始まりの赤い悪魔・4



その後ククラは頑張って2週間で、魔導書は何とか読めるレベルまで文字を覚えた。

満面の笑みを浮かべるククラをにっこりと笑ってみている自分が、アッシュは何だか面白く思えた。


こういう自分も悪くはないだろう。

新しい魔導書を積み上げてアッシュがにこりと笑った。

ククラの顔は引きつっている。


「…え?まさかそれ全部読めと?」

「一辺にとは言ってない。安心すると良い」


ははっとククラが笑った。

冷汗が流れているだろう事はアッシュも知っていたが。

それは構ってはやれない。


テーブルに積まれた本を見てククラは呟く。


「何年かかるんだよ…」

アッシュが微笑む。

「別に何年でもいいだろう。私が教えるのだから」

「…そっか」

ククラの笑顔にアッシュも微笑みを返した。

「さて。それではやろうか」

アッシュの台詞にククラは小さく頷いた。



しかし現実はそう甘くはない。

数時間後にはお互いに混乱しつつあった。


「…う、ん?」

「だから。魔法と魔導は効き方が全然違って、お前が使っているのは分類から言えば魔導の方なんだ」

1冊の厚い本を片手に、アッシュがククラに説明をする。


「アッシュ。分かんない」

「…お前は覚えようと言う気はあるのか?」

ククラがつくよりも何倍もの回数の溜め息をアッシュがまた吐いた。


「だってさ、概念だけって難しいよ。それを体験して生きているならともかく、僕は縁がなかったから話だけ聞いても分かりづらいって」

「…正論だがな」

ククラの言い分もごもっともなだけに、アッシュも詰め込むのを少し諦めかけていた。自分の目元を掴んで揉んでいる。


「…一応、自分でやってみるから、暫くほっといてくれる?」

ククラの提案にアッシュは頷いた。

相向かいで座っていたテーブルの椅子を離れてククラは一人でソファに座った。



膝の上に乗せた歴史書を開く。


此処の世界の名前はフィフスグラウンド。

大きな大陸が一つとその他の小さな島で構成されている。


名前の由来は昔は五個の大陸があったけど、沢山の戦争で他の大陸は沈んだらしい。今はこの大陸だけが確認をされている。


大陸の周りを取り囲むように国があり、真ん中には焦土と呼ばれる不毛の地域がある。

その大地から飛来する砂は人に悪影響を与えるので、国ごとに防砂林を作っている。それがつながって境界森林になっている。



それぞれの国名は以下の通り。

魔導国家ワーズルーン。軍事大国ミン・マク・リョク。魔王の国エレスタス。

群島国家ポイソナ。最果ての国ジンライ。魔導と商業の国ゲレルゲラル。

遊牧の国オンウル。新興国テルーサム。鋼の国メケメカス。


ククラがふと見るとアッシュが珍しくうたた寝をしていた。

そっと毛布を掛けてからまたソファへ戻る。

もう冷めた紅茶をマグカップから飲んで、再び本を開いた。


近代歴史は興味がないのか、ククラはページをさっさと捲る。


その手が止まった。ギルドのランクが書いてある。


下からG、F、E、D、C、B、A。その上がAS、S、SS、SSS、V、VX、X、Z。

仕事量やその知識、魔導量などに応じてギルドマスターが決めている。

たまにひいきも発生するらしい。


細かいなこの本。

次の項目は帝の話だ。

ワーズルーンではポピュラーな役職だが、他の国ではあまり名乗っている人が居ない。理由は不明。


この人たちは各魔導の種類ごとにちなんで、名前が付けられている。

その魔導分野に長けているとか、その魔導を確立した家系の出身とか、そんな理由でその名を貰うらしい。呼び名は以下の通り。


光帝、炎帝、氷帝、嵐帝、地帝、闇帝、空帝、刻帝。

…神、魔、創造の帝は、現在は存在しない。昔はいた事が確認されている



ククラは本を閉じる。読めるようになったとはいえ読むのが遅いなやっぱり。

今日は此処までにしよう。いっぺんに入れても、きっとどこかから漏れる。

…耳とかから。


立ち上がって伸びをする。

ククラが動いてもアッシュは起きない。

自分のせいでそんなに疲れたのかと、ククラは少し反省をする。


何か作ってみようかと思い立って、小さなキッチンへ入る。

…食べるかなアッシュ。

まずいと言ったら二度と作らない決意で調理を始めた。


以前作っていたのは前世で、調味料が違う事にククラは悩む。

物音に起きたのかアッシュが覗き込んできた。


「ククラ?何をしてるんだ?」

