008 コロッサス戦
気づけば僕らは3日間、このお城に身を置いている。
その間、|01(ゼロワン)の調査で分かったことが幾つかあるが、問題視されるは巨人の件だ。
どうやらあの巨人は、コロッサスという元からここに君臨していた防衛兵器らしい。
あのドラゴンはその進行を阻止しようと心得ていた、|02(ゼロツー)が夢で生み出した生物のよう。
彼女が起きている現状、ドラゴンは出現しない。
とどのつまり、自暴自棄になっているあの巨人を抑える力が無くなった今、僕らはピンチということ。
かと言って、|02(ゼロツー)に頼ることはできない。
この数日、観察してわかったが、彼女は能力を扱えていない。寧ろ能力に扱われている方だ。
可哀想な子だ。
まぁ、そういう訳だから、僕と|01(ゼロワン)で策を編んでいる。
「彼女、寝たわね。」
「うん、静かにしてると可愛いね。」
|01(ゼロワン)は円卓にそっと、山崎12年のボトルを添えた。
「なぜ持ってる……?」
「さぁ、本題に入るわよ。」
「それはいいけど、なぜ持ってるんだ?」
ポケットに入れて……ない……きっとあれが俺のウィスキー……一体いつ……
彼女はボトルの蓋を回して開けてみせた。
「正直、今の私たちにあのコロッサスに勝てる勝算はないわ。ムー大陸をこんな不可思議な状態にさせた核にも耐えうる強靭な鎧……。」
そうして、そっと蓋を閉めた。
「いや、飲めよ。」
「……え?」
「いやだから、開けたなら飲めよ。」
「大事な話をしてるのだけど、話聞いてる?」
「その行動が気になって、ここ100年、話に集中できない。」
変な人なんだよな。
「はぁ、だから最善は逃げるの一択なんだけど……トーマが逃げる訳ないわよね。」
「うーん、正直戦闘となるときついかもね。あんなにデカくて硬い皮膚?鎧?岩石の巨人やから、岩?まぁなんでもいいけど、僕の氷帝じゃ威力が足りないね。」
彼女席を立った。
「ねつ……」
「なんて?」
「熱よ。氷帝なら可能なはず。確かに岩は低温に強いけど、同時に熱を持ちやすい性質をもっている。」
「酔ったのか?」
「酔っていない。トーマが一気に冷やし、そこに熱を加える。内部と外部の温度差を大きくすることでことで、それは膨張と収縮を循環的に繰り返す。その許容応力が限界に達したとき、十分な自然エネルギーが産み出せるはず。」
「つまり……?」
「つまり、内側から大破裂が起きる。新星爆発ど同じ原理よ。」
「おぉ、理解した。でも、熱はどうするの?僕は冷やすことしかできない。」
彼女は磁石で椅子と繋がるかのような勢いで腰をかけた。
数秒くらい間を空けて彼女は吐く。
「いい考えがあるわ。」
大丈夫かよ……
数時間後、夕暮れを思い出させる赤く染まった空の下、トーマはポツンっと立っている。
「頼むよ、ほんと。」
|01(ゼロワン)の作戦はこうだ。
僕の能力氷帝は、僕の体温が低ければ低い程、強くなる。つまり0℃を下回ると最強なんだけど、それはそれで僕の細胞達が働きを辞めるというデメリットがある。
言い換えれば死だ。
でも僕自身の体温が0以上であることこそが肝でもある。
だから、それを補うために〈絶対零度(アブソルート・ゼロ)〉で周囲を連鎖させることで擬似的にその状況を作り出す。
そうして、そこに大量の酸素を吐くことで元々持っている熱で振動している酸素と、極めて静止に近い酸素とで避けることなくぶつかる。
そうするとバゴーンだ、上手く行けば空気が暴発し、辺り一面をチリと化す程の爆風が発生する。
悪くいったらどうなるかって?……核融合がはじまり、核爆弾が起きる……
まぁ、うん、あれだ。どっちも死ぬかもね。
「ゴォゴォォォォオ。」
森の奥からものすごく不気味な音が鳴り響くとともに、地面が段々と大きく振動しはじめる。
それは空を覆うかの如く迫ってくる。
「来たな……頼むぜ、おい……〈絶対零度(アブソルート・ゼロ)〉。」
声にならない声だった。
震えるよ……ったく。
大悪党(ビッグヴィラン)が可愛いく思えてくるよ……今のヒーロー達でも、こいつを倒せる奴いないでしょ。
……ん!?
ふとして、風の流れが変わる。
なにこれ、吸い込まれて……?
コロッサスの身体を擦る模様が、ゆっくりと段階を踏みながら青白く光出した。
脚先、腰、胴、胸と。
「ゴジラかよ……!!」
見覚えがある。これはアレだ……
破壊光線だ。
コロッサスは周囲のエネルギーを取り込んで放出しようとしていた。
ってか、定番過ぎんだろ……!
これじゃ〈絶対零度(アブソルート・ゼロ)〉が意味な……!?
そうして、風邪の流れが止まった。充電完了の合図である。
「ちょ、避けられ……ない!」
破壊光線が放たれた。周囲を焼き払いながらではなく、文字通り、全てを無に帰しながら。
音がしないうちに、光は目前。高音を超えていたのである。
しかも範囲広すぎっ!!
〈紫氷壁(アイスシールド)〉!!!
念の為に3枚。1番外側は衝撃に対して垂直に。2番目は30度近く傾けて創造。3番目の盾は115度を目安に。
〈氷盾〉、それは一定範囲内の空気を凍らせることで認識可能な氷の壁を創造する技。それを可能にしているのは、空気中の水素である。
ありとあらやる物体をもう通さない盾。
しかし、コロッサスの破壊光線が物理的なエネルギーではなく光そのものなら、この限りではない。
それをも計算し尽くし、屈折させることをも視野に入れた技の最大活用。
No.1ヒーローと称えられた実力は健在のよう。
だが……
「……万事休すか!!!」
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