第53話・決着?と共になんとかなった事となってない事の差が激しいな……。
ここのぶつかり合いでガエンの時みたいに〈反射〉を使うのが安牌なのだけど、それでも正々堂々の対決を選んでしまった。
その結果、フィールドの中央で大爆発が起きて俺はリング内を勢いよく転がっていく。
「ぐううっ!」
さ、流石に……。
ポッキリ折れた試合用の片手剣を握りしめながら、場外負けしないようになんとか踏ん張る。
そしてフィールドの端でギリギリ持ち堪えられたので、鈍い痛みを感じながら体を起こす。
「ど、どうなった?」
これで勝負が決められたのか?
ガクガク震える膝に喝を入れながら立ち上がり、砂埃が舞うフィールド中央に視線を向ける。
そして少しして砂埃が晴れると、そこには場外で倒れているアルスの姿があった。
「……やった」
これで破滅フラグをへし折った。
俺は
コチラの姿に観客達は固まっていたが、状況を確認した審判さんが勢いよく手を上げた。
「勝負あり! 優勝者はバルク・カーマセル!!」
静まり返る闘技場内。
俺が優勝すると思ってなかったのか、観客達は互いに顔を見合わせていた。
「お、おい、あの無能貴族が優勝したぞ」
「き、きっと今年の選手が不作なだけよ」
「そうに決まっている!」
あ、コレ、ダメな方向じゃね?
俺だけならともかく、本戦に出場した選手達への誹謗中傷が始まりそうな雰囲気。
そして話が大きくなりそうな時、とんでもなく響く声が会場内にビリビリと伝わった。
「静まれ!!」
「「「!?!?」」」
この重厚のある声は。
ゲームでも聞き覚えのある一言に俺は驚いていると、金髪碧眼で煌びやかな服装をした30代後半くらいの男性、ルードリヒ・ロンネール国王。
堂々とした姿に硬直していると、ロンネール国王がジロリと周りを睨みつけながら口を開く。
「時間が出来たから来てみればお主らは現実を見れないのか?」
「「「ツッ!」」」
「それともバルクが不正をして勝ったように見えておるのかな?」
国の中でトップの権力を持つ国王様本人に責められる観客達。
彼らが互いに冷や汗を流している中、国王様が鋭い眼光をやめてコチラに近づいてきた。
「久しぶりだなバルク」
「は、はい」
「そんなに緊張しなくてもいい」
いや緊張するんですか?
確かに
なので苦笑いを浮かべながら膝を着こうとしたが、ルードリヒ様が右手を前に出して止めた。
「甥に膝をつかせるわけにはいかない」
「あ、はい。ありがとうございます」
あ、いちおうそうなるか。
俺も王族の血が流れているの……ん?そうなると原作のバルクってなんであんな扱いをされていたんだ?
色んな意味で驚いていると、ルードリヒ様が俺から視線を外した後に大会関係者がいる方に檄を飛ばす。
「貴様ら、黙ってないで優勝者達を表彰しろ!」
「「「は、はい!!」」」
国王様の一言で膠着していた大会関係者が動き始める。
そして俺は目が点になっていると、国王様がこちらの肩に手を置いた。
「姉上には上手く言って欲しい」
「わ、わかりました」
あ、国王様でも母上には強く出れないんだな。
あのキャラが濃い母上に父上が振り回されていたのは見覚えがあるので、俺はコクコクと頷くのだった。
そして大会関係者が動き始め、1時間後に俺達は表彰されるのだった。
ーーー
優勝商品の金の盾&金貨100枚を手にした後。
回復魔法&回復ポーションのお陰で傷がほとんど回復したので、アクア達が待つ特別室に移動してきたのだが。
「バルク!!」
「うおっ!? どうしたアクア!」
「優勝おめでとうッス!」
待て待て待て!?
部屋の中に入った瞬間に飛び込んでくるアクア。
その動きに対応してしまい、俺は思わずサイドステップを踏んで回避する。
その結果、アクアは地面を転がり壁に衝突した。
「ええ……。そこは受け止めぬのかの?」
「いやだってあの勢いは避けたくならないか?」
「それはそうじゃが」
「だろ。あ、盾とお金を預かっていてくれ」
「了解したのじゃ」
どことなくいたたまれない雰囲気。
俺は手に持っている盾とお金が入った皮袋をディアに渡した後、不貞腐れているアクアの方に近づく。
「うぅ、バルクはウチよりも商品の方が大事なんスね……」
「いやいや、お前は大事だけどいきなり飛び込むのはやめて欲しいだけだ」
「え、ほんとッスか?」
「おう! って、また飛び込む姿勢をとるな!?」
「いやッス!」
馬鹿野郎!?
俺のお腹に突き刺さるアクアの頭にゴフッと口から空気が出てしまう。
うん、嬉しいのはわかるけど痛い……。
「あらあら、初々しいわねー」
「そ、そうだな」
あっちはあっちでラブラブしてない?
いつもの如く父上が母上に振り回されている図があるが、俺はさっき国王様に言われた言葉を2人にも伝える。
「あ、そだ。母上達に国王様からの言葉がありますよ」
「へぇ、ルードリヒはなんて言っていたの?」
「なんか『母上には上手く言って欲しい』と言ってました」
「それ、言葉のまま伝えるんじゃない気が……」
あ、確かにそうだな。
父上の突っ込みに思わず『あっ』となるが、母上はニッコリと笑いながら頷く。
その姿は息子である俺にも美しく見えるが、どこか怖く感じるのは気のせいだろうか?
「なるほど……。まあでも、今回は見逃してあげるわ」
「あ、はい。よかったです」
「ほんとよかった」
なんか父上が胃を抑えてない?
前回の件があるので母上はやばいと思いつつ、俺は強く抱きついてくるアクアの頭を撫で始めるのだった。
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