ゴミの島
暗礁地帯〈ヴィルグレーヴィア〉の領域に到達したのは、〈ダウン・サイド〉に潜ってから一週間あまりが過ぎたあとだった。
「レーダーに反応あり!」コックピットから響くリーランド・ベルの声で、私とファナナは窓の外を覗いた。
星明かりが煌めく宇宙の深海を、歪な島が漂っていた。廃棄物の集合体というだけあって、遠くから見てもゴミの形がわかり、飛行船が着陸するスペースがないことはわかった。ただ、その外観を醜いとは思わなかった。
「思っていたよりも芸術性が高いな。現代アートと言われても、なんら疑問は持たないよ」
「同感だが、駐機場は見当たらないな。住人の姿も」頬を押し付けるファナナの息で、窓ガラスは曇っていた。
「表面にいるはずがないだろう? 内側だよ。きっと中は空洞で、生活するスペースがある。空気や重力のコントロール装置もあるんだろう。宇宙船を停める場所は格納庫みたいになっているんじゃあないか? どでかい戦艦と考えた方が良さそうだ」
「ラッツスタジアム二個分くらいか?」
「さあね。あいにく、ラッツファンじゃあないもんで。ところで、いつから球場の個数が単位になったんだ?」
「知らないのか? 人間が地球にいた頃からの常識だぜ?」
「何やら盛り上がっているところ悪いがね」コックピットから出てきたリーランドが言った。「どうやって乗り込むんだ? 格納庫があったとしても、"マンモス"は停められなさそうだ」
「もう少し接近してくれ。アストラナードで着陸する」
「わしはアストラナードを持ってない」
「おいおい、あんたも乗り込むつもりだったのかい?」
「当然じゃろうが。こっちはやる気満々で来てるんだ」
「そのやる気は"マンモス"の中で使ってくれ。何事もなく〈ヴィルグレーヴィア〉を抜け出せるなんて思っちゃいない。最終的には空中戦になる。そうなったら、"マンモス"で援護してほしい。こっちは"狼"と"灰色熊"しかないんだ。数では圧倒的に不利になる。俺たちが帰還できたら、亜空間ジャンプで高速待避。できるか?」
「できるか、だと?」リーランドは耳に挟んだ煙草を咥えた。「誰に向かってものを言っているんだ、おまえは。ゴミの星のゴロツキなんぞに遅れをとるはずがなかろうが」
「頼もしいね」私は口元を緩めて煙草を咥えた。
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