第10話 別れと再会


ゾッとした。助けが来なかったかもしれない、化け物のドロドロの身体の中で粒子となって消えていたかもしれないという恐怖が今更になって心臓を冷やした。

カタカタと震え始めたニコラに、周りの正義はまたも“大丈夫”“安心”“平気”という言葉を繰り返す。瞬間、気付いた。彼等に言葉をかけられる今よりも、青年が笑み喰いに向かっていったあの時の方が大丈夫であった事に。青年が声を掛けてくれていた時の方が安心していたという事に。彼と戦っていた時の方が平気と感じていた事に。

正義を振りかざして絶対の存在を見せている彼等よりも、自分勝手な夢を振りかざしてどこか楽しそうに戦っていた彼の方が格好良く見えたという事に。

押し込まれた救急車の中、身体を揺らされながら考える。ロマン戦士に対する疑点、これからの自分に出来る事、そして__あの青年の正体。

また彼に会えるかは分からない。しかし、会って確かめたい事は山程ある。だからもしまた彼に会えたなら……。


「今度はちゃんと、あの言葉の意味を聞きたい。」


そう決意し、暗くなってしまった街の道路の流れを眺めた。


***


「魔法少女の姉ちゃん、やっほーい。学校帰り?おかえり~!」

「ど、どうも……。」

「なんだ、ニコラ。この兄ちゃんの知り合いだったのか?」


あれから数日後、ニコラの父親の酒屋で普通に青年と再会出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る