第33話・水上の社……ゲームの前情報はあるけど厄介なダンジョンだな

 ディアが『ユニークスキル・蒼炎そうえん魔法』を得たので十日ほどディアの魔法練習に付き合い。

 実戦で使えるレベルになったので、もう一つの本題である水上の社に向かった。


「いちおう目的地だけど気になることでもあるか?」

「うーん、水上の社って道中に水が流れているんスね」

「あ、この場所で雷属性系を使うと被害が出るから気をつけろよ」

「そもそもワシらは雷属性を使うやつがおらんじゃろ」

「まあ、そうだな」


 水深5〜10センチほど。

 普通に歩くだけなら特に問題ないが、戦闘になると少し厄介になりそうだな。

 ゲームの時は強属性である雷を使った時、プレイヤー・モンスター問わずにダメージを受けるので、かなり面倒なダンジョンだった記憶がある。


「ん? なんか通路からキモい魚頭みたいなやつが現れたッスよ」

「アイツは水上の社に出てくる雑魚モンスターのサバキンだな」

「ほうほう、魚頭に人間の体がくっついたようなモンスターじゃな」

「だな、って速攻で燃やしやがった!?」

「そりゃ敵じゃから当たり前なの!」


 確かにそうだけど!

 ニチアサの戦隊モノで名乗り中に容赦なくぶん殴っている感じがするのだが?

 まあでも、行動的には問題ないので俺は苦笑いを浮かべながら2人と進んでいく。


「そういえばココのボスはどんなやつッスか?」

「うーん、俺が知っている限りはさっき出てきたサバキンをデカくしたグロウサバキンだったはず」

「ほうほう、ちなみにどんな特徴があるのかの?」

「さっき現れた青い肌を持つサバキンを呼び出したり、手に持っているトライデントで物理攻撃をしてくる感じだ」

「それなら魔法銃で撃ち殺せそうじゃな」


 確かに通常種のバスなら、中距離から魔法銃の引き金を引けば有利に戦えるが。

 ただあくまでグロウサバキンの場合で、レアボスなら話が変わってくる。


「あ、今度は複数体でて来たッスよ!」

「なら範囲魔法を試してみるのじゃ!」

「おう、思いっきりやってこい!」

「うん! 蒼炎の砲弾!!」

「「「ぴぎいいぁ!!?!?」


 ……やべぇ火力だな。

 ディアから放たれた青色に燃え上がる砲弾が短槍を構えたサバキンに直撃。

 ズドオォン!と大きな音とコチラまで届く熱風を感じながら前を見ると、サパキンがコナゴナに砕け散っていた。


「ば、バルクさん? 瞬間火力ならウチよりも上じゃないッスか?」

「た、多分? というか、予想外すぎて突っ込めないんだけど?」

「やっぱりそうなんスね……」


 サバキンを一撃で倒すだけならアクアや俺でも出来そうだが。

 火力だけを見ると明らかにディアの方が上で、俺の立場がなくなるのは気のせいだろうか?


「2人ともドロップアイテムを拾ってきたのじゃ!」

「お、おう! この調子で進んでいくぞ」

「はいなのじゃ!」「は、はいッス!」


 満足そうに頷いているディアと戸惑いまくっているアクア。

 2人の姿は真反対なので、温度差を感じながら俺は気持ちを切り替えてながら奥に進んでいく。


 ーー


 水上の社を進み、ボス部屋前に到着。

 ちょうど昼休憩を挟みたいので、丘になっている場所にシートを敷いてご飯を食べ始める。


「収納鞄のお陰で食材が腐らないのはありがたいッスよね」

「ああ、そのおかげであったかいスープが食べれるからな」

「その説明口調はなんじゃ?」

「さ、さあ? なんか言いたくなっただけ」


 自分でも思ったがディアがツッコンでくれてよかった。

 ただ少しだけ冷たい視線を感じたので、暖かいスープを飲みながら今の空気を誤魔化す。


「あ、そだ。バルクは通常ボスとレアボスの特徴を知っているんスよね」

「あくまで情報だけな」

「それでいいから聞きたいのじゃ」

「お、おう。まずは通常ボスのグロウサバキンだな」


 ぶっちゃけコッチはあまり用がない。

 なので討伐RTAで速攻で倒したいので、2人にもソッチ系で話をしていく。


「通常ボスはアクアとディアが火力のゴリ押しをすれば速攻で倒せるレベルだぞ」

「ほうほう、じゃったらそこまで強くないのかの?」

「弱くはないけどチーム的に相性がいいんだよ」

「相性ッスか……」


 近接の俺が〈反射〉のスキルを使って防御に周り、アクアとディアが最大火力をぶっ放す。

 これをすれば数分で決着がつくと思うので、置いといても大丈夫なはず。

 なので一呼吸をした後、狙いである神秘の雫を低確率でドロップするレアボスの説明をしていく。


「ただレアボスの場合は少し話が変わってくるんだよ」

「ん? 通常種みたいに火力でゴリ押しすればよくないかの?」

「それは取り巻きをあまり召喚しない通常種の場合だけだな」

「あー、だとするとレアボスは取り巻きを多く召喚してくるんスね」

「そうそう。というか、無限レベルで湧いてくるから火力でゴリ押しはきつい」


 ゲームで火力だけを追い求めた尖ったパーティだと少し厳しいタイプ。

 なので俺達と少し相性が悪いが、まあでもなんとかなる範囲なはず。

 

「まあ後は戦った方が早いと思う」

「わかったッス!」「わかったのじゃ!」

「おう! てな訳で準備を整えたら速攻で凸るぞ!」

「「はい!!」」


 昼ごはんはほぼ食べ終わったし、戦う準備は整っている。

 なら後は無駄に考えずにボス部屋に凸る方が早いので、俺達は互いに顔を合わせながら拳を突き上げるのだった。

 

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