黄泉路を歩けば




リンリンリン…。

ククラの耳に何かの音が聞こえる。

リンリンリン…。


懐かしい、鈴の音。

清浄な清らかな、その音で、何時も起こされていた。


ククラは右手で目を擦る。

眠たい頭で眼を開けると、そこには見慣れた光景が広がっていた。

畳にしかれた布団に、萩の絵が描いてある襖。

ククラはゆっくりと起き上がる。まわりはどう見ても、御陵の実家だった。


身体を起こすと、枕元に畳んだ着物が置いてある。

ククラはそれを手に取る。

自分がなにも着ていないのは分かっていた。

綺麗な花薄の重ね。

ククラはそれに手を通す。


家の中に誰の気配もない事に、首を傾げながら、庭に出てみる。

鈴の音はまだ続いていて、ククラは音のする部屋へ向かう。

「…誰か、いる?」


けれどその部屋には誰もおらず、鈴は風に揺れるように鳴っている。

ククラが鈴に手を触れると、動きが納まり、再び音を鳴らすことはなかった。

鈴の音が止むと、家の中は何一つ物音がしない。


誰の気配もない事を不思議に思ったククラは、家の中を探してみるが、やはり兄もいない。


「…変だな」

呟きは静寂の中に消える。

不安に思ってククラは家の外へ出る。


何時もの街並み。

古い歴史のある町の中は、物音ひとつせず、誰の姿もない。

「…誰かいませんか?」

そう呼びかけるククラの声だけが、町に響く。


車も走らず、鳥の声もせず、道を行く猫も居ない。

この町で動いているのは、ククラだけだ。

ククラは誰かいないか探すように歩くが、やはり何の気配もない。

町中はその姿のまま、不気味に沈黙をしている。


歩くククラの耳に、不意に物音が聞こえた。

カラカラとそれはゆっくりと、しかし軽快に響く。

ククラはその音に聞き覚えがあった。

その下駄の音が近づくのを、立ち止まって待つ。

ククラの見ている方向に、ひょろ長い人影が近づいてきた。


ざんばらの白い髪の毛。氷重ねの色の着物を着崩して着ている。

カラカラと鳴らしている下駄は、素足にはいていて。

頭には狐のお面を斜めにかけていた。

その素顔もまるで狐の様に、細い眼とすっとした顔立ち。

鼻歌でも歌っているかのような、軽い足取りでククラの前に立った。


「…久しぶりですね、瀬尾さま」

「そうやなあ、坊がわいの宿り主がいややって話をした以来かいな?」

「…昔の話です。今の僕は」

「何や変わった形になったんやね?せやけど、坊は坊や。…わいには変わらへんわ」


そう言って、瀬尾と呼ばれた男が笑う。

ククラは困ったように笑った。

瀬尾の手には提灯が握られている。それは淡く光っていた。

ククラはそれを見つめる。


「…そうや。これで坊を案内するために、わいは来たんや」

瀬尾が寂しそうに言った。

ククラはあたりを見まわす。何時もの街並みがそこにあって。

此処が黄泉路だなんて思えなかった。


「…まったく坊は型破りやな。こんな形に黄泉路がなるなんて、聞いた事あらへんわ」

「…やっぱり、これは変な形なんですか?」

瀬尾が肯く。


「そやね。比良坂から話が来た時には、何やろうと思うたけどなあ」

「そうですか。…僕は何か変わっていますか」

ククラの声に、瀬尾が顔を覗き込む。

覗いたククラの顔はひどく気落ちしていた。


「…坊?」

瀬尾が聞くと、ククラはその顔のまま言葉を紡いだ。

「…僕は、此処でも変わっていますか?」

「仕方あらへん。坊はもともと変わってるんやから」

瀬尾の言葉に、ククラが浅く溜め息を吐く。


「…そうですか」

「せや。坊は子供にしては大きい力を抱えていたやろ?その使い方なんて、わいが教えんでも使えたやないの。…力に対する素地が違うんよ」

「素地ですか」

ククラは瀬尾を見上げる。

瀬尾はククラの顔を見て笑う。


「何や、向こうでも随分悩んでいるんかいな。相変わらずやなあ」

「…瀬尾さま、僕は真剣に悩んでいたんです」

瀬尾がククラを見る。

その眼は優しかったが、ククラは何故か胸が痛んだ。

少し苦しそうな顔のククラに、瀬尾は眉を寄せる。


「…いた、か。…もう向こうでは良いのん?」

「黄泉路に来て、帰ろうとは思いません。…僕は地獄に落ちるだけです」

ククラの言葉に、瀬尾は溜め息を吐いた。

「…何で地獄やって思うんかいな、坊は」

「違うんですか?こんな大罪を犯していて、地獄以外に行く所があるんですか?」


ククラの強い声音に、瀬尾は苦笑する。

その笑い顔を見て、ククラは少し恥ずかしくなった。


昔、瀬尾はククラと一緒にいた。

ククラが自分の身体に何かを入れても違和感がないのは、瀬尾が中にずっと入っていたせいだ。


ククラが此方で瀬尾を拒否したのは、この世からいなくなる何日か前だった。

だから瀬尾には悪いと、ククラは思っている。

拒否をしなくても、何日か後には自然に体から離れたのに。


「…まあ、昔の事はええやないの」

ククラの心を見透かして、瀬尾がそう言う。

顔を少し赤くしながら、ククラは頷いた。

この人に、何かを隠せるわけがないか。


「…考えるなら、これからの坊の事や」

「え?これから、ですか?」

「せや。坊はどうしたいんや?…このまま黄泉路に行くんでええんかいな?」

「え?…何でそんな事を…」

ククラは瀬尾をまじまじと見た。

さっき、黄泉路を案内するために来たと言っていなかったか?


