第7話 王国にて
レイスとヘルンが出会ってから2週間後。
ヘルンは王都に帰還し、宰相、レヴェル・バリントリンに報告した。また、その際の提案についても相談し、宰相から国王、マッカヘル・アルスキカに直談判してもらっていた。
「……この報告書は誠か?」
「ヘルン達、王国王都兵士団たちは実力も忠誠心も確かです。闇魔法による洗脳効果なども可能性は薄いかと。」
「なるほど……まだ生きておったのか、あの神童は。」
「……そうですね、あの子はそう呼ばれるのに十分なほどの内政の才能を持っていました。」
マッカヘルは口元を綻ばせ、古い友人に会ったかのような優しい顔を浮かべていた。
レイスはある日、ガドリア家の者として王城のパーティーに誘われた。しかし、ガドリアの家にいてもいないも同然の扱いを受けていたレイスはパーティーで独り孤立していた。実際この日も、王からの手紙に「血縁にあるもの全員で」の文言さえ無ければ連れてはこられなかっただろうし、向かう道中では終始レチューに嫌な顔をされていた。
そして国王の眼に子供だと言うのに同世代の他の子と遊んでいなかった姿が不思議に映ったのか、国王は変装魔法でレイスに近づくと「遊ばないのか?」と聞いた。
それに対してレイスは「知らない人ばかりですから。」と答えた。
「同い年の友人もいないのか。」
「ええ、私は図書室に籠ってばかりでしたから。」
「図書館か。それでは知識はどの程度と自負してるのだ。」
「……さっきも言った通り周りと関わる機会がなかったものですから、どの程度のものなのかは分かりませんが、文官試験は模擬のものですが平均7~8割はとれるほどです。」
「それは確かか?」
「嘘を付くと死ぬ可能性もあるというのに嘘をつく理由もないですよ。」
「なるほど。それでは最近、この国は不景気にあると思うのだが打開策を思いつくかの?」
「打開策……ですか。働き口を紹介するというのはどうででょう?特に冒険者関連の施設は働き手が少ないと聞きます。その日暮らしの冒険者ばかりが増えていき、日に日に死者が出ているわけですし。現実的かつ安全な職があるのにそれを知らないのはおそらく知名度が無いからでしょう。ですので働き口を紹介する施設などの公営の施設を作れば労働者は増え、経済が回り、景気は回復すると思いますよ。……国王様。」
「なんと。気付いていたのか。」
「この国の景気が悪い、などというのであればそれは王の手腕が鈍っているという発言になりかねないので、そのようなことを言えるのは国王様くらいかと。」
「おもしろい、おもしろい少年じゃ。名前をなんという?」
「……レイストニア・ガドリアと申します。」
「そうか、レイストニア。貴様、学園を卒業した後は文官にならないか?」
「……!よろしいのですか?」
「ああ、むしろ貴様が成年でないのが悔しい。今すぐにでも雇いたい。」
「お褒めにあずかり、光栄です。」
そんなあのパーティーの一夜を思い出すマッカヘル。楽しみにしていた少年は侯爵家を追放となり、死んでしまったかと思っていたのだが……まさか生きていたとは。これほど嬉しいことはない、と言わんばかりに笑う国王。
「それでは、この提案は承認すると。」
「当たり前じゃ。それにレイスの嫁とやらも気になるしの……」
「……王女殿下が聞いたら卒倒しそうですね。」
「言わないでくれ。アリアと同じ学園にするからの、そこでどうにかしてくれ。」
そんな話を終えて宰相経由で即日にヘルン達兵士団はアビュー雪原へ向かった。
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読んでくださった皆様に最大限の感謝を。
コメントやフォローをしてくれるとすごく嬉しいです。
実はガドリア家が気付かなかっただけでレイスは戦闘向けじゃないとはいえ実はかなり有能だったという話。
ちなむとアリアはもう一人のヒロイン……かも?
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