第4話 灰色

授業が終わり、帰りの時がやってくる。優馬は青い髪の少女のほうに顔を向ける。


相も変わらず彼女は他の人とは話そうとせず、教科書をまとめて鞄に入れると、そのまますたすたと歩きさってしまった。




この後もあそこにいくのだろうか。果たして一体何が彼女を駆り立てるのか、優馬は知りたかった。




何よりなぜ悲しそうなのか。気になるというよりは心配な気持ちになる。




朝のあのとき彼女は怒っていないといった。


ならば再び赴いても怒られることはないだろう……と思う。




(……まあ何とかなるか。うん何とかなる)


自分にいいきかせるようにすると優馬は公園に向かった




歩くこと15分。例の公園に近づいてきた。


公園の中を見つめると、彼女がいた。




青い髪をなびかせながらたんぽぽを見つめている。


悲壮的な表情と相まって絵になる光景だった。




だがいつまでも見とれている場合ではない。




優馬は彼女のいるところまで近づいていく。


ある程度まで近づいたところで、彼女が優馬に気づいた。




彼女は一瞬驚いた表情をするもすぐに表情を戻した。


「……また来た」


「また来たよ」


彼女はあきれたような様子で優馬を見ている。もう一回来るとは思わなかったのだろう。




「何の用?」


怪訝な目で優馬を見ている。だが怒っているような感じではない……少なくとも優馬はそう感じた。




「いやまあ単刀直入に言うと…なんでいつもここにいるのか聞きたくてさ」


「……別に、関係ないでしょ」


彼女は目をそらし、そう返した。よほど答えたくないのだろうか。




「どうしても答えたくないなら別にいいんだけどさ。その、なんていうか……いつも悲しそうな顔してるし、大丈夫なのかなと思ったんだよね。なんか抱えてるんじゃないかって……心配というか」


彼女は花を見つめたままだ。微動だにしない。




しかしかすかにのぞいた横顔からは動揺の色が見てとれた。


沈黙の時間がつづき、優馬が口を開こうとした時だった。




彼女はゆっくりと立ち上がり優馬を見つめる。


「……さっきの言葉、嘘じゃないよね」


弱弱しい言葉でそうつぶやく。




彼女の表情はどこか悲し気で、切なさを帯びていた。


「嘘じゃない」


力強く言い切る。もちろん本心からの言葉だった。




「初めてここで見かけたときは、単純に気になったんだ。全然しゃべらない同級生がこんな事をしてるからさ。だけど、そんな軽い気持ちで踏み込んじゃいけないって話しててわかった だから……だから良ければ教えてほしい」


如月は無言のまま立ち尽くしていたが、やがてため息をつくと、くるりと後ろを向く。




「……明日なら教える。知りたかったら放課後にまた来て」


彼女は言い残すとそのまま歩き去ってしまった。




果たして彼女がどのような思いを抱えているのか、やっとわかる。


(……帰るか)


ひとまず今は家に帰ることにしよう。




優馬は空を見上げる。空は雲が覆い夕暮れを遮っている。


(明日は、晴れるかな)


灰色の空を見上げながら優馬は歩きだした。

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