第39話、ウチがバルクと出会った時はー……って、なんか恥ずかしいしピンチッス!?

〈ディア視点〉


 これからの計画を話し合っている途中。

 ふと気になった事があったから、ワシは何か知ってそうな2人に質問をしてみる。


「そういえばなぜバルクはワシを救ってくれたんじゃろうな?」

「あー、それは……」

「私が覚えている限りは使えそうな奴を勧誘するかもしれない、とはお聞きしましたが」

「だとすると、最初からワシを勧誘する気になったのかな?」

「可能性はありそうッスけど、バルクさんは偶然と言っていたッスよ」


 へえ、そうなんだ?

 誰かを勧誘するのは確定っぽいけど、ワシを狙っていたかは微妙。

 多分じゃが、会えたらいいな程度かもしれない。


「今の話を聞いているとワシは運がよかったのじゃな」

「それを言い始めるとウチもッスよ」

「へぇ? アクアの方もバルクと何かあった感じかの?」

「あー、私もアクア様がどうバルク様と出会ったか気になります」

「むふふ、なら心して聞くッス!」


 なんで自信満々なんじゃ?

 高身長なワシよりもオッパイが大きなアクアが、自信満々に胸を張っている。

 その姿に嫉妬心が湧き上がるけど、今はコヤツの話を聞いた方が良さそうじゃな。


「ではよろしくお願いします」

「ッス! まずウチが初めてバルクとはあるダンジョンで出会ったッス」

「ほうほう、ちなみに出会い方はどんな感じかの?」

「よく聞いてくれたッス! ウチが……」

「確かゴブリンにボコられていたアクア様がバルク様に助けられたんですよね」


 ……ドユコト?

 さっきまで自信満々に言っていたアクアに、水を差すような感じで突っ込むルイスさん。

 そのやり取りを見ていたワシは、思わずフッと吹き出してしまう。


「聖女様がゴブリンにボコボコにされていたのかの(笑)」

「(笑)ってつけるなッス!」

「あ、ごめん。それでバルクに助けられた後は?」

「ちょっ、無理に誤魔化したッスね!?」

「おふたりとも落ち着いてください」


 アクアがプクゥと頬を膨らませながらバンバンとテーブルを叩いている。

 その姿にクククッと笑いが込み上げていると、アクアが鋭い目で睨みつけてきた。


「いやだってゴブリンに負ける聖女なんて思い浮かべるだけ愉快じゃからな」

「それは煽りッスか?」

「単なる好奇心じゃし、魔法銃をおろして欲しいんじゃが?」

「おろすかどうかはディアの行動次第ッスけどね」

「……ごめんなさい」


 さ、流石に煽りすぎた。

 アクアの目の色がなくなり無言で魔法銃をコチラに向けてきた。

 なので降参するように量を手を上げた後、苦笑いを浮かべる。


「まあ、いいッス。それよりもウチがバルクさんと出会った話ッスね」

「そうそう。で、バルクに助けられ時はどんな感じじゃったんか?」

「うーん、バルクはウチが一人でダンジョンに潜っている事に驚いていたッスね」

「えっと? それは当たり前の事では?」

「ま、まあ、バルクの突っ込みは正しんすけどね」


 そりゃワシも護衛なしで聖女様が1人でダンジョンに潜っていたら驚く自信がある。

 しかも初対面だし、バルクの反応は自然に感じる……ん?


「ふと思ったんじゃが、ダンジョンで出会った時はふたりは初対面かの?」

「多分そのはずッスよ」

「確かにバルク様は出禁で祝福契約の場には行っておられませんね」

「と、なると……どこでアクアの顔をしったのかの?」

「あー、それは」


 コチラの疑問にあからさまに反応を変えたアクア。

 彼女は瞳を左右に動かしながら苦笑いを浮かべており、何かしら隠しているのがわかる。

 というか、アクアは正直者で嘘をつくのが苦手なのは知っているからのう。


「もしかしなくても何か知っておるんじゃな」

「え、えっと?」

「出来れば私も知りたいですね」

「ひいぃ!? だ、だめっス!」


 はい、確定。

 ガクガクと震えるアクアを尻目に、ワシとルイスさんは互いに視線を合わせながら頷く。


「別に減るもんじゃないから大丈夫じゃろ」

「い、いや、ウチへの信頼度がガタ落ちするッス!」

「別にガタ落ちしてもアクア様はバルク様とは相棒関係ですよね」

「ひいいぃ!?」


 イジメすぎなのはわかるけどワシもバルクの秘密を知りたい。

 ワシらは椅子から転げ落ち壁際に逃げていくアクアを追いかけ、そのまま追い込んでいく。


「それに怒られるのは私達もなので一蓮托生ですよ」

「なんか難しい言葉を使われたような気がするッス!」

「そこは気にしなくても大丈夫なのじゃよ!」

「いやいや!? そんなわけないッス!」


 ジリジリと小動物アクアを追い詰めるワシら。

 このまま情報を吐くまで追い込もうとした時、部屋のドアからノック音が聞こえる。


「おーい、入っても大丈夫か?」

「え、あ」「こ、このタイミングでかの?」

「も、もちろん入ってもいいッスよ!」

「わかった」


 ちょ、ま、この体勢はマズイ。

 壁に追い込んだアクアが補助魔法を使ってドア近くまで逃げ、そのまま壁の前で睨み合うワシら。

 なんとか体勢を切り替えようとするが、それよりも先にバルクが入ってきた。


「ん? なんでディアとルイスが壁に語りかけているんだ?」

「さ、さあ? それよりも料理は出来たんスか?」

「まあ、コック長の手を借りながらだけど完成したよ」

「おおお! 楽しみッス」


 ここぞとばかりにバルクに抱きつくアクア。

 その姿にワシは悔しい気持ちになるけど、隣にいるルイスさんは何もなかったように口を開く。


「では皆様で食べますか?」

「そうだな。っと、ルイスの分もあるから一緒に食べてくれるか?」

「ッ!? 私はメイドですけど……」

「俺はルイスを含めたみんなで食べたいんだけどな」

「は、はい!!」


 ああ、ルイスさんまで食いついたのじゃ!

 ワシは敗北感を感じながらも、いい匂いがしたのでバルクの元に駆けていく。


「バルクよ、ワシの分はあるかの?」

「もちろん! てか、壁に話しかけなくてもいいのか?」

「さ、さっきのは忘れて欲しいのじゃ!」

「お、おう」


 なぜそうなるんじゃ!

 まあでも、バルクに聞かれるとまずい話題じゃったし、今は気持ちを切り替えてお昼を楽しむのも良さそうじゃな。

 そう思いながらワシは苦笑いで突っ込みつつ、呆れていたバルクの手を握るのだった。


 

 

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