第3話 謝罪

今日も優馬はおなじみの街道を歩く。


昨日と同じであれば、如月はまたたんぽぽを見ているころだろう。




ずんずんと公園に近づくが近づくにつれて優馬の身体は緊張感に支配される。


昨日のこともあり、この道を歩くのは憚られた。




よっぽど彼女のことが頭に残ってしまったのだろう。


優馬は自分の足取りが重くなっているのを感じていた。




公園のそばにたどりつき、こっそりと公園の中を見つめる。


いた。青い髪の美しい女性がたんぽぽを見つめている。




遠目でも優馬はわかる。如月葵だ。


彼女は昨日と変わらず、座ってやはり悲しそうな目でたんぽぽを見つめている。




そんな光景を見ていると昨日の行動を軽はずみだったのではないか。


優馬はそんな気がしてならなかった。




彼女は心に何かを抱えている。おそらくたんぽぽに関わりのある何かを。


それを知らなかったとはいえ、踏み込んでしまった。


そう考えると居ても立っても居られない。




(よし……!)


優馬は公園に向かって、青い髪の彼女に向かって歩きだす。


「ちゃんと、謝ろう」




座りこんでたんぽぽを見ていた如月は、優馬が近づいてきたのに気づくと、またもや警戒の目を向ける。




「……なに」


まるで威嚇する動物そのものだ。




だがここで臆するわけにいかない。優馬は如月の3mほど前まで近づくと、そのまま頭を下げる。


「昨日はごめん。よく事情は知らないけど……とにかくごめん」


頭を下げ続ける。彼女がどのような顔をしているのかはわからない。




10秒、20秒と時間が過ぎる。そして30秒が過ぎようとした時だった。


「とりあえず。顔上げて」


彼女の声が優馬の頭上から響く。




恐る恐る顔を上げると、如月がポケットに手を入れて、青い髪を揺らしながら立ち尽くしている。


「……なんで、謝るの?」


「いや、昨日の如月さんなんか怒ってる感じがしたからさ……。俺がなんかしちゃったかなと思って……」


優馬がそういうと彼女は、大きくはあ、とため息をつくと




「別に、怒ってないから。……いらつきはしたけど」




彼女は目をつぶりそう答える。



でも、伊勢くんがそう感じちゃったなら、しょうがないけど。別に頭さげなくてもいいよ」


ばつが悪そうな感じだ。彼女もやりすぎた、とは思っているらしかった。


「あー、そうなんだ。まあとりあえずよかった。えーとでもなんでいつもたんぽぽ見てんの?」


彼女に謝ることはできたが、肝心の彼女の目的が分からない。




なぜ優馬がたんぽぽを見ていると怒ったのか。なぜたんぽぽをみているのか。


謎のままだった。




「……さあ」


だが彼女に答えるきはなさそうだった。彼女は背を向けると、イヤホンを耳に着け、スタスタと歩き去ってしまった。




「……うーん」


優馬は腕を組んで唸る。なんとも謎多き人物だ。




だが、とりあえず目的は果たすことができた。今のところはそれでよしとしよう。


優馬はそう考え、学校に向かって歩き出す。


ふと空を見上げる。曇りの空が広がっているが、わずかに空いた雲の隙間から太陽の眩しい光がこぼれ出ていた。


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