第34話・ボスのグロウサバキンの出番……うん、まあ、こうなるよな
水上の社のボス部屋。
今までのボス部屋と違い、足元には水が充満しており少し動きずらく感じるが……。
中央にある青い光の柱から現れたのは、魚の顔に人間っぽい筋骨隆々の体に大きな槍を持つボスモンスターである、グロウサバキンが堂々とした風貌で現れた。
「コオオォ!」
「「「クギャァ!!」」」
「気持ち悪いモンスターが増えたッスね!?」
「まあでも、取り巻きは復活しないし撃ち殺してくれ」
「はいッス!」
あ、終わった。
取り巻きである通常のサバキン5体はアクアの銃撃で瞬殺されていく。
うん、
ものの数十秒でサバキンを片付けたアクアは、ニッコリと笑みを浮かべた。
「コッチは終わったッスよ」
「おう、ならディアの援護を頼む!」
「わかったッス!」
見た感じはディア優勢かな?
長槍を振り回しながらグロウサバキンとやり合っているディア。
物理戦闘力では俺よりも上なので、彼女に任せておけば大丈夫だな。
「っと、俺も働きますか」
いつもは前衛で反射を使いながら戦っているが、今回は魔法重視。
なので中衛から後衛寄りの立ち位置をとりつつ、俺は風魔法を唱えていく。
「ウィンドボルト&風の矢」
「ぐおっ!?」
「ナイスバルク!」
「それはなんか違う!?」
「そうッスか?」
ナイスバルクは筋肉用語だったはず。
アクアのボケに対して思わず突っ込みながら、俺は次々と風魔法を放つ。
するとボスのヘイトがコチラに向いたのか、相手は口から水球を吐き出した。
「べっ! ぐもっ!?」
「あ、悪いが反射させてもらったぞ」
「追加で蒼炎の砲弾!」
「ギュアァ!?」
結構えぐいな。
ディアが片手間で放った青い炎の砲弾が、グロウサバキンの土手っ腹に直撃。
魚が焼けるようないい匂いが広がり、昼ごはんを食べたにもかかわらずお腹が空きそうになる。
「なんか美味しそうッスね」
「ちょ、待って待って!? アイツはあくまでボス敵だぞ!」
「それはわかるんじゃが!!」
「ディア、お前もか!?」
焼いたグロウサバキンが美味しそうなのはわかるけども!
いちおう相手はボス的で並の冒険者がパーティを組んで戦う相手なのだが……。
コッチの火力が高すぎて一方的になっているような?
「キュアぁ!!」
「あ、蒼炎の修羅!!」
「ぎゅあぁ!!??」
「よ、容赦がないな」
本来は水属性の敵相手に炎属性は通りにくい。
その常識を知っている俺からすれば、火力のゴリ押しで不利相性をぶっ壊してない?
「チャンスッス! アサルトバスター!!」
「キュアァ!?!?」
「ここまできたらボスが可哀想な?」
「それを言ったらおしまいなのじゃよ」
一方的にボコボコにされ地面に倒れるグロウサバキン。
そこにアクアが魔法銃の引き金を引き、相手の顔面に容赦なく魔法弾をぶち当てた。
そのおかげでボスは紫色の煙に変わり、地面にはドロップアイテムが残った。
「換金用の魔石はともかく、ドロップアイテムは……」
「なんで魚の切り身が落ちているのじゃ?」
「さあ? でも美味しそうッス」
「お、おう。とりあえず一連の流れはわかったと思うし、連続で戦っていくぞ!」
「はいッス!」「のじゃ!」
俺達の狙いはレアボスから低確率でドロップする神秘の雫。
ゲームでは全ての状態異常を治せる万能アイテムだったが、イベントでディアに使うと火傷の痕が消えたはず。
なので、俺達3人は顔を見合わせた後、互いにニヤッと頬を緩める。
「とりあえず最短でボスをぶっ殺す」
「それなら火力技でゴリ押す感じかの?」
「ああ、アイテムも揃っているし全力でぶっ放してくれ」
「わかったッス!」
いちおう一週間くらい耐久できるアイテムや食材は用意してきた。
というか、父上が支援してくれるとは思ってなかったな。
ドロップアイテムを拾い終わり、リセットするために俺達は一旦ボス部屋から出ていくのだった。
ーー
ボスRTA3日目。
通常ボスのグロウサバキンはもちろん、レアボスであるゴールドシャバキンを虐殺していたが。
「なかなかレアが落ちないッスね」
「そりゃそうだろ」
「もっと早く出て欲しいのじゃが……」
普通はこんなもんだよな。
ゲームでも欲しいアイテムや装備に数日耐久とかあるので、俺は特に問題ないがアクアやディアに疲れが見える。
なのでここは休ませた方がいいと思い、丘の上でへたり込んでいる2人に声をかけた。
「次は俺が1人で戦うから2人は休憩してくれ」
「ええ!? だ、大丈夫ッスか?」
「ん? ああ、そこまで問題ないぞ」
「わ、わかったのじゃ」
ここ三日のお陰で相手の動きは大体把握した。
なので特に問題がなさそうなので、俺は背負っている収納鞄から回復ポーションとかをポーチに移動させる。
その時に2人から不安そうな視線が飛んできたが、俺はニヤッと笑みを浮かべながら彼女達の頭を撫でた。
「収納鞄は任せるぞ」
「了解ッス! ただ、無事に帰ってきてッスね」
「当たり前だろ。あ、ディアもそんな不安に思わなくてもいいからな」
「バルクなら大丈夫と思っておくのじゃよ」
「おう」
ボス相手に一人で突っ込むのは危険であるが。
ぶっちゃけ回数を回すだけなので、俺は気持ちを軽くしながらボス部屋に突っ込む。
ただこの時、想定外の事が起きるとはこの時は思ってなかった。
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