第59話・さてさて今回も始まりました知識チートと無茶振り……。
カーマセル伯爵家の執務室。
大勢の奴隷を購入して実家に戻ってきた後、父上に報告する為に執務室の中に入ったのだが。
いつもの仏頂面なのに、どこか呆れた表情を浮かべるアレクセイがいた。
「よく来たなバルク」
「父上もお疲れ様です」
「あ、ああ、それで報告を頼む」
「わかりました。まずは個人的に狙っていた奴隷が3人と良さそうな人達を選んできました」
「そ、そうか……」
父上よ、めっちゃ戸惑ってない?
いちおう雇ってくる人数は少し超えたけど、そこは元々ズレるとは事前に言ってあるから大丈夫なはず。
なので向こうが戸惑っている理由を考えていると、父上が微妙な表情で呟く。
「女が多いのは理解していたが全員とはな」
「あー、確かに……。でもまあ、対応してくれた奴隷商人が言うには男性奴隷の大半は別の貴族が購入したらしいですよ」
「それはドユコトだ?」
「細かくは聞いてませんが、おそらく家の兵力を増やすつもりでは?」
「なんかまた問題が起きそうだが?」
それは俺も思った。
しかもゲームの知識的に似たイベントを知っているので、心当たりがあるんだよな。
ただカーマセル家と関係あると聞かれるとNOよりなので、いったん放置するのが良さそうか?
「ただ今はあまり動けませんけどね」
「それはそうだが……。まあ、今はお前が雇った奴隷達への処遇確認だな」
「そうですね」
今回雇ったのは123人。
カーマセル伯爵家はお金に余裕があるが、無駄に使うわけにも行かない。
なので事前に計画は立てていたけど、少しズレが出たので確認していく。
「まずはお前が特別扱いしている奴隷が3人」
「彼女達は訳ありですが優秀な能力を持ってますね」
「確かにリリサの噂は私も知っているが、本当に大丈夫か?」
「最低限の常識を叩き込んだり研究場所が必要になるくらいですね」
「だ、だいぶキツくないか?」
初期費用はきついけど長期的に見ればリリサは強いんだよな。
その辺は父上も理解してそうだが、微妙にしかめっ面になっているのは気のせいかな?
「リリサはこき使えるのと元国家錬金術師なので腕自体は問題ないと思いますよ」
「まあ、そうだな……。ただ私の胃の心配もしてくれると助かるが」
「そこは自分ではなく医者と薬剤師の出番だと思います」
「正論だが冷たくないか!?」
半泣きになる父上とどうしようもない俺。
マジで最初の冷酷っぽいキャラが吹っ飛ぶレベルでアレクセイが人間臭いんだけど?
まあでも個人的にはコッチの方が好みなので、俺は気持ちよく話していく。
「まあ、父上の胃も大事ですが今は奴隷達の待遇話では?」
「お、おう。それで続けてくれ」
「ええ、父上には真実のパープルを用意して欲しいです」
「いきなりぶっ飛んだなオイ!?」
「まあ、ディアの時と同じパターンですね」
父上よ、素が出てますよ。
真実のパープルはディアに使った真実のルビーの亜種で、雷魔法の適正のある者に使える品物。
レア度的には真実のルビーよりも少し高いが、父上なら手に入るはず。
「お、おほん! それでなぜ真実のパープルが必要なんだ?」
「それはリーネットに使いたいからですね」
「リーネット? お前が特別視している左右で目の色が違う奴隷か?」
「ええ、そうです」
確かに真実のパープルは貴重品だけど、それ以上に見返りが大きい。
その辺を出来る限りわかりやすく説明すると、父上が渋そうな表情で頷いた。
「彼女が本当に雷魔法を使えるなら価値はあるが」
「それだけだとメリットが薄いですか?」
「それもあるが、魔法関係はウチも煮湯を飲まされているんでな」
「と、いうと?」
「お前の魔法属性の件とカルラが魔法関係の病気になっている件の二つだな」
カルラってどっかで聞いたことのある名前……あ、バルクの妹で続編のサブキャラじゃん。
ゲームのストーリーでは魔力暴走病で寝込んでいる設定で、続編の主人公が解決してカーマセル家から報酬をもらう話。
「うーん、ではカルラの魔力暴走病を治せたら真実のパープルを用意してくれますか?」
「もちろんそれなら……え? カルラを治せるのか!?」
「確定ではないですが可能性自体はありますよ」
俺が知っている手順ならいけるが。
こちらの言葉にキャラ崩壊レベルで椅子から立ち上がるアレクセイ。
その姿に驚きながら、俺は父上の隣にいる執事長のクレイブに声をかける。
「クレイブは王都から宿屋町であるカーカルまでの距離はわかる?」
「ええ、馬車を使えば半日ほどで到着しますね」
「なるほど……てなわけで父上、明後日から一週間ほどカーカル近くにある岩鳥の巣に行ってきますね」
「え、あ? おう」
とりあえず馬車と御者さんを借りないとな。
それとアクアとディアにも許可を取らないといけないし、やることが多いな。
まあでも今のうちに
「なので次の日に平民街に行って物資を買いに行きますね」
「わ、わかった! でだ、私にして欲しい事はあるか?」
「父上には馬車と御者を貸して欲しいです」
「よしクレイブ、ウチの御者達に連絡を頼む」
「かしこまりました」
父上は思い切りがいいよな。
てなわけで俺と父上は奴隷達への話をまとめた後、カルラを助けるための準備を進めるのだった。
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