第50話・変人が相手だから調子が狂うな!。〈作者・バルクも大概変人だと思うのは私だけだろうか?〉

〈バルク視点・時が戻る〉


 VSガエン・クリムゾン。

 戦闘のタイプ的に相性は悪くないのだが、違う意味で相性が悪いのは気のせいだろうか?

 

「ハハッ! 乱撃の舞!」

「そんな技はあったっけ?」

「ノンノン! オレが作った技だぞ!」

「あ、そう(汗)」

  

 た、確かに武術の腕は悪くはないのだが。

 いちいち無駄にカッコつけているせいで、台無しになっている気がする。

 なので相手の高速斬撃を回避しながら、俺は風魔法を唱えていく。


「ウィンドボルト&ウィンドソード!」

「ツッ!? ほう、悪くない魔法だな!」

「なんでソムリエ気分なんだよ……」

「さあな?」


 うわぁ、相手は変人なのに一筋縄ではいかなさそうだな。

 コチラが至近距離で放った風魔法は上手く躱され、相手はバッとバックステップを踏んだ。

 

「しっかし理由は知っているがオレにはお前がには見えないが?」

「さっきまでボロクソ言っていたくせに手のひら返しか?」

「手のひら返しではあるが、を経験したからでもある」

「ほう」


 コイツ、バカっぽいのに意外と周りが見えているのか?

 ガエンの分析力に驚いていると、向こうはニヤッと笑いながら言葉を続けた。

 というか、試合中に会話フェイズに入ってない?


「それにオレは変人だがクズになったつもりはないぞ」

「ツッ! なら、ディアを的にしていたのは?」

「それは……。アイツに恨まれても仕方ない事だ」


 さっきまで笑みを浮かべていたやつが、なんで悔しがっているんだ?

 この引っかかりが気になるが、今は試合中なので気持ちを切り替えていく。


「まあでも、今は試合中だしコッチに集中するぞ!」

「もちろん! オレも負けるつもりはないぞ!」


 思った以上にプラスの雰囲気になっているんだけど?

 最初はクズっぽい奴だったが、それが演技のように見えてしまい。

 俺も初対面で判断するのはやめようと思うが、それはそれとして強いなこいつ。


「ファイアボルトと紅蓮の斬撃!!」

「ウィンドバレット&ストームセイバー!!」

「「ツッ!?」」


 ぶつかり合う炎と風の弾丸。

 相性的には向こうの方が有利だが、ゲーム知識がある俺はそこを上手く使い相手に接近。

 そのまま互いに魔力を纏わせた剣で打ち合い、ガンッと鈍い音が周りに響いた。


「有利属性なのに押し切れないとはな!」

「悪いがなんの対策も無しに炎に突っ込まないだろ!」

「それはそう! ってか、本当にお前は何者だ?」

「さあな? でもまあ、今を楽しもうぜ!」

「ああ! そうさせてもらう」

 

 ガンガンと剣と剣がぶつかる中。

 致命傷は受けてないが、互いに軽い傷が増え始め息も少しずつ荒くなってくる。

 なので俺はいったん仕切り直す為に、強化魔法の出力を上げながらバックスタッフを踏む。


「少しキツイな」

「ハハッ、それはオレのセリフなんだが?」

「それなら多少は追い込めてそうだな」


 というか、今の状況的にほぼ互角な感じだな。

 そうなるとどこで切り札を使うかで、だいぶ変わりそうか。

 自分の中で色々と考えつつ、息を整えたタイミングで真顔に戻ったガエンがダッシュで突っ込んできた。


「ハァァ!!」

「チッ! ストライクアサルト!!」

「ツッ!? その技は!?」


 悪いがコッチにはゲームの知識があるんでな!!

 ストライクアサルトは高速で相手に突っ込み、そのまま複数回斬りつける技で、ゲームではストーリー終盤に入った頃に使える技。

 ここ数日前に使えるようになったので試してみたが、ものの見事にガエンに直撃した。


「これでどうだ!!」

「ぐうぅ!?」


 コチラの連続斬撃に対し、ガエンは防御姿勢をとりなんとか持ち堪えていた。

 ただ明らかに大ダメージを受けたのか、立ち上がるのがギリギリっぽい。


「これで決着だろ」

「ハッ、まだオレは降参してないぞ!」

「そうかよ!」


 なら悪いがトドメを刺させてもらう。

 そう思いながら風魔法を唱えようとした時、ガエンがいきなり灼熱の炎を纏い始めた。


「はっ! 奥の手を使うのはきついが、ここでお前に負けるつまりはねーよ!」

「……なら、その気持ちに答えてやるよ!」


 風属性強化ストームブースト

 お前がフルパワーの属性強化魔法を使うならコッチも乗ってやるよ。

 正直バカではあるが、ここで答えなければ男じゃないよな!


「さあいくぞ! バルク・カーマセル!!」

「こい! ガエン・クリムゾン!!」

「ハアァ!!」「ハアァ!!」


 強烈な風を体に纏う俺と高熱の炎を纏うガエン。

 互いの意地がぶつかり合う中、相手の一撃に合わせてあの技を使う。


「コイツで終わりだ! 紅蓮のやいば!!」

「チッ! なら、クロス・カウンター!!」

「なっ!? オレの攻撃が弾かれただと!」


 悪いが使わせてもらう。

 最後の最後で発動した〈反射〉の一撃で相手が体勢を大きく崩した。

 なので俺は魔力を籠めた拳でガエンの土手っ腹に一撃をくらわせる。


「ストーム・ブロー!!」

「ぐううっ!?」


 この一撃を受けたガエンは勢いよく後ろに飛んでいき、闘技場の壁にぶつかった。

 そしてバタリと相手が倒れる中、俺は天高く拳を突き上げる。


「俺の勝ちだ!」


 この一言を言った後。

 審判さんの発言で俺の勝ちが決まり、場外前したガエンは係員の人に運ばれていくのだった。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る