第44話・あのー、父上以上にキャラが濃くないですか母上?
ゲームでは語られなかった驚きの真実を知った後。
父上が執事長に頼んで
ゲームでも見た事があるビジュアルなような?
「まずはバルクの母でアレクセイの妻、ムーンレイです」
「は、はい、ウチはアクア・ハルカスッス」
「いつもお世話になっているディアなのじゃ」
「2人ともかわい子ちゃんね。まあでも、今は真面目な話をした方がいいわよね」
「そうしてくれるとありがたい」
アレクセイの隣にわざわざ椅子を用意して座る母上。
表向きは落ち着いているが、ゲームでのムーンレイを知っているのでダラダラと冷や汗を流す。
「わかったわ。それでわたしを呼んだ理由は何かしら?」
「端的に言えば武術の聖女様が国に決められている立ち入り禁止のダンジョンに無許可で突入した」
「あらあら、それはアグレッシブね」
「……確かにな」
なんだその間は。
父上が心底疲れてそうな表情になっており、明るい笑みを浮かべる母上との対比になっている。
その姿を見て俺は微妙な苦笑いをしていると、アクアが不思議そうに目をぱちくりとさせた。
「ムーンレイ様が元王女様なのはわかるッスが、他にも何かあるんスか?」
「うーん、いちおう国家資格で剣豪の称号を持っているわよ」
「明らかに強そうな称号ッスね」
「強そうじゃない、強いんじゃよ」
ゲーム内での剣豪はストーリーのラスボスを倒した後、追加コンテンツのイベントで手に入る称号。
つまり母上はラスボスを単騎で倒せるレベルの戦闘力が……。
「フフッ、よかったら稽古をつけてあげようかしら?」
「そ、その時が来た時によろしくッス」
「わかったわ。あ、ちなみにアレクセイは魔豪の称号持ちよ」
「……なるほど、それでバルクは剣も魔法も上手いんじゃな」
「へぇ、面白い事を聞いたわ」
わあぁ、やばい気がする。
獰猛そうな瞳でコチラを見てくる母上の視線を受けて冷や汗を流しつつ、軌道修正をするために若干震えながら口を開く。
「あ、あの、本題に戻りますが、武術の聖女様はどうされますか?」
「今のわたしからすれば放置したいけどアレクセイからすれば難しいのよね」
「うーん、私も気持ちは放置したいが貴族バランスを考えれば動きたいな」
「だったらやる事は一つね!」
あ、このパターンは。
今までの勘的にマズイのはわかっていたが、ムーンレイの性格を知っている俺は大体の予想をしてしまう。
出来ればハズレてほしいが、その願いは叶う事がなかった……。
「で、出来れば穏便な手をお願いしたいが?」
「フフッ、わたしはタダの
「それ絶対にいつもの流れじゃないか!?」
あれー、父上がキャラ崩壊してない?
いつもの仏頂面がどこかにいくレベルでキャラ崩壊しているアレクセイと、イタズラを思い浮かべたような表情をしているムーンレイ。
2人の姿を見ながら、俺は冷静にテーブルに置かれている紅茶を飲む。
「お、お疲れ様です父上」
「ハハッ、慣れているから大丈夫だ」
「多分ッスけどパートナーに振り回されるのは血筋かもッスね」
「ワシも当事者だから突っ込みづらいが……」
いや多分、俺もお前らをまあまあ振り回しているぞ。
雰囲気的に母上に散々振り回されてそうな父上は、空気感を変えるために一つ咳き込んだ。
そして今更だがいつもの仏頂面になり、息を整えながら話し始める。
「とりあえず上に報告する方が良さそうだな」
「そうだけど私が王城に突撃してルードリヒを呼び出す方が早くない?」
「確かに緊急事態ではあるがアイツはいちおう国王だぞ」
「私からすればタダの弟よ」
本当にお疲れ様です父上。
ゲームでは国王様の姿を知っているのだが、30代なのにシワが多かったのは母上からのストレスでは?
全く違う内容を思い浮かべていると、ニッコリとした笑みを浮かべたムーンレイがパンッと拳を付き合わせた。
「じゃあわたしとアレクセイは王城に凸るからバルク達は戦闘準備を整えてね」
「わ、わかりました」「は、はいっす!」「り、了解なのじゃ」
「フフッ、いい子たちね」
「……胃が痛い」
父上ーー。
後の事を考えているのかアレクセイが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてるが、獰猛な笑みを浮かべたムーンレイは一言。
「
「ハッ! すくにでも」
「よろしくね。あ、アナタとわたしは馬車にいくわよ」
「わかったから少し落ち着かせてくれ!?」
父上お疲れ様です(思い慣れてきた)。
母上は父上の腕をガッツリ掴んてパワフルそうに引っ張っていく。
その姿に執務室に残った俺達3人&今まで無言だったルイスが改めて口を開く。
「ムーンレイ様は元王女様なんスよね」
「い、いちおうそうですが……。ある意味では王族らしくない方ですよ」
「なんというかパワフルじゃったな」
「あ、ああ」
マジでなんていえばいいんだよ。
まあでも強引なやり方はともかく、問題解決は早く終わらせたほうがいい。
なので意外と合理的なやり方をしている感じはするが、それはそれとして母上が職権濫用してない?
「と、とりあえずおふたりは置いといて、バルク様達も準備しますか?」
「そうだな」「ッス!」「のじゃ!」
執務室で固まっていても仕方ないな。
さっきまで起きていた惨劇(?)から目を逸らすように、俺達は準備を整える為に執務室から出ていくのだった。
〈おしらせ〉
・ストックがほとんど尽きたので明日からは18時過ぎのみの1日1話投稿になります。(もしかしてズレる事があるかもです)
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