宇宙海賊その2
大急ぎで二層に下りたが、"ハンサム"はすでに雀卓を離れていた。慌てて周囲を捜すが、長髪の男も痩せた男も、その両方を満たしている男も、あまりに多すぎた。何より、人の数があまりにも多い。
私はさっきまでハンサムが座っていた三番卓に駆け寄り、男の腕を掴んだ。ハンサムとの局で、西家に座っていた男だ。
「東家の男はどこに行った?」
「な、なんだ、おまえ?」男は私の腕を振り払い後ずさった。
「髪も髭も長い男だ。黄色、黄色のアロハを着た」私は見えもしない色の名前を口にする。
もしもさっきの半荘で、彼が負けていたのなら、次の一言を答えさせるのに、金か暴力が必要になっていたことだろう。だが、どうやら彼は、勝ちとった側のようだった。
「今日はツイてないから帰るってよ。借金を取り立てられる前にって。あんたの悪口も言ってたぜ。あんたが来なけりゃ、ツキの天使に見放されることもなかったってよ。それを言うなら、女神だろうって、俺は言ってやったがな」気を利かせたつもりだったのだろうが、最後の一言は余計だった。私の中で、何かが熱くなる。
「やつのマシンは?」
「はあ?」
「ここへ乗ってきたマシンを聞いているんだ。アストラナードか? それともトラック船か?」
「知らねえよ。俺はあいつの友達じゃないんだぜ?」
「アストラナードだよ」会話を訊いていた別の男が口を挟んだ。「女王蜂の……いや、蟻だったかな? 女のマシンだって言ってたぜ。女を乗り回すように扱ってんだと。いけ好かねえ野郎だぜ」
「どうせ娼婦のマシンだろ」第三の男が笑った。
私は笑い声を振り切るように一層へ走った。フロア中に拡散するいくつもの笑い声が、嘲笑っているかのように聞こえた。
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