第54話・優秀な回復魔法使いのお陰で大体の傷は治りましたが、それはそれとしてアクアとディアの目が怖くない?
父上と母上は国王様に用があるらしく、特別室から出て行った。
というか、ムーンレイがめっちゃいい笑みでアレクセイを引っ張って行ったので。
「アレクセイ様は不憫じゃな……」
「あ、ああ。でだ、なんで俺はお前らに両腕をガッツリ掴まれているんだ?」
「さっきみたいに逃したくないからッスよ」
「さいですか」
護衛のドンガスさん達から生暖かい目で見られているんだけど?
微妙なむず痒さを感じていると、ニッコリと笑ったアクアが嬉しそうに口を開く。
「バルクが優勝したのは嬉しいッスけどこの後はどうするんスか?」
「どうするってドユコト?」
「バルクがアルスに勝ったことッスね」
「あ、ソユコトか」
原作のストーリーをぶっ壊した。
そうなると俺が知らないバルクの物語が始まりそうではあるが。
正直に言えば生き残るを中心に考えていたから、これ以降はどうしよう?
「バルクは何か考えておるかの?」
「うーん、ぶっちゃけ言えば何にも考えてない」
「やっぱり!? まあでも、生き残る為に必死だったから仕方ない面もあるッスね」
「まあな」
目的を達したと同時に逆にやることがなくなったのはきついな。
自分の中で戸惑っていると、ディアが何か思いついたのか嬉しそうに口を開く。
「じゃったらバルクが知っている情報を使って人助けをするのはどうかの?」
「人助けね……。俺が知っているのはあくまで情報で抜けている点もあるぞ」
「それじゃったらその時に修正すればいいのじゃ」
情報を元にはするけど実際はアドリブで合わせていく。
確かにその方法ならやっていけそうだが、問題はどうやってやっていくかだな。
自分が知っているゲーム情報を洗っていると、アクアが不服そうに頬を膨らませた。
「ディアの意見には反対しないッスけど、バルクの負担が大きくならないッスか?」
「あ、そういえばそうじゃな」
「まあ、俺が助けられる範囲が限れているのはきついな」
まず人手が足りない。
俺達3人+αがあっても使える人員が限られているのが……ん?
ああ、いい方法を思いついた!
「ドンガスさんはその辺の平民を一人前にするにはどれくらいかかりますか?」
「一人前がどの程度によりますが、半年から一年もあれば使えるくらいにはなりますぜ」
「なるほど、それなら」
「バルクは何か思いついたんスね」
ああ、めっちゃいい方法がな。
思いつく中で一番いい方向にが思いついたので、その内容を周りにいる人達に伝えていく。
「人員なら奴隷を雇えばいい」
「ああ、その手があったのじゃ!」
「へ? つまりドユコトッスか?」
「私もバルク様のお考えをお聞きしたいです」
「わかった」
ディアは理解している感じだが、アクアやルイスには伝わってないみたいだな。
なので俺はどう説明するか少し悩んだ後、自分なりに伝わりやすい言葉を使っていく。
「まず奴隷には借金奴隷と犯罪奴隷がメインで、今回は前者の借金奴隷と闘技場にいる戦士奴隷を雇いたいんだよ」
「バルク様の言い分はわかるのですが奴隷を
「あ、そこはウチも気になったッス」
確かに奴隷を買ってこき使うのはあるが。
それだと効率が悪いと思うので、ここは
その趣旨をどう伝えるか悩んでいると、ディアが代わりに話し始めた。
「バルクは損得主義の考えがあるから、働いてくれた分だけ相手に報酬を渡したいのよ」
「なるほど……。それでバルク様は奴隷を
「そうそう。まあ、一番欲しいのは戦闘奴隷だけどな」
「まあ、そうじゃろうな」
ただ戦闘奴隷は借金奴隷よりも高額なので大勢を雇いにくい。
そこの問題があるのと、そもそも俺の案が父上に許可されるか。
「やることはたくさんあるが付き合ってくれるか?」
「もちろん! ウチはいつまでもバルクの相棒ッスよ」
「ワシも助けられた分はお返ししたいのじゃよ!」
「自分やルイスも同じ気持ちですぞ!」
「はい! って、ドンガス様、私のセリフを取らないでください!!」
しれっとセリフを取られたルイスがプンプンと怒る中。
俺は自分が手に入れた楽しい状況を見て、目から涙が流れてしまう。
すると俺の腕を掴んでいたアクアが俺の頭を抱き寄せた。
「バルク、ここまでお疲れ様ッスよ」
「アクア……。いや、ここからがスタートだろ」
「そうッスけど今日は休むッス」
「そうか、なら後は頼む」
今日の出来事と今までのプレッシャーがなくなり体の力が抜ける。
いきなり来た眠気を感じながら、俺はアクアの膝枕で眠っていくのだった。
「バルクおやすみッス」
「おやすみなさいなのじゃ」
「お、おう」
本当によかった。
俺が目を閉じる中で頬に柔らかい感触が気持ちよく、自分の中で満足しながらスヤスヤと眠っていくのだった。
〈余談〉
俺が考えた奴隷を雇うお話を父上と母上に話した結果、許可をもらうどころか金銭面や教育の補助をしてもらえることになりました。
なので俺は許可を出してくれた2人に感謝しながら、下準備を整えていくのだった。
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