第60話・おおう、いつもの調子に戻ってきたな。
父上と話し終わったので自室に戻った後。
「そうなると今から準備を整えるんスか?」
「ああ、出来れば明後日の朝には出発したい」
「わかっていたけど急ではあるのう」
「すまない……」
「いや、いつも世話になっているから問題はないんじゃが」
よかった。
と言いつつ何か埋め合わせはしないと。
たまには何かしらの方法で恩返し出来ればいいが、あんまり思いつかないな。
色々悩んでいると、アクアが何か思いついたのかニヤッと笑う。
「そういえば久しぶりにデートに行きたいッス!」
「確かにワシもバルクとデートしたいのじゃ」
「まあ、それでよければ付き合うぞ」
「「やったあ!」」
「うぉい!? いきなり飛び込んでくるな!」
今年は難しいかもしれないが来年の頭には行けそうだな。
自分の中で時間とかの計画を考えていたが、隣に座っていた2人に勢いよく抱きつかれる。
「別にこれくらいはいいじゃないッスか」
「お前な、言いにくいが胸が当たっているぞ」
「当てているんスよ。てか、バルクはディアみたいにまな板の方がいいんスか?」
「ふふっ、誰がまな板かの?」
「あ、おい……」
この雰囲気はやばい。
右隣にいるディアは長身のモデル体型だがスレンダーで胸がストレート。
本人もソコを気にしているみたいで、アクアのまな板発言に対して凍えるような冷気を出している。
「まな板はディアのオッパイの事ッスけど?」
「純粋無垢そうな顔で言わないでくれるかの」
「ならどう言う顔をすればいいんスかね?」
「たぶん言わないのが吉だと思うぞ」
「「へ?」」
どう見ても地雷じゃん。
まあでも本来のアクアはメスガキタイプなので、こういった時は突っ込みそうではある。
なので互いに放つ違和感にガクガク震えそうになるが、マズイと思いわざとらしく話の流れを変えていく。
「おほん! それでお前らはどんなデートがしたいんだ?」
「強引に話をズラしたッスね」
「当たり前……いや、突っ込むのはヤボだな」
「なら別の機会でアクアとは決着をつけるのじゃよ」
「負けないッスよ」
わあぁ、俺を真ん中にして視線の花火がぶつかっているぞ。
マジでコイツらは仲がいいか悪いか……多分いいとは思うが、色々とぶつかり合っているな。
まあでもさっきよりは雰囲気がよくなったので、このままゴリ押していく。
「アクアは前みたいに平民街の商店街でもいいのか?」
「うーん、悪くはないッスけど今回は別のところに行きたいッスね」
「ほうほう、ちなみにどこだ?」
「最近できた巨大な総合施設ッス」
王都だと大型のショッピングモールか?
ゲームではいろんなアイテムとかが揃う所で、商店街みたいに割引はないが値段が安定してる場所だったはず。
総合施設と聞いて過去の記憶を洗っていると、アクアが惚けた顔で俺の耳に息を吹きかけた。
「ツッ!?」
「フフッ、やっぱりバルクは耳が弱いんスね」
「お前な……ってえ、ディアまで息をかけてくるなよ」
「これくらいはいいじゃろ」
アクアを構いすぎてディアが不服そうに頬を膨らませている。
なので俺は苦笑いを作りつつ、今度はディアに向けて言葉を発した。
「まあ、でだ。ディアは俺と何処に行きたいんだ?」
「ウチは決まっておるが当日までのお楽しみじゃよ」
「お、おう、わかった」
正月の2日と3日はそれぞれ振り回されそうだな。
少し気が重たいが、それ以上にワクワク間もあるので自分も若くなった思い始める。
するとアクアが何かに気づいたのか、俺の左腕に抱きつくのをやめてある物を棚に取りに行った。
「ちょうどいい物があったッス」
「いい物? あ……」
「確かにいい物じゃな」
ちょ、ま。
めっちゃいい笑顔をしているアクアが持ってきたのは竹で作られた耳かき&綺麗な布。
いまそれをやられるとキツイので逃げたいのだが、ディアが右腕をガッツリ掴んで離れられない。
「ウチとディアが片方ずつバルクの耳を綺麗にするッスよ」
「え、ちょ、ま」
「先はワシからやらせてもらうかの」
「さっきのお詫びもあるしどうぞッス!」
これはもう無理だな。
ディアが耳かきと綺麗な布を手に取り、アクアが俺の体を強引に動かし横になる体勢になった。
その結果、ディアに膝枕をされているので柔らかい太ももの感触を頭に受ける。
「さてやっていくのじゃ」
「ハハッ……」
「あ、バルクの目が死んでいるッス」
いやだって耳掃除は好きだけど敏感なんだよ。
この特性は前からでバルクに憑依してからも変わってないので、少しは感度を落として欲しかったが。
色々と文句は浮かぶが、ディアが耳の淵をカリカリとやり始めた。
「くうぅ」
「耳垢が結構たまっておるのう」
「これはウチの時も楽しみッスね」
やっぱり自分でやるよりも効くな……。
このままだと前みたいに寝てしまうが、ディアに優しく頭を撫で始められたと同時にアクアが毛布をかけてきた。
なので眠気が湧き上がり、俺はそのまま意識が落ちていくのを感じていくのだった。
〈作者から〉
・ストックが無くなってしまったので一旦書き溜めに入ります。〈更新の停止〉
・いつも読んでくださる皆様、申し訳ありません。
死亡フラグの悪役転生、凡人にこのシナリオは鬼畜です 影崎統夜 @052891
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