第28話 適切な人選

うぅ……俺の休暇がぁ……

しかもさっきちゃっかりライオネルに助太刀に行くメンバーに俺の名前入れてやがっただろ!

交渉の席に責任者がいないといけないというのは理解できるけど俺の逃げ道が塞がれていく……


「今はとにかく時間が惜しいです。一刻も早くライオネルに急行しましょう」


そう言ってイリスは俺の気持ちを置き去りに話を進めていく。

大きな荒事の予感に御剣たちの目もギラついている気がする。

みんなそんな戦いたいの?


「連れて行く戦闘員の内容はひとまず置いておいて今回レックス様と共に出陣していただく御剣は……」


それがしにお任せくだされ!」


「いや、私が行こう!」


「私も、やりたい」


あ、圧が……何か圧がすごい!?

なんでそんな戦争に行きたいんだよ!

超大人数での命のり合いなんて怖いだろうが!


「ねえ、イリス姉さん。それ俺が行ってもいい?」


そんな一言で立候補の嵐だった場が静まり返る。

みなの視線を一点に集めるのは御剣最年少の少年。

足を組み不敵に笑うその少年はなんとも言えない凄みを持っていた。


「ほう、貴殿も出るというのか。ロジャー」


「うん、マチルダ姉さん。せっかくのレックス様にお供できる機会を逃すわけにはいかないからね」


『雷轟の狂鬼』ロジャー=アデア。

最古参組の一人でありその多大な功績から俺がアデアの名を与えたことでハリソンからアデアへと改名し、13歳でありながら御剣に選ばれた麒麟児。

この3年間で背がかなり伸び体つきもしっかりしてきたが顔にはまだ幼さが残り御剣の弟的存在だ。


「ロジャー君はまだ任務の途中でしょう?今回は諦めてください」


「ちぇっ。まぁイリス姉さんがそう言うなら今回はいいや。ただ次は連れて行ってほしいんだけど」


「機会があればそのときは遠慮なく頼らせてもらいますよ。私が優先すべきはレックス様への利益になることと組織のためになることだけです。贔屓はせずそのとき一番必要な場所へ送り届けるのが私の仕事ですから」


ロジャーは驚くほどあっさり引き下がりイリスにちゃっかり頼んでいるがイリスはなんのそのといった様子で受け流す。

イリスはかなり合理的思考の持ち主でそこに私情を挟むことはほとんど無いがその合理的思考にとらわれることなく柔軟に考えられる力も持っている。

あんなことを言ってはいたものの多分ロジャーのモチベーションアップのためにも組むことになるだろう。

弟がどんな成長をしているのか見るのが少し楽しみだ。


「あら、じゃあ私は連れて行ってくれるのかしら?任務も終わったばかりだし私の魔法は今回の場面にぴったりだと思うけれど」


「あっ!ずるいよアナ姉さん!俺がダメだったからって自分も立候補するなんて」


『星撃の魔女』アナスタシア=ハリソン。

ロジャーの叔母であり俺の一個年上の19歳の最古参組。

圧倒的魔力を持ちこの3年で劇的な成長を見せたロジャーすらも抑え御剣に君臨する猛者だ。

茶髪を肩まで伸ばし昔から大きかった母性の塊は更に成長を見せ妖艶な雰囲気を身にまとっている。

もはや美少女というより美女というほうがしっくりくるくらいだ。


「ねえイリス。いいでしょ?私もレックス様と一緒に戦争おでかけに行きたいの」


戦争と書いておでかけと読むんじゃない。

どんだけ気楽なんだよ。

はぁ……でも実際こいつからしたら気楽なんだろうなぁ……

初めて会ったときはロジャーの才能ばかりに気を取られてたけどまさかアナスタシアがこんなに強くなるなんて……


「アナも今回は諦めてください」


そしてばっさり切り捨てられていた。

アナスタシアはがーんという音が今にも聞こえてきそうな表情になる。


「な、なんでよ。別にいいじゃない。私が行っても」


「既に今回連れて行く御剣のお二人は決めています。代わりにアナにはしっかりと次の任務をあげますから」


「全然嬉しくない!ていうかなんで連れて行くメンバーを決めてたなら教えてくれなかったの〜!?」


「私は最初から誰を連れて行くか決めていましたよ。ですが皆さんの立候補が止まらなかったもので……」


「う……」


イリス、口論勝利。決まり手『正論』

ていうか誰を連れて行くか決めてたんだな。

一体誰を連れて行くつもりなんだろうか。


「今回連れて行くのは……クレアちゃん、セレナちゃん。あなたたちです」


名前を呼ばれた2人が驚いたように目を丸くする。

今回連れて行くのはこの2人なのか。

俺はイリス以外にはあいつとアナ、そしてロジャーとしか組んだことが無いのでどんなふうに戦うのかも強さもわからない。

だがイリスが選ぶということはこの場面に一番適任だと判断したんだろう。


「2人とも私たちと共に来てくれますか?」


「もちろんよ!任せて!」


「は、はい……」


対照的な返事が2人から返ってくる。

アナスタシアもこの人事に文句は無いらしく頷いていた。


「ふーん、クレアちゃんとセレナちゃんかぁ。確かにイリスの言う通り適任だね。今回は2人に譲るわね。頑張ってね、2人とも」


「当然よ!私たちでこの戦争勝たせて来るわ!」


「め、迷惑にならないように頑張ります……」


アナスタシアに返事をした2人は今度は俺の前にやってくる。

そしてスカートの裾を軽くつまみカーテンシーのような礼をする。


「レックス様、第4の剣『軍導』クレア=スミス。微力ながらレックス様のために力を尽くしましょう」


「同じく第5の剣『天操』セレナ=スミス……です。あ、あの……頑張ります……」


2人とも身長は120センチほど、見た目もとてもそっくりで色違いの髪飾りをそれぞれ着けておりファミリーネームからもわかるように2人は双子の姉妹なのだ。

性格は正反対で勝ち気で明るく金髪のボブなのが姉のクレア、内気で弱々しい雰囲気をまとい金髪をポニーテールに結んでいるのが妹のセレナ。


2人とも数が少ない妖精族であり年齢不詳だが人間族からすれば長生きしているらしくいわゆる合法ロリというやつだ。

まあ俺にはそんな趣味は無いんだけどね。


「2人の活躍に期待している。よろしく頼むぞ」


「はい!」


「はい……!」


2人は頼もしい返事をくれる。

戦争なんて絶対に行きたくないし黒白双龍団に参加なんて絶対させたくなかったが御剣全員が開戦派ならば俺に止める術なんて残されていない。

ぜひとも俺の出番ができるだけ少ないように、かつやりすぎないように活躍してほしいものだ。


「これにて今回の御剣会議は終了といたします。細かい任務は後に追って書簡で送りますので」


そんなイリスの言葉で会議が締めくくられる。


こうして戦争参加が決まってしまった俺は肩を落とすことになる。

はぁ……戦争かぁ……


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御剣のメンバーはゆっくり少しずつ出してく予定だったのに気づけばもう紹介してないのは3人だけになってた笑


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