第47話・やってきました魔法武術大会……うん、展開的にアッサリすぎない?
どこぞの
12月15日、魔法闘技祭り・15歳以下の貴族部門。
ついに来ました原作主人公との対決。
俺は予選を通過して駒を進めたけど、やはり待合室の空気がだいぶ悪い。
今も予選を突破した奴らから、あまり良くない視線が飛んできた。
「あいつ無能貴族なのにあそこまで強かったのかよ!?」
「いやズルしているんだろ」
「どうせ裏で買収でもして勝ちを譲ってもらっているのよ」
好き勝手言われているなー。
貴族街にあるレンガ作りの闘技場内で叫ぶ一部の奴ら。
彼ら彼女達の服装は整っており、
なので俺は思わずため息を吐きながら、予選を突破した七人の名前を確認……うん、
「おい無能……いや、バルク!」
「ん? ああ、何か用ですか契約者様?」
「チッ、その言い方はやめて欲しいんだけどな」
「いやいや、教会でも特別待遇を受けている貴方様にはあまり強く物事を言えないですからね」
「こ、コイツ。まあ、いい少し付き合え」
闘技場内にある待合室。
前と同じくアルスに煽りを入れていると、いきなり肩を掴まれて人気のないところに連れてかれる。
うん、煽りすぎたかな?
「場外乱闘をする気ですか?」
「気持ち的にはやりたいが今回はお前にお礼を言いにきた」
「へ? 別に契約者様にお礼を言われる事はしてないですよ」
「そうやって悪役ズラをして誤魔化す気か?」
おいおい、なんか勘違いされてない。
俺は別に何もしてないはずなのに、向こうは勘違いしているのかアルスは嫌そうな顔をしながらも深く頭を下げてきた。
「ハッキリ言うがオレはお前が嫌いだが、それはそれとしてメリア達を助けてくれたのは感謝している」
「メリア? ああ、武術の聖女様の契約者ですか?」
「そうそう! メリアは腹違いの兄妹でな、昔から仲がよかったんだよ」
なるほど、一ヶ月前の
それに関しては偶然な気もするが、面白そうなので適当に話を流していく。
「礼は受け取るけど今の俺達は敵同士だし、こんなところで話していたら俺が八百長を持ちかけているみたいだろ」
「あ、それは……」
「確かにお前の気持ちは理解できるが、タイミングを考えて欲しい」
「わ、悪い。気が回ってなかった」
マジで
ただ物語の主人公としては正統派に近いと思うので、俺は内心で呆れながら言葉を続ける。
「まあいい。とりあえず俺と戦うまで負けるなよ」
「ハハッ! お前が言った言葉、そのまま返すぜ!」
勢いよく頭を上げたアルスはいい意味でクソガキ感がでていた。
なので俺は後ろに振り向いた後、右手をヒラヒラと振りながらアルスから離れていく。
「こりゃ油断できないな」
個人的に油断してくれてたら助かったんだけどな。
それなら隙をついて攻められたのに、今のやり取りでそれが難しく感じる。
まあでも、物語の主人公として成長していると考えれば理解は出来るが……。
「悪いが俺は死にたくないんだよ」
ここでアイツに負ければ死の未来に流れるかもしれない。
その恐怖で体が震えながら、俺は控え室に戻るのだった。
ーー
魔法闘技祭の本戦・1回戦の第1試合。
早速俺の出番が来たので闘技場のフィールドに上がるが、客席から鋭い視線が飛んできた。
「おいおい、無能貴族が来たぞ!」
「ほんとよく予選を突破できたな」
「今年は雑魚しかいなかったんじゃない?」
ボロカス言われているな。
まあでも、バルクがやらかした事を思い出しながら苦笑いを浮かべていると。
対戦相手である茶髪モブ顔の相手がニタニタと笑いながら、片手剣の切先を向けてきた。
「お前みたいな不正野郎はこのモーブ・ワキヤークが成敗してやる!」
「ブフォw。特徴のない見た目に名前が
「俺はモーブで
もしかしてクリティカルヒットをしたか?
さっきまで余裕そうだったモブ男が、怒り始めたのかブンブンと片手剣を振り回す。
その姿に観客達は半ば笑いながらモブに声援を飛ばしていた。
「おいモブ、あんなやつ叩き潰せ!」
「てか、雑魚VS脇役って面白くない試合だな」
「どう見ても塩試合じゃね」
カラカラと笑う観客達。
四角いリングの上に立つ俺達に対し、ボロクソ言っている観客。
正直コイツらに言われる筋合いはないので、俺は少しイラつきながら試合用の片手剣を強く握る。
「御託はいいから始めよう」
「はっ、そんなに死にたいのか?」
「さあな? まあでも、少なくともお前に負けるつもりはない」
「なんだと!?」
いやだって
ここで負けていたら主人公には勝てないので、俺は気持ちを整えながら視線を審判の方に向ける。
そして、互いの準備が整ったので審判が勢いよく叫んだ。
「1回戦・第1試合、バルク・カーマセルVSモーブ・ワキヤークの試合開始!!」
開始の合図。
その言葉を聞いたモブは勢いよく突っ込んできた。
「くはだりやが、ごふっ!?!?」
「「「へ?」」」
とりあえず強化魔法を使いつつ接近して横薙ぎの一撃。 向こうは油断していたのか、土手っ腹にその一撃を受けて場外に吹き飛んでいった。
「じょ、場外! 勝者、バルク・カーマセル!!」
「ありがとうございました」
普通に勝てました。
というか、あまりにもアッサリしすぎて何も言えないんだけど。
そう思いながら俺は観客が黙っている中、フィールドから離れていくのだった。
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