第55話・一章のエピローグ、ほんとバルクさんはポンコツッスで損得主義として振る舞っているけど、自分の優しさに気づいているんスかね?
〈アクア視点〉
やっと幸せそうに寝ているッスね。
ドンガスさんや護衛さんたちに外の警備を任せた後、ウチとディアはバルクをベッドに移動させた。
そして部屋に戻ってきたルイスさんからある言葉を聞く。
「宿泊の許可は得たので明日までこの部屋は使えますよ」
「それはよかったッス」
バルクが寝ている中で退去させられていたらきつかったッスね。
そう思いながらウチはベッドで寝ているバルクの頭を撫でつつ、しれっと隣に座っているディアに声をかけられた。
「なんというか本当に幸せに寝ておるの」
「自分の死を覆せたんスから当たり前ッスよ」
「じゃな! っと、ワシらも少し静かにした方が良さそうじゃな」
「ではお二人も休憩しますか?」
「ッス!」「じゃ!」
このままバルクの頭を撫でるのもいいけど今はウチも休憩したい。
なのでバルクが寝ているベッドから離れて、ウチとディアはソファに座りルイスさんに入れてもらった紅茶を飲む。
「やっぱりルイスさんの紅茶は美味しいのじゃ」
「フフッ、お褒めに預かり光栄です」
うーん、確かにルイスさんの紅茶は美味しい。
でもなぜかルイスさん本人は少し悲しげな表情を浮かべているような?
どこか気になるので、少しカマをかけてみるのが良さそうッスね。
「そういえばルイスさんはバルクが言っている奴隷を雇う話はどう考えているんスか?」
「いきなりですね……」
「あ、それはワシも気になるのじゃ」
「ええ!?」
上手くディアを乗せれたッス。
このまま2人でゴリ押すのが良さそうなので、ウチはニンマリとした表情を意識しながら続きを話す。
「ウチらが話している時、ルイスさんはどこか悲しそうにしていたッスよね」
「それは……。使用人の私が話してもいいのでしょうか?」
「そうなると今は平民のワシとかどうなんじゃ?」
「あー、確かに」
ちなみにウチも聖女だけど生まれは平民。
だから立場なんてあまり気にしてほしくはないんだけど、ルイスさんは色々気にされそうッスね。
「てなわけでルイスさんの暴露タイムスタート!!」
「ええ!? も、もう、わかりましたよ!」
「意外と乗ってくれるんじゃな!」
いつもはクールっぽいルイスさんがいきなり振り切った気がする。
まあでもコチラの方が面白いので、ウチは紅茶を飲みながらルイスさんを1人用のソファに座らせる。
「それでルイスさんはバルクの作戦をどう思うんスか?」
「うーん、流れ的にアリだと思いますが私がいる意味がなくなりそうで……」
「と、いうと?」
「私はバルク様の専属使用人ですが、それだけ奴隷を雇えば他の方でも良さそうなんですよね」
あー、それで不安になっていたんスね。
ルイスさんの気持ちが理解できたから、ウチは紅茶のカップを置きながら苦笑いを浮かべる。
「確かにバルクは奴隷を雇うと言ったッスけど、ルイスさんを
「で、でも……」
「それにバルクの秘密を知っている時点でルイスさんは重要人物ッス」
「あー、それはそうかもしれないです」
少し落ち着いて欲しいっスね。
今のところバルクの秘密を知っているのウチ・ディア・ルイスさんの3人。
これ以上は広げると何処から漏れるかわからないから、バルクもあまりやらないはず。
「少なくともワシなら自分の秘密を知っているやつを外さないのじゃ」
「それは平民視点ですか?」
「いや、元クリムゾン侯爵家の令嬢視点じゃよ」
「……なるほど」
ディアは元貴族だからソッチの視点もある。
なので今の話的に居てくれるとありがたい存在ッスね。
ウチはディアの話を聞ききながら、今の状況に必要な言葉を並べていく。
「少なくともルイスさんはバルクから大切にされているッスよ」
「え、あ、はい!」
「それにお主は隠れて武術訓練をしておるじゃろ」
「ええ!? バレていたのですか?」
「「うん!」」
ルイスさんの体つきが他のメイドさんよりもしっかりしている。
というかウチが出会った時よりもガッチリとしており、おそらくバルクも気づいているから指摘はしていんスよね。
まあでも、指摘されなかったからルイスさん自身ははバレてないと思っていたっぽい。
「そ、そんな……。じゃあ私が隠れて訓練をしなくてもよかったのでは?」
「ッスね」
「あはは。今度ドンガス様にお願いして堂々と騎士団の訓練に混ぜてもらいます」
「それがいいと思うのじゃ」
ルイスさんの瞳に色がなくなったような?
半笑いになっているルイスさんが気の毒に見えるので、ウチは一つ咳き込み話を戻していく。
「それで本題のバルクが奴隷を雇う点はどうなんスか?」
「うーん、私からすれば使える人員が増えるのはありがたいですが……」
「問題は予算をどうするかじゃな」
「アレクセイ様達が援助してくれるならありがたいのですが、少し難しそうです」
確かに
大会の優勝賞金があるとはいえ、大勢の奴隷を雇い教育させるには全く足りない。
そこでアレクセイ様達の援助が欲しいところではあるッスね。
「その辺は上手く話せるといいのじゃが」
「最悪はウチの立場を使うのはアリッスか?」
「「それはやめとけ!?」」
「ええ!?」
ウチはいちおう聖女ッスよ。
なのに2人は雑に扱われて少し悲しく……うん、いつもの事だから慣れたッスね。
慣れは怖いと思いながら、ウチはディアとルイスさんに突っ込みを入れていくのだった。
ーーー
《作者より》
・第55話(この話)で第1章が終了なので、第56話からは第2章に突入します。
ここまで読んでいただけた読者の皆様、本当にありがとうございます!(誤字脱字報告を送ってくださった方々、すごく助かりました!)
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よろしくお願いします!
〈次の更新〉
・日曜日はお休みをいただき、6月17日の月曜日から第2章を投稿したいと思ってます。(時間は18時すぎは固定でたまにランダムで投げます)
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