第8話 6月

さて、この季節になると、意識し始めることがある


コミケ予算だ


収入と体力の限られた私には、貯金するタイミングと期間が限られてくる


ちりめんじゃこを食わせるために、説き伏せていたちりめんじゃこを雇用させていたチャンネルオーナー


つまりは私達の雇い主が突如蒸発し、チャンネルが実質停止


私は資料代を回収出来なくなった


要するに、リストラを通り越して、「出勤したら会社が爆破されていて何も残っていない」の、最悪の形である


五年もの間焦がれ続けた夢に手を伸ばした時、少し足を引っ張られた


四月は三月から引きずった支払いに収入が消え、五月はそもそも体調不良で収入がなく、あらかじめ買っておいたものだけで凌がなければならない


思わぬ取材先が見つかったり何だりしていたが、なんとかやりくりしきった


案内人と分かれたあとは、もう泥のように眠りたいのに、暴君のようなトライアルを納品し、徹夜することもあった


過酷な旅だが、充実し、非常に興味深い縁も結ぶことが出来た。実に良い作品が書けるだろう


帰宅して泥のように眠っていると、LINEがなんだかうるさい


どうやら経費を払ってほしいらしい


ああ、レンタカー代は、私が出して、ガソリンは彼女が出したんだっけ


とりあえずきちんと計算しておかなければ


とりあえず、帰宅したことと、疲れていることをLINEして寝た


仕事用のアカウントは、「退院予定」を指定してある


暫くゆっくり休まなければ


コミケのために

失った収入を取り返す体力のために


…と、思ったのだが


「法的措置をとります」

「返金対応してください」


………。


なんか、またしても


めんどくせえええええええええええ!!!!!


そして


「中立」と言って私の意見を封じた、「マルに十字架」のアイコンども


引用リツで拗らしてんじゃねええええええ!!!!!


まあ、そうは言っても


法律には正しい使い方がある


よくも悪くも、それに背いた仕事は出来ない


市役所の役人どもは仕方ない。連中はプロにつなぐまでの電話線だからだ


事務屋というのはとどのつまり、だからだ


素人はよく、法律をくぐり抜けると言ったり、冤罪だの濡れ衣だの何だのと言うが


そもそも、法律を成立ならば、刑事罰は与えられないし

行き過ぎた民事もまた、刑事罰の対象となる


要するに、法律とは巨大な盾なのであるから、その盾を円盤投してくるものがいるのなら、ちょいと盾の角度を変えて、軌道をそらせば良い


それで円盤は空しいものとなる


要するに、実害を被らない、命の危険を感じていないならば、怯えた時点で負けだ


…と、頭ではわかっているのだが


なにせ私もヒマワリのバッジには無縁である


念の為、色々と確認し、報告したり相談したりなんのかんのと揃えてきて


その上で、その訴状は成立しないということを確信した


そういう意味で、私はすぐに守ってもらえる準備だけして、仕事に打ち込んだ


ああ、時間の無駄だ


今はインターネットで誰でもリモートでデモも糾弾もリンチもできる


隣人愛はどこに言ったのやら

は面倒くさい


そんなことより、だ


薄い本は一万円札よりも重いのだ


そしてその裏で、私はとあるプログラマー(推定)に少々商談に行った


プログラムのことはよく知らないが、プログラマー(推定)のファンが800人くらいの時から比べると、とても大きくなった


…あ、こういうのを「古参ぶる」というのだろうか? まいいや


要するに、このプログラマー(推定)の影響力を利用して


この暴露本をもっと広めて「売り上げ」を出し、ちりめんじゃこの収入にしようという魂胆だ


初めての試みに戸惑うプログラマー(推定)と、交流音痴のちりめんじゃこは、ちょこちょこすれ違ったりしたが


結果的には、計算通りだった


むしろちりめんじゃこが、文字通りハブられていて、公正な結果になった


ふふふ

さあ、さあ


拡がれ、拡がれ


この腐ったうみを撹拌しろ


その後に何かが次々と現れてくるだろう


―――さて。ちりめんじゃこの仕込みは終わった


この最後の仕上げは八月になる


それまでに私は、とにかくパソコンに向かい、書かなければ


何の筋書きシナリオなのかは、ナイショだ


とりあえず、まだ眠っているだろうちりめんじゃこに通話をかけたが、出なかったので、メッセージを残した


『起きろじゃこ!! 今度は俺が2400円足りなくてカード支払いが出来ねえ!!!』


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