「ん?料理だけど」

「…それは分かる。何故作っているんだ?」

ククラは素直には決して言わないタイプ。


「…食いたいから」

「そうか」

それだけ言うとアッシュは居間に戻っていった。

何となく下がったテンションは、気にしないでククラは手を動かす。



煮込みに入ってからククラは考える。

自分の魔導の知識の低さについて。


…何とかしなきゃいけないのは分かるけど。

そんな直ぐには覚えられないし。

ククラは上澄みの灰汁を取りながら、何かが引っかかっている気がして上を向いて悩みだす。


…何かあった気がする。

考える事に料理は向いている。味を仕上げて手元の火を消す。

居間を見るとアッシュは座って本を読んでいた。


「一緒に食べる?」

ククラが声を掛ける。

「…私が?」

「え?嫌?」

アッシュは肩を竦める。


「今日はいい。何だか疲れていてね」

「…そっか。じゃあ仕方ないな」

自分の分だけを持って行って、テーブルで食べる。

本を読んでいるアッシュを見ながら、ククラは喉元まで出て来そうな感覚に悩んでいた。

「…何かあったんだよなあ」


そのつぶやきにアッシュが顔を上げた。

「どうした?」

「ん?…何かあったなあって」

「…なにが?」

ククラは非常に気まずそうに言う。

「ずる」

「…は?」

アッシュに意味は分からなかった。

食べながらまだ何かを悩んでいる風なククラを、ソファからぼんやりと悪魔が見ている。


ついにククラはテーブルに突っ伏すような体制になった。口にスプーンをくわえたまま。

「…何だっけなあ」

「行儀が悪いぞ、ククラ」

その言葉にびくりとククラが反応した。


「…あ、うん。…そうだな」

身体を起して口に運ぶ。

その姿がアッシュの不安を誘った。

しかし聞けない。

このところのアッシュのジレンマだ。ククラに直接聞けばいいのだが聞いたら何かを壊してしまう予感があった。

決まって少し俯いている。

あれは多分、世界を少し拒否しているのだろう。


話していればわかるが、ククラはそんなには後ろ向きではない。

ただ時たま、今のように何かを抱えているような顔をする。

そしてそれが自分の思っているような事だったら。


アッシュは息を吐く。

妄想で怒りをためるのは愚か者のする事だ。




「あ」

ククラがボトリと口からスプーンを落とした。

何事かとアッシュが見る。


「…そうか、それなら出来るか。…でもなあ」

ククラが大きい声で独り言を言い始めた。

じっと見ているアッシュに気が付き、恥ずかしそうに笑う。


「…あのさ、アッシュ。ものは相談なんだけど」

「何だ?」

「覚える魔導に優先順位ってつけられる?」

「出来ないことはないが」

ククラはほっとした顔で笑う。

その顔を見て安心している自分に気付き、アッシュは胸を押さえる。


「…どこか痛いのか?」

アッシュの素振りに心配したククラが聞いてきた。

首を横に振りアッシュは否定する。

「そっか」

ククラがキッチンに消えてからアッシュは息を吐く。

少し天を見上げる。

勿論、今は月は見えないのだが、そんな気持ちだった。






翌日ククラに言われた魔導の優先順位を決めていると、ククラが魔導書を持ってきた。

「どのページ?」

「…こことこれと…」

アッシュがページを折ると、ククラは頷いた。

そしてベッドのある部屋へ入る。

「アッシュ」

「なんだ?」

ドアを閉めようとしているククラを見る。


「…入るなよ」


ククラはそう言ってドアを閉めた。

部屋の中でククラは気持ちを落ち着ける。

凄く久しぶりだ。


使える事は分かったが、いざ使おうと思うとやはり緊張する。

転生をしたこの体でなぜ使えるのかは分からない。

きっと気の持ちようだと思う事にした。


使える事に後から道理を探すのは難しいな。ククラはそんな事を思った。


ククラは両手の平を、勢いよく合わせて鳴らす。

ぱあんと良い音が響いた。

「シシキノミコタルヤキタリテヤドリマセ」


短い祝詞を唱えてから、本を1枚破いて丸めて飲み込んだ。

自分の腹の中で何かが解けていく感覚があった。

たくさんの言葉の糸が、身体を伝って意識の中へ潜り込む。

それが染みとおるまで息は吸えない。


「…はあ」

ククラは止めていた息を吸い込む。

緊張の余り、手のひらにはうっすらと汗をかいている。

…さて、何回まで耐えられるかな?



