第46話・バルクが不憫なのは父親であるアレクセイの血を引いているからかもしれない
〈バルク視点〉
雲一つない夜空にキラキラと星が輝いている中。
王都直属の護衛騎士や宮廷魔術師、共に来ている父上から母上が国王様に直談判して用意してもらったのが6000人くらいと言っていた。
「ほんとムーンレイ様はすごいッスね」
「本人いわく、全く足りてないみたいだけどな」
「ま、まあ、ムーンレイ様は元王女様じゃから足りないと感じているっぽいのかの?」
「多分な……。まあでも、シレッと参加している俺達もまあまあおかしいけどな」
こんだけ人数がいれば何とかなりそうだが。
ゲームのモニターには映らないレベルの人数を……ん? よくよく考えれば彼らは
「ウチらの出番がなさそうなのは気のせいかの?」
「さ、さあ? でもまあ、それが一番いいんだけどな」
「確かにそうじゃな」
今日は徹夜の可能性が高いのであまり体力を使いたくない。
内心でそう思いながら、指揮官の方が現れたので俺達は改めて準備を進めていくのだった。
ーー
城砦の跡地から多くのモンスターが現れる中。
外に現れたモンスターに向かって宮廷魔術師達が、各々の魔法を唱えていく。
「「「フレイムバースト!」」」
「「「ストームクロス!」」」
「「「ぎゅえぇ!?!?」」」
「初手から上級魔法なんじゃな」
「数を減らすならコレが一番だから」
次々と大技を放って城西の跡地から現れる頭に大きなツノが生えているオーガ達を蹴散らしていく。
ただ向こうもただ黙っているわけではなく、上位者のオーガリーダーが魔法に耐えながら突っ込んできた。
「大楯部隊は前へ! お前ら気合いを見せろよ!」
「「「ハッ!!」」」
「水・氷魔術師は相手の動きを鈍らせなさい!」
「「「ハッ!!」」」
なんかめっちゃ士気が高くない?
コチラに襲いかかってくるオーガーリーダーに対し、大楯部隊が白銀に煌めく盾を並べ、魔術師達は水魔法と氷魔法で確実に動きをにぶらせた。
その動きに一切の無駄がなく、先鋭部隊の名が負けてないとシミジミと感じる。
「このまま……おいおい、まだ序盤なのに出てくるのかよ!?」
「あ、あの、デカくて黒いオーガはなんスか!?」
「アイツは封印されていたボスだよ」
「ええ!? って、コッチの攻撃があまり効いてないのじゃ!?!
効いてないんじゃなくて、自己再生が早いんだよ。
城砦の跡地の出入り口から出てきたのは、4メートル程の大きさに筋骨隆々の体、2本のツノが生えている厳ついモンスター。
封印ボスが出てくるならもっと後かと思っていたけど、序盤から出てくるとは。
「俺達の出番かも……え?」
「あ、ムーンレイ様がアレクセイ様を連れて突っ込んだッスね」
「何をやっているんだあの2人は!?」
「思った以上に自由じゃな……」
なんで守られる側の2人が意気揚々と突っ込むんだよ。
内心でツッコミを入れていると、二刀流の母上が父上の補助魔法を受けて嵐のような斬撃を放っていく。
その姿はかなり美しいが、援護で雷魔法を放っている父上の表情が死んでそうなんだが?
「と、とりあえず周りがアタフタしているんだけどコレでいいのか?」
「ウチに聞かれてもわからないッスよ」
「そりゃそうじゃ。って、封印ボスが死んだのじゃよ」
「「……え?」」
マジでドユコト!?
2次元の物語的にピンチになって、俺達の出番がくると思ったが。
実際は父上と母上の2人が前作主人公レベルの働きをして、封印ボスを討伐。
残りの雑魚達は先鋭部隊である近衛騎士と宮廷魔術師達が圧倒していく。
「コレ俺達いらないよな?」
「ッスよねー」「じゃな」
なんか2人の目が死んでない?
せっかくの強敵相手に週間ジャン◯みたいなノリで戦いたかったのに!
色々やるせない気持ちになりながら、俺達3人はキビキビと動く周りを見ながら棒立ちをしていたのだった。
ーー
〈アレクセイ視点〉
物事を解決&
後の顛末は国の役人に任せ、俺達は何もせずにカーマセル伯爵家の屋敷に戻ってきた。
「フフッ、久しぶりに暴れられたわね」
「まあでも、倒せてよかった」
「そうねー」
やはり我が妻は強いな。
当時の戦闘学園でトップクラスの戦闘力を誇っており、実戦訓練でも多くの魔物を屠っていた。
その中で魔法が得意だった私は彼女の援護をメインに動いていたな……。
「しかしまあ、バルク達の成果を見れなかったのは少し残念だったわ」
「アイツらが戦う前に君が終わらせたからだろ」
「それはそうだけど、惜しい事をしたわね」
「私もそう思うよ」
ほんとムーンレイは昔から変わらないな。
色々強引だけど最終的にはプラスの結果で終わるのは、バルクにも引き継がれてそうだな。
ただ振り回されている私は胃が痛くなるが……。
「さてと、本題に入るけどあのバカ達はどうなるの?」
「表向きは聖女だから処罰は難しいが、何かしらはあると思うぞ」
「ほうほう、その辺はアナタの領分よね」
「そうだな……」
また仕事が増えるな。
いつもの如く胃がキリキリと痛くなる中、ムーンレイが後ろから優しく抱きついてきた。
「フフッ、今日は疲れたしベッドに行かない?」
「ん? ああ、そうしたいな」
この時、私は抜けていた。
夜の本番はこれからだったことを……。
次の日に散々絞り取られた私は、フラフラになりながら業務をしていく羽目になるのだった。
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