第43話 ラプラス魔法学園

第6支部で準備を整えた俺達はラプラス魔法学園に向けて出発した。

すでにトーマスは先行して学園に戻っているため三人旅だ。


「もうすぐ到着しますよ。ロイ君」


「ロイ君ってなんだか変な感じ。でもなんかいいかも……」


「そ、そうか……?」


普段はレックスとしか呼ばれたことがない俺だが流石にレックス様、なんて呼ばれてたらバレる。

なので全員偽名を使いあたかも仲の良い同級生を振る舞うため敬語は無しにしたのだ。

まぁイリスの場合は敬語がデフォルトなので敬語のままだが。

ちなみに偽名は俺がロイで、イリスがエリーで、デイジーがデボラである。


「それにしてもエリーの金髪は似合うな。俺は黒も好きだがこう見ると甲乙つけがたい」


「そ、そうですか……?ロイ君もその髪似合ってますよ……!」


実は俺もイリスもこの世界では珍しい髪色のため金のウィッグを被っている。

頭髪検査もあるにはあるがマキシマムがかなり精巧なウィッグを作ってくれたため近くで見ても全く違和感がない。

顔はアジアなのに金髪になったのでイリスは清楚可憐な大和撫子からギャルみたいな格好になった。

まあ髪色だけなので中身は真面目なイリスのままだが。


「ん、ロイ君。私は?」


「あはは、デボラも制服似合ってるよ」


そういうとデイジーは満足気に微笑んだ。

あまり表情の変わらないデイジーが笑うと本当に嬉しいんだなと思う。


「あ、門が見えてきましたね」


「本当だ。やっぱりデカいな」


「流石ラプラス魔法学園」


俺達が門の前に立つと警備員さんが近寄ってくる。

見たところ門の警備員だけで10人以上はいてこれだけでどんだけ人件費を食ってるのかなぁとどうでもいいことを考える。


「この学校の生徒さんでしょうか?でしたら学生証をお見せいただきたいのですが……」


「ロイと申します。実はこの学校に新しく転入してきたんです。教頭先生に案内をいただけると聞いているのですが……」


「なるほど、そうでしたか。では連絡を入れますので少々お待ち下さい」


実はラプラス魔法学園への転入生は少なくない。

各地で実績を上げるとスカウトが来たりするのだ。

なので俺達も怪しまれること無く警備員は学園の中に入っていった。

そして十分ほど経つと先程の警備員が戻ってきた。


「失礼しました。教頭先生からの承諾を得ましたので中へお進みください。そちらで案内されると思いますので」


「わかりました。ありがとうございます」


門が開き中に通される。

どうやら上手くいったようだ。

俺達は全く怪しまれることなく中に入ると広大な敷地と様々な施設や建物が目に飛び込んできた。


「これは……すごいな」


「はい。これならば世界最高峰の教育機関と呼ばれるのも納得がいきますね」


「……すごい」


数え切れないほどの生徒が至るところで思い思いに時を過ごしている。

まるで前世でオープンキャンパスに行った大学のような雰囲気だった。

まあそれよりも何倍も大きいが。


「ロイくん、エリーさん、デボラさん。おまたせしました」


後ろから呼びかけられ振り返るとトーマス教頭が立っていた。

前と違い教員服を身にまとっていて教授みたいだ。

教授なんて直接見たこと無いからイメージだけど。


「それでは学園内の案内をさせていただきますね」


「よろしくお願いします」


トーマスに連れられ学園内を回り始める。

さっきは遠目でしか見えていなかった施設たちも用途と共にゆっくり説明してくれる。

見た目だけでなく実際に素晴らしい学校でありもし黒白双龍団を立ち上げていなかったらここで魔法の研究をするのも楽しかったかもしれない。


「次は3人が授業を受けることになる教室です。ちょうど今は講義をしていると思いますので外から見てみてください」


そう言って通されたのは一つの教室。

この学校はラノベとかでありがちな実力でクラス分けがされるのではなく完全ランダム。

同じ授業を受け、更に研究したいものはサークルや個人で研究する。