手元の提灯は、淡く光っている。それはまだ辺りが昼の様に明るいからだ。

この街並みに意味があるのだろうか。

起こり得る事象には、全て意味がある。

ククラは久しぶりに、教え手の言葉を思い出した。


そのククラを、瀬尾は楽しそうに見ている。

「…戻るにしても、僕はもう…」

「何や、何を悩んでるん?わいで良かったら話をきくで?」

瀬尾の言葉に、ククラはしばし悩む。

何をどう言ったらいいのか、自分の気持ちをどう説明したらいいのか。


「…」

「ああ、ええわ。…坊の好きにしい?」

瀬尾はククラの手を握って歩き出す。

ククラは握られた手を見つめながら、後を付いて歩いて行く。

街並みに他の音は無く、瀬尾の下駄の音だけが響いている。

カラカラとするその下駄の音が、ククラを少し安心させた。



行く先に、祭りの音が聞こえて来た。

石段を登った先には、いつか来た神社の境内があり、そこは出店がたくさん並んでいた。

奥からは祭囃子が聞こえる。


しかし、二人以外に人の姿は無い。

無人の祭りの中、瀬尾は出店を覗いてみる。

大きな器の中に、赤や黒の金魚が泳いでいた。


「…僕は、魔導士になりました。向こうでは強い力です」

瀬尾が屈んで、ポイで金魚をすくおうとしている後ろで、ククラはそう語りだした。

「…けれど力が強くても、どれだけ思っても、何もできない事の方が多くて」

瀬尾は金魚を器用にすくっていく。ビニール袋に、何匹かの金魚を入れる。

それをククラに手渡して、次の出店を見る。


「…僕は自分に絶望しました。…魔導にも、もう信頼もありません」

瀬尾はくじを引く。

紐の先はイチゴ味の飴に繋がっていて、それを一個引いて、瀬尾は立ち上がる。

その飴を、ククラの口に入れ込んでから、瀬尾はまた歩き出した。

ククラは片方の頬を膨らまして、その飴をなめている。

昔と同じ味がした。



「…力は力でしかないんや。それをどう使うかは坊が決めるんやろ?」

「でも僕には、その判断力がないんです」

「ない訳ないやろ」

「でも」

瀬尾が立ち止まる。

射的がそこにはあった。


空気銃を手に取り、コルクの栓を詰める。

瀬尾が狙うが、一発目が外れた。

「…はずれたら、もう一発撃てばいいんよ?」

瀬尾がまた撃つ。景品の横をコルクが飛んで行く。


「…何度もやり直すなんて出来ません」

三発目も外れた。

「なんやこれ、曲がってるんと違うか?」

瀬尾が銃を叩く。

ククラに見せるので、ククラはそれを水平にして見てみる。


重心が少し曲がっていた。

瀬尾は違う銃を手に取り、コルクを詰めて撃つ。

パンといい音がして、景品が落ちた。

瀬尾はそれもククラに持たせる。何かのおもちゃだが、ククラには見覚えがない。


「…僕は、どう生きていいか分かりません」

「そんなんが分かる人はおらんやろ」

瀬尾がそう言う。

「…自分がどう生きればいいかなんて、わいでも分からんわ」

「でも」

ククラは立ち止まった瀬尾を見た。

瀬尾は笑っている。


ククラは傍に瀬尾がいる事に安心をする。

そして自分がずっと不安だったことに気付いた。

誰にも何も言わないで、ずっと頑張ってきたことが。

それが不安だったのだ。


