第29話・なかなか厄介な貴族の派閥と、回復ポーションの件が……。くそっ、また面倒だな

 少しお高めの個室レストラン。

 外では話しにくい話題を言える場所なので、ありがたいと思いながらディアの説明を改めて聞いていく。


「監視者の件は一旦おいて、どこの貴族が回復ポーションを買い占めたかの話になるのじゃが」

「待った。その前にアクアに貴族の派閥を説明をした方がよくないか?」

「あー、確かにそうじゃな」

「話についていけずすまないッス」

「いやいい、別に気にしなくても大丈夫だぞ」


 というか、派閥の細かい話は貴族の子供でも知らないやつが多いからな。

 俺やディアがおかしいだけで、どちらかといえばアクアよりのが多いので励ましも含めて言葉を返す。

 

「それならいいんスけど」

「ウチとバルクが無駄に知っているだけじゃよ。てか、逆に出禁のバルクがある程度知っているのはすごいだけじゃよ」

「まあ、俺には色んな情報網があるからな」

「確かに、無駄に気にするだけ負けに感じてきたッス」

「お前な……。まあ、多少マシな雰囲気になってよかったよ」


 なんだろう、状況を理解できるが納得できないモヤっとした感じは。

 微妙な違和感を感じていると、気持ちを切り替えたのかアクアがニッコリと笑った。


「それでお2人が言っている貴族の派閥ってなんスか?」

「うーん、端的に言えば仲間のグループが複数ある感じじゃな」

「ほうほう、流れ的に別のグループとは仲が悪そうッスね」

「だいぶな……」


 この辺はゲーム時でもめんどかったんだよな。

 その事を思い出して微妙に表情が歪みそうになっていると、ディアが何かを渋い事でも考えたのか自分の頭に手を置き始めた。


「それで今回の回復ポーションの買い占めはどの派閥がやったかなんじゃけど」

「おそらく一番は教会派で2番目は貴族派かなー」

「へっ? 教会派ってウチも関係しているッスよね」

「お主は教会所属の聖女様じゃろ……」

「あ、そういえばそうだったッスね」


 アクアさんや、自分の立場を忘れてない?

 頭に?の疑問符を浮かべたアクアと、目が点になりながら突っ込むディア。

 この2人のボケとツッコミを見て、俺はアハハと乾いた笑いが出そうになりながら続きを話していく。


「ま、まあ、話を戻すが。最近の出来事で一番大きかったのは祝福契約で、教会側が訓練を増やしたとかが落とし所かな」

「あー、教会は大勢の騎士と聖女と契約した契約者がいるからありえるッスね」

「ワシの前にその聖女と契約者がのんびり話しているのは気のせいかの?」

「気のせいじゃないけどスルーしてくれ」

「わ、わかったのじゃ……」


 ディアさんの鋭い突っ込みに苦笑いを浮かべるしかできない。

 なので俺とアクアは互いに微妙な表情をしつつ、少し思ったことがあるので個人的な返答をする。


「契約はしたッスけどウチとバルクは相棒ッスよ」

「そうなん……え? でもバルクは出禁なのに祝福契約の場に出られたのかの?」

「出てないけどなんか契約できたんだよ」

「ほんと、お主らはおかしすぎるのじゃよ」


 確かにおかしいが出来てしまったんだよ。

 その辺はアレクセイや一部の味方がなんとか誤魔化してくれているが、無理な時が来るかもしれないな。

 内心でヒヤヒヤしながら、また話がズレたので修正をかける。


「いったん、本題の回復ポーションの買い占めに戻して。まだ情報が足りてないから断定は出来ないけど、少なくとも貴族が関わっているのは流れ的に確定だな」

「っすねー。まあでも、教会が回復ポーションを欲しがる理由もわかるッスよ」

「と、いうと? アクアには何か心当たりがあるのかの?」

「ッス!」


 教会側の内情はアクアも詳しそうだしな。

 ここはアクアに会話のバトンを渡しながら、俺はのんびり水でも飲むか。

 そう思いながらコップを手に取り、口をつけた時に色んな意味で予想外の言葉を耳にする。


「武術の聖女が契約者や騎士達とかなり厳しい訓練をしていたのを知っているッスからね」

「ッ!? ゴホッ!」

「だ、大丈夫ッスか!」

「いきなりどうしたのじゃ!?」



 あああっ!?そっちの可能性が抜けていた!

 マジで斜め上の展開に思わずムセていると、アクアか心配そうに背中を摩ってくれた。

 そのおかげで少しマシになったので顔を上げたら、ディアが戸惑っていたので軽く頷く。


「ち、ちょっとな。それでアクアは武術の聖女と契約者の名前は知っているのか?」

「知っているも何も、前に会ったアルスさんの腹違いの少女が契約者ッスよ」

「おおう……。嫌な予感が的中した」

「えっと? バルクは契約者に何かあるのかの?」

「あるというよりも完全に敵対行動を取られているんだよ」


 アルスだけならともかく、ゲームの女主人公までいるとは。

 死亡フラグがさらに増えたのでガクガク震えていると、真剣な表情を浮かべたアクアが俺の手を握った。


「大丈夫、ウチがいる限りバルクを守るッス」

「ッ!? お、お前な……」

「よく分からぬがワシも微力ながら手助けするのじゃよ」

「ん? ああ、助かる」


 主人公2人+αはかなりきついが。

 俺にも仲間がいる事を再確認して、気持ちが落ち着いたタイミングで会話を続けていく。

 そして、答えがある程度まとまったタイミングで店員さんを呼んで料理を運んできてもらった。


〈余談〉

・女主人公&武術の聖女のせいで、もう一つの本題である金策の話をするのを忘れてました。

 なので出会ったら八つ当たりでボコボコにしたいと思います!!


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る