三蹴 原京平のΨ難

「父さああああああああああああああああああああああん‼」

 家に帰ったら京平の父・秀一がいて驚いた。何か酒飲みながら漫画読んでハンターハンターを流している。秀一はいつもこんな感じだ。

「ど、どうした京平? お前そんなキャラだっけ? トランクス?」

「あ、いや、学校でドラゴンボールごっこ流行っててさ」

 京平は僕だけがいない街の主人公みたいな躱し方をする。ちなみに秀一は、京平が大学入学後間もなくくも膜下出血で死亡する。頭が痛いと病院に行ったらしいが、その医者がヤブで異変に気付けなかった。裁判に相当する内容だが、賠償させても秀一は生き返らない。馬鹿は医者になるな。

「父さん、酒の飲み過ぎには気を付けてね」

「? あ、ああ……?」

 秀一は京平を訝しむが、深く追及してこなかった。


 寝て起きたら夢から醒めるだろう。と思っていたが、駄目だったようだ。子供の姿のまま、過去のままだ。これはガチでタイムリープという奴だろうか。そうだとしたら、昨日の変態プレイはなかなかに犯罪的だった気がする。京平は取り敢えず昔を思い出し、ランドセルを背負って学校に行った。行ったら何か色々と思い出してきた。京平はサッカー部のキャプテンで、今は2004年辺りで、ここは西牛尾小学校で、などなど。

「キャプテン原‼ おはようございます‼」

 シノブが教室に入ってきて、京平を見付けるなり挨拶を放出する。クラスが「キャプテン?」「原が?」「サッカー部の?」「マジで?」「あの子可愛い」みたいな空気になる。

「忍べ‼」

「はいー♨」

 京平がシノブに忍べといったらやすこになってしまった。ここまで意味不明な一文があるだろうか。というよりも、この時代にやすこはまだいないだろう。いるかもしれないが、原より年下だろう。原は現在32歳で、今20年近く前にタイムリープしていることに気付く。二十年も前か。二十年って長すぎないか。そんな昔だっけ。などと思考を逡巡させる京平だが、

「よう、京平‼」

「青野……」

 シノブの後ろから青野が召喚された。青眼の白龍ではない。ブルードラゴンでもない。ちなみに青野の下の名前は龍聖という。ブルードラゴンではないか。青眼の白龍ではないか。京平は二組で、青野は一組か三組だった気がする。まあ三クラスしかないのだが。

「青野とシノブって何組?」

「俺は一組でシノブは三組」

 平等に分配された。

「ちなみに羽生は?」

「三組」

 羽生、テメエ‼ 青野の従妹だったり、羽生のクラスメイトだったり。もうお前らがラノベ主人公だろう。しかし、こいつらとこういう会話をするのも二十年振りか。二十年で合ってるよな。俺が32歳で12歳に戻ってるから……。何度計算しても正しいはずなのに狂っているように感じる。京平の時間感覚が狂っているだけなのに。

「二十年か……」

「ん? 千年パズルが何だって?」

 どういう聞き間違いだろうか。お前はやはり青眼の白龍だろう、と京平は青野に心中でツッコミをぶち込む。青野はイケメンのチャラ男だから、もう当然結婚して子供を作りまくっていることだろう。それが羨ましいという話ではなく、京平とは別次元に生きているのだなあと距離を感じ虚しくなる。当たり前だ。みんないつまでも小学生ではないのだ。切り替えろ。それは多分向こうも同様に感じることだろう。

「いや、まあ、友情って大事だよな、って話」

「愛、勇気、友達だからな」

 アンパンマンではないか。それを言うなら友情、努力、勝利だろう。何故に燃堂の先取りみたいなミラクルを起こしているのだろうか。原京平のΨ難は続く。青春は残酷ではないのだから。目を合わせよう。

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