何が正しいか間違いかを自分一人で判断して来て、それが良いように動くことは少なかった。自分の判断が間違っているかどうか、それを相談する相手もいなかった。


ククラは瀬尾を見ている。

瀬尾は神様だから、ここから動くことは出来ないが。

相談する相手がいたら、事態はもう少しよくなっていただろうか。

僕はもう少し正しく生きられただろうか。


その正しささえ自信は無かった。

何が正しいのか、その先は果たして光なのか闇なのか。

瀬尾がククラの頭をポンと触る。

ククラは囚われていた自分の考えから、はっとして顔をあげた。


「…ラムネ飲もか?」

「……はい」

瀬尾が冷たく冷えたラムネを、ポンと開けた。

この世界に、その音だけが響く。


ククラは受け取ったそれを、大事に飲み込んだ。

誰かから何かを受け取る事は少なかった気がした。

何時でも魔導を求められ、それに答えて来たが、そこにはククラ自身を顧みる時間は無かった。


もう少し、誰かに頼れば良かったのかな。

ククラはラムネの瓶から口を離すと、瀬尾が笑っているのに気付いた。

こうやって、たわいのない事に時間を費やしてみれば良かったのかな。

…普通に。

魔導なんか関係なく。


「…坊は何でも、考えすぎるきらいがあるんやな。せやから、分からなくなるねん」

「考えすぎですか?」

「…考えても良い事は良い事。悪い事は悪い事にしかならへんわ」

「でも」


瀬尾が歩き出すのに、ククラは付いて行く。

やけに参道が長い気がしたが、その先に何かがあるのは分かった。

ククラは、そこに今は行きたくなくて、瀬尾の手を取る。


「…あの」

「坊はなんか、しんどいのを使こうたん?」

瀬尾がククラの顔を見ながら聞いた。

急な話の振りに、ククラが首を傾げる。

ククラの手を撫でながら、瀬尾がもう一度聞いた。


「…魂が傷ついとる。…なんかしんどいのを使こうたんか?」

「……時逆を」

瀬尾がじっとククラを見た。


ククラは陰陽に、同じ名前の術があるのを知っていた。

それが同じ効果を発するものだとも知っていた。

だからこそ、その魔導を。あの、一言だけの力の発動を操れたのだ。


「…なんやて?」


瀬尾の声が低くなった。

ククラは撫でられていた手を、ギュッと強く捕まれて、離すことも出来ずにいる。

「…時逆やて?」

「はい。…魔導にも同じ名前の術があります。それを使いました」


瀬尾の眼が少し開かれる。

その視線の強さに、ククラは身を竦めた。

「何でそないな事をしたんや?」

「…どうしても、そうしたかったからです。…それに関しては後悔していません」


ククラが強い言葉でそう言う。

瀬尾が、溜め息を吐いた。

「いくら坊でも、それを使うのに何の代償も無かったとは言わせないで?…何を代償に払ったんや?」

「…自分の寿命を」


瀬尾が息を飲んだ。

「…あほか…」

「……すみません」

瀬尾が泣きそうな顔をしたので、ククラは本当にすまなく思った。

魔導を使った事に何の後悔も無かったはずだが、そうやって誰かが自分の身を案じてくれるのを知らされると、心が痛い。


ククラは、アガタを思い出した。

あの世界でたった一人だけ、自分を案じてくれていた人。

しかし今では、子供を守るためには、ククラも敵に回すだろう母親だ。


ククラは、あの世界での味方はいないと、瀬尾を前に気付いて呆然とした。