限界まで飲み込んで、ククラはベッドに倒れこんだ。

こんなに続けて、この技を使ったことは無い。

それに加えて、力を使うこと自体が久しぶり過ぎでククラは前よりも疲労を感じていた。

身体は怖気がするし、気持ちは悪いし。頭痛までしてきた。


「…これはきついな」

ズルなんだから我慢しないと。

そうは思っても体の不調は、当の本人のククラでも嬉しくはなかった。

ベッドの上でおなかを抱えて丸まる。


「…ククラ?どうしたんだ?」

アッシュが入って来た。

長い時間部屋から出て来ないから心配になったのだ。

「大丈夫か?」

「…ん、平気」

そう言ってアッシュを見上げる。

その顔は随分と疲れて見えた。


「…いったい何をしたんだ」

「ずる」

その答えは的を得ていなくて分かりづらい。

少しイラついた声でアッシュが聞く。


「それは何の意味だ?」

「…前世で使っていた技で、紙を飲み込むとそれに書いてあることは覚えるっていうのがあるんだ。…それ」

アッシュがポカンとしてククラを見た。それはこの世界の魔法には無い事象だと。


「…そんな事が出来るのか」

「…ん」

ククラの返事が短い。

覗き込むと半目でアッシュを見た。


「…悪いけどさ、僕、少し寝るわ」

「……ああ」

「ん。お休み、アッシュ」

ククラが目を閉じる。

寝息はすぐに安定した物になった。

余程の力を使うのか。

アッシュはククラを見ながら考える。


早く覚えるための技術を持っているという事か。

そんなものがある、彼の世界は一体どんな世界だったのだろうか。


ここよりも平和なのか。

それとも殺伐としているのか。

決して見ることが出来ないだろう異世界に、アッシュは思いを馳せてみた。


何時もは嫌がる目の前のククラの髪を撫でてみる。

眠っている今なら怖くもないだろう。


柔らかい手触りに、ひとり微笑んだ。




ククラが目を覚ますと、アッシュも椅子に座って目を閉じていた。

見ていると気配を感じたのかアッシュも目を開ける。


綺麗な赤い瞳。

ククラはそれをじっと見る。

余り見つめられているのでアッシュがぱちりと瞬きをする。


「あ、お、おはようアッシュ」

その瞬間、何故か狼狽えた声でククラが身を起こした。

「ああ。おはよう」

何時も通りの落ち着いた声。

ぴょんと起きたククラがバスルームに入るのをアッシュが見送る。

顔を勢い良く洗ったククラは、そこにかかっている鏡を見た。


…ルビーみたいな眼だったな。

先に見たアッシュの眼を思い出してそんな感想を持った。鏡に映っている自分には、いいっと口を横に広げて嫌そうにして見せたが。


次の魔導書に進んだククラを、微笑んでアッシュが見つめる。

同じ技を何百回と繰り返し、アッシュの期待に答えられてきたククラが、満足そうなアッシュを見て質問する。


それが何時もの光景になりつつあった。





ある日、ソファに座ろうとしてアッシュは自分の身体の異変に気付く。


…誰かに呼ばれている。

しかし今はククラの支配下にあるのだ。

他人が自分を呼べるはずがない。


アッシュはそう思いながらも高まっていく動悸を押さえられなくなってソファに手を着いて屈み込む。


「え?アッシュ、どうしたんだ?」

ククラが異変に気が付いてすぐにそばに来た。

アッシュは傍に来たククラに大事ないと伝えようと思ったが胸の痛みが増してきて伝えられない。


「大丈夫か」

屈み込んでククラがアッシュに手を触れる。

