第1話


「ーってことなんだよね!って、話聞いてる?」


「ん?あぁ…古代の麻婆豆腐がどうとか」


「違うー!古代の魔法書だよ!」


「ふーん」


古代の魔法書?なんだそれ。こいつはいつも突拍子もないこと言い始めるな。だいたいこの前言っていた伝説のドラゴンの話はどこに行ったのか。結局正体も分からず終いのまま話をしなくなったな。年頃だ、雑誌や何かで見た話題をそのまま言っているのだろう。


「それで、魔法の古代書がどうしたって?」


「ちょっと違うけど…まあいいや。なんでも、古代の魔法書を求めて調査を続けていたマイケルさんが突然失踪したって話らしいよ…これは魔法書の呪いだって持ち切りで」


誰だよマイケルさん。

私は彼女の情熱に負け、視線をおにぎりからアイリスへと戻す。こういうタイプはちょっと興味を向ければ永遠と話してくるタイプだ。放課後くらい好きにさせてもらいたいものだ。


「それで?人を消すほどの力をもつ魔法書を手に入れてどうしたいんだ?」


「悪用するってことじゃないよ!古代の魔法書ってとこに惹かれたの!魔法使いなら古代の魔法に1度は興味を持つでしょ!」


「その古代の魔法が進化したのが今の魔法なんだがな…」


魔法の歴史は神話まで遡る。この世を創造した9人の女神が人類に与えた火・水・風・土の4つの魔法。この4つのエレメントが現代の高度な魔法の礎となっている。現在はこれに光と闇、電気などを加えた多くの魔法に進化させ、それを利用して生活をしている。今では何千もの種類がある魔法だが、約千年前は3級魔法程度しか扱えなかったのだとか。


現在はさらに、ここ100年ほどで急激に発展した科学により飛躍的に魔法技術を進歩させている。過去には科学者狩りがあったらしいが、この話はまた今度。

古代魔法についてはほぼ解明されており、当然歴史の授業で習う。これ以上何を知りたいというのか……


「もしかしたらまだ見つかってない魔法があるかもよ?永遠の命とかさ」


「そこは一般学校の連中に頑張ってもらいたいものだ。魔法の範疇じゃない」


不老不死などは生物学の範疇ではないか?と疑問に思いつつそう投げかける。というか情報がふわふわしすぎている。まぁ、ロマンはあるが……


「てねマジレスしてくるからつまんなーい。私ひとりで探しちゃうもんね。べーだ。先帰るねー」


「え、あっ、ちょ」


そう言い残すとアイリスはカバンを持ってそそくさと教室を出ていく。


「たく、しょうがないやつだ……」









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魔法使いは転ばない! @haiburando

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