親しく笑っても、ククラを心底心配する人物はいないと、ククラは思っている。

…恋人は、もういない訳だし。


瀬尾がククラの頭を撫でる。

ククラは、ばつが悪そうな顔で瀬尾を見上げた。

「…何でそないなことをするねん、坊は…」


ククラの頭を撫でながら、瀬尾が呟くように語り掛けてくる。

その手を心地いいとククラは思っていた。

「…坊はまだ5歳やろ?幾ら寿命があると言ったって、無茶なことやんか…」

ククラは瀬尾の言葉に、首を傾げる。

そのククラの仕草に、瀬尾が苦笑した。


「坊が向こうに行ってから、それぐらいやで?…それとも時間の流れが違うんかいな」

「……あ、そうか」

ククラは気が付いて納得した。

自分の身体と心が同じようには、あの世界では流れていない事を。

ククラは転生をしている。


勇者召喚等とは違って、向こうに生まれて育ち、色々な事を体験してから大人になっていくはずで。

…本来なら、まだ小さな子供のはずなのだ。

ククラが今までそうやって生きてこられたのは、全てこちらでの体験がある少年としての知識や常識で判断をしていたからであって。


もちろん、色々な事は知っているし、嫌な経験だけならもう、他人の一生分以上には受けたけれど。…友人や家族は無く。

本来なら5歳の子供がたった一人で、魔導士として自分の力に振り回されながら生きているのだ。子供とは扱われずに、常に常識のある大人として扱われて。


その巨大な力を制御できずに。

一つのよるべも無く。

心だけを頼りに。



瀬尾がククラの頭を撫でながら呟く。

「…生まれ変わる方がええか?」

「分かりません。だけど」

ククラが寂しそうに微笑む。

それを見て、瀬尾にはどうしようもなく。


「…僕が生きていると、良い事は起きない気がします。…何だか悪い事ばかりで」

「…そか」

瀬尾はククラの頭から手を離すと、提灯を握りなおした。

その瀬尾を見ながら、ククラが微笑んだまま呟く。


「…でも、瀬尾さまの事を忘れるのは、少し嫌ですね…」

ククラはそう言ってから、心の中で思い返す。

どんなに苦しくても、メリッサの事を忘れてはいけない気がする。

それは自分が起こした最大の罪で。


おぞましい自分の感情の発露で。

決して自分という人間が正しいものではない証で。


「…僕は、どうしていいのか分かりません。この先に進めばすべてを忘れて、別の人間になるんですよね?」

「そうや。…悲しみも苦しみも、何もかもを忘れるんや。…坊には良い事やないの?」

ククラはそう言われても、それを良いとは思えなかった。

こうやって考える時間を与えられているなら、しっかりと考えたかった。

考えすぎと言われても。


瀬尾は提灯を持ったまま、ククラを見ている。


祭囃子は少しずつ小さな音になり、辺りは夕暮れの様に薄暗くなって来た。

提灯の光ははっきりとした灯火になる。

瀬尾の姿はその光で、幽玄な神様らしい姿に見えた。


罪は罪だ。

自分はそれを逃れてはいけない気がする。

重さを忘れるくらいなら、初めから背負わなければいいのだ。

苦しくとも、それが自分の生きた重みだ。


「…僕は」

「坊は真面目やね。…その真面目さが坊自身を壊していくんよ?」

瀬尾がひどく真剣な声でそう言った。

「…僕が壊れる事は、別に」

