹黒い人間らしさ。
「あの、ブラッドさん。私、自分なりにロマン戦士団についてかなりいっぱい調べたんですが……そんな話、聞いた事がないんです。」
「だろうね。調べたと言ってもそれ、ネットとかテレビとか情報誌でしょ?テレビや情報誌なんかはロマン戦士について悪く言うなと上から圧力かかってる上に、いい事書いてる方が売れるからいくらでも嘘を並べるし、ネットに書き込まれた一般人の書き込みなんかは、都合の悪いやつは片っ端から全部消されちゃうのさ。何なら、今なんて裏バイトの副業としてそういったコメントや動画を見つけたら削除するネット監視員なんてのも存在するらしいし。」
「そう、なんですね……。」
「うん。だから自分“達”はそんな奴等は大嫌いだし……壊したくなっちゃうんだよねぇ。」
二の腕に鳥肌が立った。
そしてロマン戦士について調べている際、何個もあった『ロマン戦士団の壊滅』の記事……その内容はこちらに同情を誘う様な書き方をされていただけで、壊滅させた犯人については一切触れていなかった。そしてブラッドの『マスメディアはロマン戦士について悪く言えない』という発言__瞬時に悟った。
ロマン戦士団の壊滅は、他でもないロマン戦士団そのものなのだ、と。
「ブラッドさんはやっぱりロマン戦士……なんですか?」
三回目の質問。しかし相変わらず彼にはロマン戦士の象徴であるロマンバッヂが付けられていない。
しかしロマン戦士に対する知識や内情、口振りなど、彼の発言からはそうとしか思えない要素が沢山あった。しつこい様だが、彼女は勘が鋭かった。
ニコラの質問にブラッドはそうだとも違うとでも答えなかった。ただ、一言こう言った。
「自分にはロマンなんて無いよ。」
またもどちらとも取れる発言だ。
彼には夢があると言っていたし、ロマン戦士と同じ様に笑み喰いを倒す事が出来るからロマン戦士かもしれない。
しかしそれと同時に彼はロマン戦士は嫌い、大嫌い、地獄、壊したくなる、などと言っていた。そんな彼がロマン戦士として活動しているとも思えない。
彼は……ブラッドというこの男は、本当に何者なのだろうか。
湯水の様に溢れ出る疑問の答えを聞き出すべきか、彼にとって踏み込み過ぎな話題かもしれないからやめておくべきかと頭を抱えていると、悩む彼女の顔が面白いのかブラッドはまたもケラケラと喉を鳴らす。
誰の所為でこんな顔になってしまっていると思っているんだという文句を疑問ついでに言ってやりたいものである。
わざとジトッと白けた様な表情で睨むと、やはりこちらの顔色を伺っていたのか彼は決まりが悪そうにサッとニコラから視線を逸らすと、そそくさと酒屋の出入り口に足を向けた。
今度こそ本当に帰ってしまうのかと思い、今日出された宿題しないとな、なんて考えていたが……扉に手をかけた彼から放たれた言葉は意外なものだった。
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