第5話 3月
3月になった
2月の支払い地獄を終え、ほっとするのも束の間
ちりめんじゃこのための戦いは続く
ドブ川にド気合を入れ、やっとの思いで申請書を書かせることに成功した
しかし、どうしても審査の時間はかかってしまう
そうこうしているうちに、ちりめんじゃこの食べ物がまた無くなった
ちりめんじゃこにはヘルパーがついている
それなのに、この食材の減り方はおかしい
本当にちゃんと食べているのか
本当に「料理」をしてもらっているのか
話を聞くと、そもそも材料が買えないので、あり物で作ることが出来ないとのことだった
パスタ一束買うことが出来ない
小銭しかない生活の上に、更に立て続けに、主に電気界隈のインフラの滞納が発覚した
何故そんなになるまで気が付かないのかと問うと、
「忘れちゃったから」
と言った
ちりめんじゃこの病気の症状のひとつに、「重度の物忘れ」がある
自動引き落としにすることは出来ないのかと問うと、
「調べてない」「店に行けない」
とのこと
ちりめんじゃこの病気を身をもって知っている私には
怒鳴る気も怒る気も起きない
だって「それ」を助けてくれるはずのヘルパーが、何のヘルプもしていないのだ
彼らは私が過去に送った食料のことすら把握しているのか疑わしい
ちりめんじゃこは、お前のメシの種じゃない!
そう思っても、私には何も出来なかった
私は同時に、福祉の人手不足や、ノイローゼのクレーム内容なんかも知っていたから
結局、私はちりめんじゃこの生活保護が降りるように、
そして、唯一の収入源であるYouTubeチャンネルをひたすら稼働させるために
シナリオを納品し続けることしか出来なかった
この頃、ちりめんじゃこを雑用係に雇ってもらっていたYouTubeチャンネルは
TikTokに多数転載されたせいなのか、収益化出来ていなかった
再審査には3ヶ月かかる
クライアントは、「下積み」「暗黒時代」を理解していない
私の給料を途中まで払ってもらい、ちりめんじゃこも定収入を前払いしてもらい
ひたすらに支払いに追われた
もうないか?
もう大丈夫か?
いつになったらお前は、金に怯えなくて済むんだ?
徹夜と朝寝を繰り返し、体調が優れない中、何度もドブ川にド気合を入れる
声が掠れる
頭が痛い
意識が朦朧とする
夢と現実が両立し、明確な「夢の世界」越しに現実が見える
でも日雇いバイトサービスの「メルハロ」には行かなくちゃ
足りない
足りない足りない足りない足りない
ちりめんじゃこの為に使った金は惜しくない
でもカード会社は、人情では動かない
繰り上げ返済が出来るまで稼いだが
メルカリの定額払いは繰り上げ返済は出来ないとのことだった
仕方がないので、メルカリに吸い上げたお金を使い、なんとかカードを2社支払った
3月の末、ちりめんじゃこから連絡が来た
どうやら「一時補助金」について、勘違いしていたらしい
ドブ川から変わったケースワーカーの声は優しそうで
支給日までの1週間分の金を貸して貰えたという
私が保護を受けたのは中旬だったし、施設にいたから
システムが違うのだろう、と、この時は思っていた
回転する身体と天井を見上げながら、シナリオライターとしての契約は
日払いの仕事のためにどんどんとトライアルを打ち切られていった
でも、いい
私はやった。成し遂げた。
ちりめんじゃこを、ちゃんと国に繋げきった
嗚呼、本当に、本当に!
生きてくれて、ありがとう!!!
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