「ナニカ」

@kizumi77

「ナニカ」

 これは僕が高校3年生、受験期真っ只中の話だ。


「今日も勉強頑張ってね。エアコン消すのだけ忘れないでね!おやすみ!」

いつものようにそう言い残し、2階の寝室へと上がっていく母を横目に僕は教材を取り出した。

英語、古典、歴史。そうして勉強を進めていくうちに時計の針は深夜の1時を指していた。


「ねむ、、、明日も学校だし今日はもういいかな。」


睡魔に負けた私は片付けを済ませエアコンを消す。

一階の電気を消しつつ二階へ向かうが、階段と二階の電気は親が消していた為に真っ暗だった。


「真っ暗やんけ」


そうぼやきながらも親を起こすと色々面倒だと感じ、真っ暗の中階段を上がる。

僕の家はかなり田舎にあり光の欠片もない。

家も古く階段はギシギシ音がするため鳴らさぬよう気をつけなければならない。


一段一段ゆっくりと上がっていく。

「ギィイィ…」

時折そんな音も鳴りながらなんとか2階にたどり着いた。


違和感。


何か違う。いつもの平凡な日々ではない感覚。

鳥肌が全身に立つ。


おそるおそる違和感の先に目を向けると廊下の先に父がいた。身長180㌢を超える僕の父はいつも寝るのが早い。夜10時には基本寝ているくらいだ。


「こんな時間に珍しい。トイレかな。」


そんなことを考えながら小声で声を掛ける。


「お父ちゃん?」


反応はない。

聞こえていないのだろうか。

「お父ちゃーん?」もう一度声を掛ける。


反応はなく、立ち尽くしている。


意味がわからない。なぜ動かないのか。

何故返事をしないのか。そもそも何故起きている?


そこでふと気づく。


二階は電気が消えている。

自分の手の先も見えない程に真っ暗だ。

廊下の先など見えるはずもない。

僕は何故僕は廊下の先に父がいると思っているのか。


 そこにいたのは青白く光る180㌢超えの「ナニカ」だった。人間の形はしている。しているのだが、明らかに体格が大きい。首はなく胴体に頭がくっついている感じだ。


恐怖心と共に再び全身に鳥肌が立つ。

その瞬間、「ナニカ」がこちらに向かって歩きはじめた。

廊下など一瞬でこちらまでたどり着いてしまう距離。どうする事もできない。

覚悟を決め、目をぎゅっと閉じて僕も前に進み、自分の部屋に駆け込もうと試みた。


「ナニカ」は目の前。間に合わなかった。


全身を「ナニカ」に包まれ、立っているはずの鳥肌がさらに尖る。


「終わった。」


そう思った束の間、恐らく「ナニカ」の体を貫通し、何が起こる訳でもなく逃げ込むように部屋に入ることができた。その後の記憶はない。

気づけば朝だった。


 あれは一体何だったのか、それは今でも分からない。勉強のストレスで幻覚を見たのか、はたまたただ寝ぼけていただけかもしれない。


 ただ、私の家は築120年程。自分の部屋から防空壕も見えるような家だ。「そういった現象」も起きるのではないかと私は思う。


これ以降、こんな経験はしていない。

していないのか、見えないのかはわかりません。

今も私の側に、貴方の後ろにいるかもしれませんね。



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