そういう学校なのだ。


「今は生物学の講義をしているようですね。なるほど、興味深いです」


「エリーは何か興味のある授業はあるのか?」


ここは魔法学園とは言っているものの習えるものは魔法だけじゃない。

体育だって必須科目に入っているし専門的な知識を幅広く学ぶことができるのだ。


「そうですね、今は教育系の授業を受けてみたいです。すぐに必要になると思いますし」


「あ、ああ。そうだな。デボラは?」


「私は勉強好きじゃない」


俺は引きつった笑みをなんとか誤魔化すようにデイジーに質問するとバツが悪そうに顔を背けられた。

どうやらデイジーは勉強が好きじゃないらしい。

まあ卒業しなくちゃいけないわけじゃないしある程度ついていければいいだろう。


「では最後に3人の寮に案内します」


寮!

一度寮って入ってみたかったんだよなぁ……

毎日が修学旅行みたいな感じなんだろうか?

ルームメイトと夜恋バナをするっていうのをぜひともやってみたい!


「では、こちらです」


俺はルンルン気分で歩き出す。

この世界に来て旅は死ぬほどしたけどこういうイベントも欠かせないよな!

やっぱり異世界生活を楽しまないと!


そして歩くこと10分ほど、明らかに女子寮っぽい建物にものすごい居心地の悪さを感じているとある部屋の前でトーマスが止まった。


「ここがデボラさんの部屋になります。ルームメイトは同じクラスの者ですので。こちらは鍵です」


「ん、ありがと」


そう言ってデイジーは自分の荷物を持って部屋の中に入っていった。

……あれ?イリスとデイジーは同じ部屋じゃないの?


「お二人の部屋は別に準備してあります。こちらへ」


少々の疑問を抱きつつも俺とイリスはトーマスについていく。

するとトーマスは女子寮を出て違う建物に入った。

え?イリスは女子寮じゃないの?

ますます止まらない疑問符を浮かべトーマスはようやくある部屋で止まった。


「こちらが


「…………は?」


「…………ふぇ?」


一瞬言葉の意味が理解できずに脳と体が硬直してしまう。

そして戻ったときには思わず声を上げていた。


「はぁ!?なんで俺とエリーが同部屋なの!?」


イリスの画策か?と思ってイリスを見たら顔を真っ赤にしてめちゃくちゃ珍しくぽかんとなっていた。

どうやらイリスが原因ではないらしい。


「お二人はウィッグを着用しているため無関係なルームメイトを付けるわけにはいきません。本当はエリーさんとデボラさんに同室になっていただこうと思っていたのですがロイくんを一人部屋にするのが現実的に難しく……」


「なんで難しいんだよ!?」


「男子は今奇数人でして関係ないルームメイトと同じになってしまいます。それでなくてもこの学校は転入生が多いので特別扱いをするとバレてしまう可能性が……」


「く……」


そう言われてしまうとそうかもしれないとどこか納得してしまう自分がいた。

転入生が珍しくないから門番にも怪しまれること無くここまで来たのだ。

潜入中に新たな転入生が来てもおかしくない。


「でもエリーも男の同部屋なんて嫌なんじゃ……」


「わ、私は……ロイくんとなら別に構いません……」


イリスはさっきよりも顔を真っ赤にしてそう言う。

その姿はとても可愛らしく思わず見惚れてしまったせいで代案を出すのが遅れてしまった。


「ここは婚約者棟なので自然と紛れ込めると思います。こちらは鍵ですのでお二人に渡しておきますね」


「え?あ、はぁ……」


って流れで鍵を受け取ってしまった!?

しかし引き止める間もなくトーマスは行ってしまった。


なんで……なんでこんなことになったんだ……


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なんかラブコメの1話みたいなの始まった笑

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