第56話〈第二章〉・やはり異世界ファンタジーなら奴隷は欠かせないよな!〈個人の意見です〉
魔法闘技祭から3日後の12月18日。
奴隷を雇う件を了承してもらった後、父上の援助金も含めてかなりの額を収納鞄に入れつつ。
王都の平民街にあるトップクラスの規模を持つ奴隷商の重役と面談を行っていた。
「初めましてバルク・カーマセル様。わたしはこのブロック奴隷商の幹部、ガイザルと申します」
「ガイゼル殿よろしく頼む。それで自分がきた理由はもう知られてますか?」
「伝達役からお聞きするに手駒が欲しいのですよね」
「そうだな」
奴隷商内にある客室。
相手の重役であるカイザルは40代後半くらいで恰幅のいい薄毛の男性。
見た感じは少し怪しいが、合法の奴隷商なので表向きは問題ないはず。
そう思いながら俺はポケットから金貨を1枚取り出し、テーブルの上に置く。
「これは前金と案内費として受け取ってくれ」
「ほう……。では、ご厚意に甘えます」
普通に受け取るんだな。
さっきまでカイザルは少しめんどそうな雰囲気を足していたが、金貨を渡したことでガラリと変わったな。
その変化のわかりやすさに苦笑いを浮かべながら、俺は続きを話す。
「本題に入るが戦闘奴隷を含めて100人くらいの奴隷を雇いたいが大丈夫か?」
「もちろん可能ですが、男性の戦闘奴隷は数日前に大勢売れたので品薄状態です」
「ほう……。なら女性の戦闘奴隷はどうだ?」
「ある程度は残っているので数を揃えるのは大丈夫ですよ」
「そりゃよかった」
個人的に男性の戦闘奴隷を雇えないのは少し痛いが仕方ない。
そこは割り切っていると護衛役のディアとアクアの方から寒気を感じるので、若干ガクガクしながらカイザルからの発言を聞く。
「それでは奴隷が生活している区画に向かいたいですがよろしいでしょうか」
「もちろん。ただ先に言っておくが
「わ、わかりました。ではわたしの後ろについてきてくださいね」
「ああ」
このセリフを言わないとな。
ゲームの時の隠しイベントを思い出し、カイザルへ釘を差しながら一緒に客室からでる。
その時に従業員さんから勢いよく頭を下げられたので、俺は苦笑いで手を振っておくのだった。
ーー
まずは借金奴隷の区画。
ここは食い詰めて自分を売ったり口減らしとして売られた奴が集まる場所らしい。
ちなみに戦闘奴隷代わりとして元々少ない男性が大体売れて、今は女性が大勢残っているようだが……。
「奴隷達は服従の首輪をつけているので安心してくださいね」
「ああ、わかった」
奴隷の首輪は基本的に主人の命令には絶対。
もし反発したりしたら首輪から電撃が流れてお仕置きされるらしいので、反抗的な奴隷は少ないみたいだ。
ただ、その話を笑顔で話すカイザルを見て内心で若干引きながらドアを開ける。
「ツッ! 銀髪のイケメン!」
「他のやつが言っていた通りね!」
「貴族様、わたしを買ってくれない?」
「……」
縫い物や木工工作をしている女性陣。
見たところ10代前半から20代前半くらいの女性が作業しており、みんな簡易的な服を着ている。
……なんか自分を売り込んでいるやつもいるが。
「お前ら作業に集中しないか!」
「ああ、ごめんなさい!」
「なんというか奴隷の扱いに慣れているな」
「奴隷商なのでこれくらいは当たり前です」
奴隷を見た感じは虐待されている感じはあまりない。
カイザルの立場からすれば、商品を傷つけるのは価値が落ちるとでも考えているのか?
俺と価値観が近いのかと思いながら、女性奴隷の顔を見ていると何人か見覚えのある人物を目にする。
「何人かは目星がついたけど他の場所も見てもいいか?」
「もちろんです!」
初手から金貨を渡しているからカイザルの機嫌がかなりいいな。
やっぱりお金は物事を解決すると思いながら、カイザルの案内で他の区画も回るのだった。
ーー
何個かの区画を回った後。
カイザルがいきなり渋い表情になりながらつぶやいた。
「バルク様、これ以上はいわく付きになりますが大丈夫でしょうか?」
「いわくつき? 例えばどんな奴隷がいるんだ?」
「それはどれだけ教育しても反抗的な奴隷や縁起が悪い奴隷がいるのです」
「ほうほう、なら案内してくれ」
「……わかりました」
向こう的にはあんまり案内したくなかったんだろうな。
ただ名目的に俺が全ての奴隷が見たいって事で案内せざるを得なくなり、仕方なく行くみたいだな。
カイザルのテンションが下がった感じをヒシヒシと受けつつ、例のいわくつきがいる区画に入った。
「お前ら貴族様が来たから厳戒態勢にはいれ!」
「「「はっ!」」」
いわくつき奴隷区画の前には武装した奴らがおり、さっきまではのんびりしていたが俺がきた事で表情がこわばった。
なので俺は軽く手を振った後、ポケットから大銀貨を取り出して警備員の1人に渡す。
「今日の業務が終わった後にコレで仲間と飲みにいくといい」
「よ、よろしいのですか?」
「迷惑をかけているのはこちらだし、前払いになるが働きには報酬を渡すのは当たり前だろ」
「ありがとうございます!」
めっちゃ嬉しそうに大銀貨を受け取ったか。
というか、警備の方々のテンションが爆上がりしてない?
相手の動きに内心で驚きながら、俺はカイザルと共にいわくつきの奴隷が待つ区画に入っていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます