断章 月下美人

この頃私は、不思議な夢をよく見ていた


人間の運命というか、性格、そして、大学の方針なんかを決める、運命のようなもの


初め、人間の運命は、数学の図形の立方体が重なった形をしている


その塊は、表情を滑りながら、色々な色に染まって、その特性を帯びていく。


白は芸術、紫は音楽、黒は「終わり」で、オレンジは「無難」、赤が愛。


「黒」が近づいてきて染まっても、まだ持っている「白」をごしごしと塗り拡げれば、そこは色が混ざって「紫」になる。


「赤」と「紫」は貴重だし、少しでも残しておけば、どうにかなるのだが―――


このあと、この角砂糖のようなものは、ぷよぷよになる。


表向きは「黒」がなくても、「黒」を内包していたことがあったなら、それは途端に「おじゃまぷよ」となり「デッドエンド」


オタマジャクシが通る道が一本あって、おじゃまぷよ以外のぷよぷよたちは、同じように色に影響を与えながら、大きな巨人になっていく


しかし、色とりどりの4つのトコロテンゴーレムのようなものが、ゴールに入ると、途端に「オレンジ」に染まって、何もかもが塗りつぶされるのだ


そしてこのトコロテンは、その特性や大きさに従い、街を作る


愛に溢れたトコロテンは、街を焼き滅ぼし、自分も燃え尽きた


緑ばかりのトコロテンは、森ばかりが広がり、人が住まなかった


茶色ばかりのトコロテンは、荒れ地で水がなく、生き物はそこで皆死んだ


緑と茶色がいい感じに同居していても、「群青色」がどちらに配置されるかで、戦争が始まったり、栄えたりする


あるいは、サイゼリヤの間違い探しも裸足で逃げ出すほどの、攻略手順を知っていてもうまくできないギミックをクリアし、「4つのストーリー」を見なければならない


少しでも失敗したら、リトライはない


最後まで突っ走って、恐ろしく昏い、サメのような地獄の中に何度でも放り込まれる


「ベストエンド」を見ていても、「ベターエンド」を見ていなかったらやり直し


もちろん、バッドを既に見ていても、何度でも地獄に放り込まれる


それを4パターン繰り返すと、私は宇宙の豪流の中を安全に漂って、満点の天の川を見上げながら―――


「攻略方法」が分からない人のために、ずらりと並んだサメの口に泳いでいって、手を掴み、可能な限り「記憶」を受け継がせる


………意味は、知らない。


同時期に見た夢で私は、「宇宙へのシースルーエレベーター」に乗り、大きなバラに向かって登っていた


バラのもとに辿り着けば、楽になる


そんな確信のもと、エレベーターで登っていく


が、バラがいよいよ見えた時、なんとなく、本当になんとなく、嫌になった


そして私は、エレベーターの壁を蹴り飛ばして、背中でガラスをぶち割り、地球に落ちていった。頭上の地球は青くて美しい


―――相棒と一緒に


それはまるで、神が私に、「地にあれ」と、使命を再び、思い起こさせたようだった

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