第3話 吹雪の持ち主

「フェニクジャル……?」


ヘルンは聞き覚えのない家名に首をかしげる。


ヘルンは職業上、様々な地域に行き、そのそれぞれで様々な人に会い、ある程度の家名は知っているのだが、そんな家名は聞いたことはない。


「聞いたことがないですね…」

「ふんっ、当たり前だ。この世界で私たちが最初の家名だ。知るはずがない。」

「なっ!?家名は王族から与えられる、許諾性のものだ!新たな家名を名乗るなど…」

「おい、またあのバカの二の舞になりたいか?黙れ。それにあくまで王族に与えられている名だ。別に構わないだろう。」

「ッ…」


声を上げた兵士は押し黙った。しかしヘルンは疑問を投げつける。


「王族以上……?」


そう、まるで王族よりも上の存在がいるかのような物言いだ。そうなるのは……まさか…とヘルンが考えていると。


「詮索はしないでくれ。話がそれたな、要件を言ってくれ。」


レイストニアからくぎを刺される。その目線は膝元の銀狐…エレナを見ている。


エレナは気持ちよさそうな声で「クゥ~ン」と鳴いている。


レイストニアはエレナから目を離すとヘルンを見て、要件を聞くことにした。


「元王国民というのであれば話は早い。バスキーは知っているよな。」

「あぁ、あの珍味なことで有名な魚か。別に王国内の品ではないのに、まるで王国でできたかのようなていで他国に売り込んでいるアレか。」

「……ああ。まぁ、このアビュー雪原の奥地まで行ける経路が王国から行くのが最も早いから王国の品として輸出してるつもりらしい。ともかくだ、この近辺の湖がバスキーの生息地となっている。しかしここ数か月、猛吹雪が続いていてな。このままだとこれからの冬から春にかけての王国の経済に支障が出る。だから情報を提供してほしい。」


ヘルンはある程度は察していたがあくまでレイストニアがこの吹雪と無関係として会話する。


しかしレイストニアは腐った環境で生きてきた者。


相手が何を考えているかは手に取るように分かる。


「そのように遠回しにする必要はない。あなたの顔に書いている。「お前がこの吹雪の元凶だろ?」ってな。そうだ、この吹雪は僕に…というか僕の嫁にやってもらってる。その上で言おう。猛吹雪を消せ、という命令は聞けないし聞かない。この小屋を他人に見せるつもりは毛頭ない。それにここから転居するつもりもない。」

「ッ……なぜかを教えてもらってもいいか?」


ヘルンはレイストニアに問いかける。


「この小屋を見せる気がないのはほかの連中が何をしでかすか分からないからだ。あんたたちアルスキカ王国が大切な財源であるバスキーの湖の近くに小屋を建てないのはここが魔物が出て王国から物資が届きにくいからだ。だからバスキー漁では専門家二人と護衛10人…ここにいる連中か騎士だろう、で日帰りで行う。この損失をどうにかできるほどの価値がバスキーにはあるからな。そんな王国の連中がこの快適な小屋を見つけたらどうする。当然、攻撃かなにかで占拠しようとするはずだ。」


ヘルンはぐうの音も出なかった。


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読んでくださった皆様に最大限の感謝を。

コメントやフォローをしてくれるとすごく嬉しいです。

すいません、投稿遅れました!

明日はこんな風にならないようにします。まぁ、もしかしたら出ないかもですが明日までは書きます。

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