「わいが悲しいわ。それを坊に押し付けてもええやろ?」

そう言われて、ククラは戸惑う。


…そうか。

そうしては誰かが悲しむと、そう言われていたのに。

僕にはその誰かが分からなくて、どうでも良かったのだけど。


…僕にもまた、そんな人が出来るだろうか。

瀬尾さまがそう言ってくれるように。


…あの、ルビーの瞳の様に。


「…生き返ることは出来るんですか?」

ククラの質問に瀬尾が頷く。

「多分できるわ。…坊は変わっとるから」

「……そうですか」

何故それが、答えに結び付くのか分からないが、そう出来るのならしたいとククラは思う。


あの世界で生きると決めたのは、自分自身なのだから。

あの瞳に誓ったのだから。

ククラはその手で右目を触る。

瞼の上から撫でても、何もないのだが。それでもここに居るのだろう。


きっと。

僕を導く悪魔が。


そのククラを、瀬尾が見つめている。

二人を宵闇が包み始めた。


「…坊。取り敢えずは行かんとあかんねん」

「はい」

歩き出す瀬尾の後をククラが付いて行く。

ユラユラと揺れる提灯が、参道を照らしている。

出ていた屋台が一つ二つと消えていく。

カラカラと下駄の音だけが響き、長い長い参道は、大きな鳥居で終わりを告げる。


何百という鳥居が、大きな鳥居の奥に連なっている姿は、どこかで見たような光景だ。

鳥居のあいだにも灯篭が立っており、そこに火も焚かれている。


薄暗くも幻想的な光景は、不安よりも安心感を抱かせた。

そこにいけば、きっと自分は楽になれる。

そう思えてくるのを、ククラはぐっと我慢をする。これも試練の一環だろう。


ククラのその表情を見て、瀬尾が提灯を手渡した。

「ええか、坊。…よく聞くんやで?」

瀬尾にククラが肯いた。

その眼に迷いがないのを、瀬尾は心配する。


…だから、壊れるって言うねん。


「…道すがら、何かが話しかけてくる。それがどんなに親しい相手でも誘いに乗ったらあかん。たとえ、わいでもや。…すべてをかわせば最後に小さな鳥居が見える。…赤と白があるはずや。赤い方に入り。ええな?」

「…走っていっても良いですか?」

「なんや。せっかちやな、相変わらず」

瀬尾がそう言って笑う顔を、ククラはしっかりと見ていた。


この方に会うのも、きっと最後だ。

…僕はどうして、こういう風に思ってくれる人と、長く一緒にいられないのだろう。

どうして、この時間を胸に焼き付けることしか出来ないんだろう。


どうして僕の手は、誰の手も握り続けは出来ないんだろうか。


それが、運命だというなら。

絶望し震えながら、僕はそれを受け入れよう。


僕が、災厄を起こすのなら。

この命が尽きるまで、それを躱せるように努力をしよう。


ただ、一人で生きてゆくのが、僕の定めなら。

泣きながらでも、走るんだ。その先が、たとえ、闇に満ちていても。


いつか光を、見つける。

こうやって、僅かな光を集めて。



ククラが微笑んで肯いてから、走り出した。

瀬尾はそれを見送りながら、祈る。

あの小さな子供が迷わぬように。迷った時に傍に誰かが現れて、助けてくれるように。


「…坊、元気でいるんやで。…これで、永の別れや」


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