第43話・父上よ、もはやキャラ崩壊しかけてない?
カーマセル伯爵家の屋敷にある父上の執務室。
そこで俺はアクア&ディアを連れ、休憩中だったアレクセイに冒険者ギルドでの話をした。
「冒険者ギルドで武術の聖女様が暴走した件が伝わっているとは……」
「ええ、しかもギルド職員や一部の冒険者はパニックになりかけてましたね」
「立ち入り禁止とはいえ教会の重要人物がダンジョンで死ねば大問題になるからな」
「えっと? だとするとウチが死んだ場合も問題になるッスか?」
「そりゃ大問題になるし、下手すれば
最近の父親は仏頂面ではあるが近づきやすい雰囲気になり、アクアやディア相手でも非公式の場では素を出している感じがする。
なのでどこか安心感を覚えつつも、本題である
「おぬしは自分の価値をわかっているのかの?」
「い、いやー、ウチは孤児院出の聖女っスよ」
「うーん、今はアクアの件はおいといて、本題の方に戻した方がよろしいと思います」
「そ、そうだな。でだ、バルクや密偵からの報告では問題が複数あって一つずつ照らし合わせるぞね
「はいなのじゃ!」
一気に話すよりも一つずつ解決。
コチラの方が俺もやりやすいので、話をまとめたアレクセイが仏頂面のまま低い声で喋っていく。
「まずは武術の聖女様が契約者やお付きを連れ、国が定めた立ち入り禁止のダンジョンに無許可で入った点だが」
「コッチはおそらく教会側は責任問題になりますよね」
「ああ、バルクがあげた点は間違ってないが、私は
「と、いうと? 当主様は何か気になるのかの?」
「ええ……。まあ、貴族関係だから私の方に負担がくるんだけどな」
あー、なんとなく察したような。
父上が椅子に深く座り込みながら、死んだ目でテーブルに置かれた紅茶を飲んだ。
その姿に前の世界で見たことがある、過労死寸前のサラリーマン姿が思い浮かぶのは気のせいだろうか?
自分の気を逸らす為に別の事を考えていると、貴族社会にウトいアクアが首をコテンと傾けた。
「もしかして派閥の問題ッスか?」
「そのもしかしてだ。この問題で責任を負うのは確実に教会関係者だが、私としては
「えっと? いまいち体感が掴みにくいッスね」
「流れ的に王国派や貴族派が調子にのりそうじゃな」
「ディア嬢の言う通りだ」
同じ派閥でも一枚岩じゃない。
特に下級貴族は成り上がるために、上の貴族を失脚させて後釜に座ろうとする家もある。
ゲームではアレクセイが有能だったお陰で助かっていたが、没落している貴族も普通に存在していたはずだよな。
「ほんと貴族社会はドロドロですね」
「私も胃がキリキリする。でだ、話を戻すが今回の問題が
「今回は
「あ、教会のトップクラスに権力がある
「ヤバいどころじゃない」
公爵家の出だけでもやばいのに追加で武術の聖女に選ばれている。
どう考えても爆弾なのにルーシィが脳筋バカなので、今回みたいな問題がどうしても起きてしまうが……。
「私もある程度は知っているが教会はマトモな指導者はいないのか?」
「ウチが知っている限りは金の亡者と八つ当たりばっかりッスよ」
「アクア嬢も大変だったんだな」
「いえいえ、今はカーマセル家にいるおかげで幸せッス!」
「それはよかった」
やっぱりアレクセイも変化しているな。
アクアの優しい発言を耳にした父上が、いつもの仏頂面なのだが少しだけ頬を緩ませた。
ゲームや昔では考えられない姿なので、さっきと同じく感動しながらも理性で話の本筋に戻す。
「話を戻しますが、
「そりゃ国のルールを破ったどころか燃やした感じだからな」
「確実にアウトッスよね」
「アウトどころか5年前に起きた
「わあぁ……。も、もう想像したくないッスね」
話的にアウトどころじゃないな。
このまま教会側が潰れると、色んな意味でマイナス点が多い。
それに父上が上げた
あんまり言いたくないが、ウチも関係者ではあるので少し言葉に詰まらせながら俺は口を開く。
「気が進みませんが教会側に
「私個人としては悪くないとは感じるが、バルクが上げる点だけだと助ける理由が薄い」
「ええ、なので他の手を打つんですよ」
「他の手……お前の狙いは
「え? ウチッスか?」
父上、気づきが早すぎない?
コチラが言いたい事を理解したっぽい父上は、頭の上に疑問符を浮かべるアクアとディアに向けて低めの声で説明をしていく。
「アクアじゃなくて他の聖女だよ」
「ああ、教会には
「え? アレクセイ様は国王陛下を呼び捨てにされるのかの?」
「……しまった」
あ、なんで父上は
ふと気になったので珍しくアタフタとしているアレクセイに、アクアが不思議そうに声を発した。
「もしやアレクセイ様は国王様と何か関係があるんスか?」
「それはだな。他ではあまり言ってほしくないが、私の妻が
「「……はいいぃ!?」」「え?」
ま、マジかよ!?
まさかのカーマセル家が没落しない別の理由が現れたとは。
ただ予想外すぎる父上の暴露に固まっていると、本人は苦笑いになりながら言葉を続ける。
「私の妻であるムーンレイはルードリヒの実姉で私とは同年代だけだったんだが……」
「明らかに何かあったんスね」
「ああ。第二王都にある戦闘学園の入学式で何故か
「めっちゃ端折ったのじゃ!?」
おいおい、とんでもない裏事情だな!?
突っ込みところが多すぎて、本題である
なので俺はゲームでは知らなかった内容に驚きつつ、なんとか話を戻そうと奮闘するのだった。
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