第42話 制服の魔力

「ラプラス魔法学園って……あの、か?」


「他に同じ名前の学校が存在しているかは存じませんが世界で一番有名な学校のことですよ」


そこから誘拐すべき人物って一体どんな大物が出てきちゃうんだよ……

っていうかそこから人材を引き抜こうとしてる時点でどこかしらの国に喧嘩売ってるようなものなんだが。

ってもう売っちゃってるのか……


「もし、もしだぞ?仮に計画を実行するとしたらどうするつもりだ?」


「学園の上層部に私たちの協力者がいます。その方に頼んで私たちの身分を偽装して生徒として学園に潜り込もうかと」


ラプラス魔法学園の上層部に協力者がいるのか!?

賄賂とかめちゃくちゃそういう不正に厳しいはずなんだけど……

正体がバレたら本当に笑えない話だ。


「お願いします。この一手は我らの今後に必ず活きてくる一手であり多くの人々を救うこともできます。だからどうか許可をください」


そ、そんな言い方されちゃったら断りづらいじゃねぇか……!

人々を救うためってこれでもし俺が断ってたくさんの人が死傷してしまったら俺はとてつもない罪悪感を抱えることは間違いなしだ。

もはや道は制限されているも同然だ。

そんな罪悪感を抱えながら幸せに生きられるとは思えない。


「わかった。ただし条件がある」


「なんでしょうか」


「潜入までは許す。だがそれから先は現場判断だ。人材の引き抜きも強制的に攫うのは許可しないしその誘拐すべき人物とやらもそいつの人柄やらなんやらを報告してもらって俺が最終的に判断を下す。いいな?」


「でしたらレックス様もご同行願えないでしょうか?学園の外に報告書を何枚も出すのは現実的に難しいですし聞くより直接ご自身の目で確認するのが一番正確で早いと思いますから」


…………墓穴を掘った。

これでもし行きたくないとか言ったら自分は動かないくせに無理難題を押し付ける嫌な上司じゃない!?

あと御剣たちを派遣したら優秀なやつを片っ端から攫ってきそうだからなぁ……

流石に俺達の都合で他人の人生をぶち壊しまくるわけにはいかない。

できれば説得して誘拐ではなく勧誘しなければ。


「わかった……俺も行こう……今回はどの御剣を連れて行くつもりだ?」


「今回はデイジーさんに付いてきていただこうかと。彼女がいる支部はラプラス魔法学園から近いですし見た目の観点からも適任です」


御剣は基本的に各支部に一人ずつ配属される。

あくまで基本で御剣がいない支部だってあるしクレアとセレナは2人で同じ支部にいる。

今回はたまたま適任の御剣の支部が近くにあったようだ。


「わかったよ……じゃあ行くとするか」


「はい。早速支度してまいります」


ライオネルとの戦争が終わったばかりなのにもう次の任務に行くことになってしまった……

っていうかライオネルでやるべきことが終わったらイリスは休息を取るって言ってなかったか?

でも人材問題を解決しないと結局休めないのか……


(イリスは俺より働いてるんだから俺が泣き言言ってられないな……イリスがゆっくり休めるように精々頑張るとしよう……)


