第13話 団体の闇


だが死人に口無し。死んだらロマン戦士の所為と発言できないし、大切な娘さんを死なせてしまったと家族の元にロマン戦士が訪ねて謝る。結果、たった一人の娘の為にここまで親身になってくれるなんて、ロマン戦士はなんて素敵なのだろう。娘もきっと報われます。ありがとうございます、となる。

生きていたとしてもそれはロマン戦士が取り込まれた後すぐに助けてくれたからありがとうございます。ロマン戦士は命の恩人です、となる。

なんともモヤモヤする話だ。こうして調べるとロマン戦士という集団からは『ロマン戦士団は沢山あるから別に出動が遅くなっても良いだろう』『別に人が何人死のうが金はあるから謝ればそれで良いや』『危険な目に遭いながら笑み喰いを倒すより死んだ人間弔う方が団の人気が上がるから得』『一般人は最終的に助かればラッキーかな』みたいなものが見えてくる様な気がした。変に被害妄想をしてしまうのはニコラの悪い部分かもしれない。だがそれは逆に自身の身を守る事にも繋がっている。

彼女は勘が鋭かった。


「私はロマン戦士になる気はありません……ついさっき、学校にも普通の授業を受けられる様手続きを済ませてきました。」


どうしてもロマン戦士に夢を抱けなかった。

こんな疑心暗鬼が片足立ちしている様な状態では、またバッヂを渡されてもまともなステッキを作れる自信が無い。

ニコラの真剣な目と言葉にブラッドは色々察したのか、ふーんと考える様な、そしてあまり関心の無さげな間投詞を挟むと、まぁそれが正解だよ。と言葉を続けた。あの時と同じ声色だった。


「今は色んなロマン戦士団体がある。勿論、探せば真剣に笑み喰い退治に取り組んでいる団もあるだろうね。でも、名が知れてる戦士団には自身の団を有名にする事しか頭に無いものばかりなんだよね。勿論名が挙がる程の団になれば政府から貰える資金も増えるし、仕事も増える。沢山の人間を雇えるし、沢山の笑み喰いを倒せる様になって更に名が挙がるし金も入ってくる。それを知ってしまうと、笑み喰い退治を真剣にやっていた戦士団も、笑み喰い退治の仕事を増やす為にまずは名を挙げようと周りに媚を売り始める。でも媚を売って有名になるその過程で、笑み喰い退治を真剣にやっていた時より遥かに大量の金が入ってくる様になると“笑み喰い退治”という本来の目的を失い、単なる金稼ぎ戦士団へと変わってしまうのさ。今やどの戦士団に入団しようが地獄だよ。」

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