その手が少し弾かれた。


「え?」

「いまのは?」


弾いた方も弾かれた方も疑問の声を上げた。

もう一度ククラがアッシュに手を振れる。

やはり手が弾かれた。

「何で?」

ククラが疑問を声にする。

アッシュは自分の身体が浮くような感覚を感じていた。


強制的に召喚をされようとしているのは明白だった。

誰が、は容易に考えられた。もともと自分を召喚した相手だろう。


どうやって、が分からない。

しかし分からなくても確実に体は呼ばれようとしている。

このままではククラも巻き込むだろう。

別の人間に召喚をされてククラが分からなくなるのは嫌だった。

万が一ククラを攻撃したら。



考えているうちに辺りには風が巻き起こっている。

部屋の中につむじ風の様に風が吹いていた。


テーブルの上の本もパラパラと音を立ててページが捲れている。

ククラが書き取りをしていた紙は床を舞っていた。

「これは…」

ククラが立ち上がりアッシュを見ている。

見た事のある光景だとククラも理解をした。

しかし自分が支配しているものを奪えるものなのか。


アッシュは自分に触れないようにと言おうと思った。

だが目の前で巻き起こった風はククラをも吹きあげる。

ククラは自分の身体に酷い苦痛を感じた。


「…ぐっ…」

痛みで目をつぶったククラは自分がどうなったか分からない。

アッシュの目の前でククラの身体が薄まっていく。

ククラも召喚されていた。


ばかな。


アッシュが手を伸ばそうとした時に彼の視界は消え失せた。



視界が戻った時には、魔導陣の中にいた。

自分はいったいどうしたのだろう。

此処に呼ばれたのは分かったが、それ以前の記憶が明白ではない。

それにしても、私を呼び出すとは愚かな人間だ。


アスモデウスが輪の中で立ち上がると、見慣れない男が輪の外で待っていた。


「…お前が召喚者か」

「そうだ。やっとお前を呼び出せた」

そう言うと男はニヤリと笑った。

白い仮面で顔を半分隠したその男は、強い魔導力を纏っていた。


それぐらいの魔導士でなければ私を呼ぶことも出来ないだろうが。

悪魔は薄く笑った。

アスモデウスはその大きな体を少し屈めて男に聞く。


「私に何の用だ」

「…それは」

男が願いの内容を告げた。


一国の君主の事を口にした。

昔から人間と言うのはどれも変わらないものだな。

たとえ強い力をもってしても敵わないものがあるという事か。

自分にはとてもたやすい事で、アスモデウスは鼻先で笑う。


「承知した」

そう言って手を一振りする。

アスモデウスの身体から物凄い量の魔導力が溢れだした。

それは形を成し、物事を達成すると掻き失せた。

人間の男にとっても一瞬の事だった。

「…終わったのか?」

「私に確認を取るとは愚かだな」


アスモデウスを眺めていた人間は頷いてその手に抱き上げていた供物を置いた。

地面に横たえられる。

「これがあなたへの供物だ」

そう酷薄な顔で告げた。


人間の少年だった。

口や腹から血を流しているがまだ呼吸はしていた。

その赤い鮮血にそそられた。アスモデウスは片腕を伸ばして掴む。

掴まれた少年が薄く目を開けた。

アスモデウスをじっと見る。



そして笑った。



「…どうしてほしい?アッシュ?」

頭を横殴りされたような衝撃がアスモデウスを襲う。

実際に攻撃を受けたわけでは無い。

これは自分の心が起こしたものだと知った。


身体が揺らいだ。