休みはこの任務が終わったらたっぷり貰うとしよう。

人材が増えればそれだけ余裕ができて俺も休みが取れるはずだ。

俺は自分にそう言い聞かせて再び旅の準備を始めるのだった。


◇◆◇


〜2週間後〜


「ここが第6支部か?」


「はい。既に協力者も到着していると彼女からも報告がありました」


「そうか。じゃあ俺達も行くとしよう」


「はい」


ようやく目的地である第6支部に到着した俺達は建物の中に入っていく。

街の中に溶け込んでいるアジトもあるが今回来たここは人里離れた場所にこっそり作っているタイプだ。

そして中に入った瞬間──


「「「ようこそ第六支部へ!レックス様!イリス様!」」」


「……いつからこの支部はこんなことになったんだ?」


「おそらくレックス様が訪れると知ればどの支部でもこうなると思いますよ」


俺達を待ち構えていたのはずらっと数え切れないほどの構成員たちが一糸乱れず並び敬礼してレッドカーペットまで敷かれている超歓迎体制。

いきなりそんなことをされても喜びより困惑のほうが勝ってしまう。

俺達がレッドカーペットを歩いていくと一人の少女と中年の男性が立っていた。


「ようこそ、レックス様。わざわざここまで足を運んでくださりありがとうございます」


「御剣会議ぶりだな、デイジー。元気にしていたか?」


「はい。負傷も病もなかったです」


この目の前の少女はデイジー=スコット。

ショートの水色の髪とこの世界では割とレアなメガネが特徴的な見た目は15歳くらいの少女。

小人族で姿が幼く見えるらしく実年齢は25歳くらいなんだとか。

れっきとした御剣の一員で第九席だ。

二つ名は『深凪みなぎ』である。


「お久しぶりです、デイジーさん。今回は突然協力を仰ぐことになってすみません」


「ん、大丈夫。レックス様の力になりたいから」


デイジーは普段は割と無口だ。

だが御剣相手ならそこそこ話してくれる。

俺のほうが年下だけど可愛い妹だと俺は勝手に思っている。


「はじめまして、レックス様。私はラプラス魔法学園で教頭を務めております、トーマスです。よろしくお願い致します」


教頭!?

教頭が黒白双龍団の味方なんてしていいんですか!?

世界的に見ても結構地位が高めな勝ち組だと思うんだけど!?


「はは、意外そうな顔をなされていますね。実は私の妻がジパン人なのです。妻や子どもたちのためにも私にできることがあればいくらでも協力いたしましょう」


「なるほど。ラプラス魔法学園の教頭がなぜと思ったがそういうことだったのか」


「はい。今回は身分証や生徒登録など経歴の偽造。部屋や制服の用意に情報提供を担当させていただきます」


この人も随分と働いてくれるんだな。

上役とは聞いていたけどまさか教頭とは思ってなかったからこれは予想以上の支援が期待できるかもしれない。


「一度制服を試着していただけませんか?一応あらかじめ伝えていただいた情報通のものを用意させていただきましたが……」


そう言って俺達は制服の入った紙袋を受け取る。

制服なんて何年ぶりだろうな。

18年ぶりくらいか。

俺は男子更衣室に入り制服に着替える。


「へぇ、結構かっこいいデザインしてるんだな。この格好してると前世を思い出す……」


魔法使いっぽい制服ではなく普通の高校の制服みたいだ。

いくつか付与魔法がかかっていてそれ以外に特筆すべきことはほとんどない。

デザインはかっこよかった。


「さて、イリスたちは……まだ来てないみたいだな」


俺がさっきの広間に戻るとトーマスが待っていた。

褒めてくれたので一応感謝を伝えておいた。

そして世間話でもしながら待っていると……


「レックス様。おまたせしました」


「おまたせしました」


「お、来たか2人……とも……」


正直に言おう。

女神が2人いた。


イリスはもうこういう高校生モデルがいてもおかしくないって感じに制服が似合っている。

黒髪ということも相まって前世にこんな同級生がいたら脳内でラブコメを想像しまくっていたことだろう。

軍服も凛々しくて良かったが制服というのはまた違った魅力を放っている。


デイジーは髪色からコスプレっぽくなってしまうのでは?とか考えてたけど全然そんなことはない。

それでいて無口クールな後輩キャラとか学校中の人気になること間違いなしだ。


「あの……似合わないですか?」


「いや!2人ともめちゃくちゃ似合ってるぞ!そう思わないか?トーマス」


「はい。2人とも絶世の美姫でございますから」


今まで任務だなんだと億劫だったが制服姿のイリスとデイジーがたくさん見れると思ったらやる気が出てきた。

制服って素晴らしい!


─────────────────────────

2週間前くらいから始めた新作


『異世界転生したので本物のくっころが見たい!と思って悪役を演じながら女性騎士と片っ端から戦って負かしまくってたらみんな俺に懐いて即落ち二コマだった』

https://kakuyomu.jp/works/16818093081577825168

の調子が上がってきてます!

昨日は総合日間14位、異世界日間10位を頂きました!


ぜひ読んでくださると嬉しいです!

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