バイオリンと言う楽器をよくよく眺めてみる

インターネット検索はひとまず置いて、バイオリンのケースを手元に持ってきた。

ケースの形はバイオリンの形状に似たもので、シェイプケースとかひょうたん型ケースと言うらしい。割と頑丈そうだ。

蓋側にファスナーがついていて開けてみるとクリーニングクロスが入っていた。蓋にはベロがついていて、磁石で止めてある。それを外すと鍵付きのバックルがあり、外すと蓋が開くかと思ったら、バックルの横から両側にぐるりとファスナーがあり、それを引くことでようやく開くことができた。

中は天鵞絨(本物か?)のカバーに覆われてそれを外すことでようやく楽器本体が見える。ずいぶんと厳重だなと思うが、その高級感がうれしくもあった。

ケースに収められたバイオリンは、つやがありきれいだ。テレビや動画で演奏を見たものと同じ形をしている。そりゃ当然だ。とうとう手に入れたんだなと、何とも言えない気持ちになった。

開いた蓋の裏側にはバイオリンの弓。落ちないようにホルダーに固定されて、二組の弓が収まるようになっていた。予備の弓も買わないといけないかなと、気が早すぎることを考えた。

バイオリンの横には肩当てが、マジックテープで止めてあった。

K.U.Nの文字がなぜかまぶしい。これは肩当ての会社の名前だ。

ケース内側のアクセサリーボックスのふたを開く。硬めのばね仕掛けになって中身がこぼれないようになっている。中には、ケースの鍵、クリーナー、松脂、ケースストラップが二本入っていた。すぐにでもバイオリンを弾くことができそうだ。

さて、ケースの中身を確認したので、いよいよ本体を取り出してみる。

バイオリンはマジックテープでネックを押さえてあり、それをバリっとはがして手に取ってみた。

思った以上にとんでもなく軽かった。その軽さに愕然とする。

これが○万円もするもなのか?と、言うなんともセコい衝撃だった。

そう考える自分が情けなくなったが、気を取り直し楽器を眺める。

ボディの形はギターに似ているが、とても小さく薄く、全体が丸みを帯びていて全く違うと気が付く。

ギターに開いている穴は一つで丸いが、バイオリンはS字の穴が左右に二つ。多分ここから中で共鳴した音が大きく響くんだろう。後で知ったのだが、これはf字孔と言うらしい。Sではなくf。勉強になった。

バイオリンの絃は四本だ。これがネックの先にあるねじ巻きに巻かれている。そしてその先には何やらぐるぐると飾りのような形が彫ってある。まるで昔の帆船の舳先のようだ。バイオリンと言う楽器は、やはり芸術品でもあるのだなと感じたのだった。

一旦バイオリンをケースの中に置いて、弓を取り出してみた。白い糸が束になって止めてある。これは馬のしっぽの毛らしい。これでバイオリンの弦を引いて音を出すのだ。だが、弓の毛はだらしなくたるんでいた。調べてみると、弓の持ち手の柄にねじがあり、それを回すことで弓をピンと張ることができるようになっていた。

弓の調整の仕方も検索し、さあこれでバイオリンを弾くことができるぞ!と、ウッキウキで楽器を手に取ったのだが、ここで肝心なものがないことに気が付いた。


残念なことに、またしばらく練習に取り掛かることが出来なくなったのだった。

私はそっと楽器をケースにしまい込むのだった。

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Eastman VL80 オッサン @ossane

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