第7話 一緒に


「早く__」

「私、少女って言えるほど子供じゃないわ。」


離してくれ、と言いかけた彼の言葉を制止する。

そんなこと分かってるとでも言いたげな目で青年はニコラを見ていたが小柄な彼よりも高い身長で迫り、大人であることを強調して無理矢理にでも黙らせる。

こうすることでしか彼の中にあるニコラを≪守らなくてはならない者≫から≪共に戦う者≫へと変える方法が思いつかなかった。

彼女の出せる精一杯の怖い顔でゆっくり青年に近づく。彼はニコラの行動をただただじっと眺めていた。

やがてするりとニコラが青年を横切ると、二人は完全に横に並んだ。


今思うと最初から彼はニコラの一歩前を維持していた。


ロマンバッヂを発動できたとは言え一般人である彼女に前衛での戦闘はさせるつもりは無かったのだろう。

バッヂを渡したのもあくまで身を守るため。正義の象徴であるロマンバッヂを手に取って『もしかしたら助かるかもしれない』という希望を持たせて少しでも笑み喰いの脅威が向かないようにするためだったのだろう。

だがニコラはバッヂの力を発動させた。魔法少女になりたいという思いを具現化することにも成功した。

青年は本来一人で戦うつもりだったのだろうが、今は二人でだって戦えるのだ。

なにより、ただただ誰かが戦っているのを遠目に見てるだけなんて、そんなの、魔法少女なんかじゃないのだ。


「私はこれを使うのは初めてだけど、夢の大きさだったら君とは変わらないと思う。どうせ一度は消えかけた夢と笑顔だもん。だから……君と一緒に戦わせてほしい。君と一緒なら私、怖くないよ。」


途端に青年の表情が曇る。

何かを思い出しているような、そして何かを考えているような複雑な顔だった。

だがすぐにフッと鼻で笑うように息を吐くと、降参とばかりに両手を挙げて並んだ足をニコラと同じ方向に揃えた。

そんな隙にこちらを攻撃しようと夢喰いは回復した両腕を伸ばす。それを青年はクナイを投げて、ニコラはステッキから魔法の塊を飛ばして吹き飛ばした。


「凄いわ!私、好きな魔法少女のキャラと似た感じの技出せた!イメージするのはちょっと難しいけど魔法って何でもアリだから便利ね!」

「……ははは、なんか、お前さんってば凄く眩しいや。」

「集中すれば回復も攻撃もできちゃいそう!でもその分隙ができちゃうかも。」

「大丈夫。お前さんの隙は自分が埋めたるよ。」

「じゃあ、行きましょうか__一緒に!」

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