少年を落とさないように膝を着く。

何故、自分がそんな行動をとったかは分からなかった。


少年がアスモデウスの手を触った。

その感触を懐かしいと思った。


「…僕はどうすればいい?」

少年が再度聞いてきた。


「…ク、クラ…」


アスモデウスの口から言葉が漏れた。

知らない言葉なのに、なぜか心地が良かった。



外の召喚者が驚いた表情でこちらを見ている。

舌打ちをした後、何かを振りまいた。

魔獣か人の血だろう。

そして新たな呪文を唱え始めた。


それは自分の意志を刈り取る呪文だとアスモデウスは悟った。

いまの自分はこの魔導陣で拘束をされている。

いくら抵抗をしても最終的には命令を聞いてしまうだろう。


召喚者が長い呪文を唱え終わらないうちに何とかしなければ。

アスモデウスは何故自分がそんなに焦っているのかはわからなかった。


目の前の少年を見る。


その名も分かった。

何故だろうか。心のありかが分かるようだった。

「…私をお前に取り込め」

目の前の少年もまた魔導が使える事は分かった。

「それは」

少年が言葉を濁す。


分かっている。

別の召喚を重ねたら、どうなるかは分からない。生き延びるかさえ分からない。

それでも自分がこの少年を食らってしまうのは嫌だった。

理由は分からない。

だがアスモデウスは嫌だった。


捕縛の長い呪文でも、もうすぐ終わってしまう。


「…多分私はただの存在するものになるだろう。それでもお前の傍に居たいのだ」

そう言いながら何か思い出すものがある。

これは何の記憶なのだろうか。

「分かった」

少年が頷いた。それを嬉しいと思った。

それを寂しいとも感じる。


…永遠に別れると知ったのだ。


少年は…ククラは迷わずに手を打ち鳴らした。

輪の中でそれは心地のよい音だった。


ククラの眼が真っ直ぐに自分を見ている。


その眼は揺るぎがなく美しかった。


アッシュはククラの見る風景を共に見ていきたいと願う。



「…スベカラクスベテヲスベルアマツカミヨ。カノチヨリジンダイニイタルイマカミヨノチカラヲワガチニヤドシタマエ!!」


ククラがそう唱えるとアッシュは意識が混濁していくのが分かった。

複数の力にかき回される。

意識が滲んでいく。力も体も何処かへ霧散する。

沢山の光がククラの身体に入っていく。


偉大なる悪魔はククラの中に宿った。

「う、く」

ククラは右目を押さえて呻いた。

地面にあった魔導陣はかき消えていた。


耳をすますが何も聞こえない。


「…なんだよ。もう喋れないのかよ。怒らないのかよ。狼狽えないのかよ」

悪い口調で言い続けたが反応はなかった。


右目の悪魔は沈黙をしたまま何も答えない。


「…楽しかったのに……もう終わりかよ……」


胸が痛い。…これは心が痛いのだ。

眼の奥が熱くなって涙が溢れた。

ククラは泣き声をこらえる。


右目が少し疼いた。




その時、唸りながら男がククラに近づいた。

召喚を破られた男は反動を受け、全身に傷を負っていた。

血を吐きながらククラに銃を向けて立っている。


この世界でこんな小型の銃を見た事がないククラは一瞬判断が遅れる。

銃が火を吹かずに弾を打ち出した。


避けるために、覚えて間もない転移を発動する。


行き先は、ククラには分からない。

その知識は、悪魔の物だから。





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