第28話・冒険者達からやばい情報を聞いたような? うん、?じゃなくて確定だなコレ

 冒険者ギルドの警備部隊から事情聴取が終わった後。

 周りの無事な冒険者からの報告もあり、釘刺し程度の注意で終わった。

 

「やっと取り調べが終わったッス」

「ほんとアクアは呑気なのじゃ」

「ディアも大して変わらないッスよね」

「お前らな。まあ、俺も前にやらかしたから突っ込みにくいが」


 前に冒険者ギルドでヒャッハー男と取り巻きに囲まれて暴力沙汰を起こした。

 その時は逃げと誤魔化しでゴリ押したが、今は夕方で人が多くニッコリと浮かべた警備部隊の方々に……。

 あ、うん、これ以上は思い出したくないな。

 

「ふーん、バルクも何かやらかしていたんスね」

「まあな。っと、報酬も貰ったしギルドを出るが?」

「露骨に話を逸らしたのじゃ!?」


 いやまあ、冒険者や職員さんのチラチラが微妙に刺さるから離れたいんだよ。

 なので2人と共に冒険者ギルドを離れようとした時、少し離れた場所から怒号が響き渡った。


「商業ギルドめ、回復ポーションの値段を吊り上げやがったぞ!」

「なんだと!? それは本当なのか!」

「ああ! どこかの貴族様の騎士団が大量に買い込んで品薄状態らしいぞ」

「そんな! じゃあアタシ達の分はどうすればいいのさ!」


 回復ポーションの買い占めか。

 確かゲームでも似たイベントはあったが、その時はどこかのデカい商会が買い占めて高値になった時に売却して利益をあげていたな。

 

「の、のう、バルク。少し行きたいところが出来たんじゃが大丈夫かの?」

「別にいいけど何処に行きたいだ?」

「ウチがお世話になっていた錬金術ギルドじゃ」


 確かに錬金術ギルドなら何かわかるかもしれない。

 断片的な情報だと色々とわからないので、俺達3人は互いに顔を見合わせた後にベンチから立ち上がる。


「とりあえず錬金術ギルドに向かうんスね」

「そうそう。でだ、そこからが大事なところだ」

「ん? ドユコトッスか?」

「貴族社会にウトいアクアに説明すると、回復ポーションを買い込んだ貴族がかで厄介さがかわるのじゃよ」

「へ?」

  

 貴族社会に関しては出禁されている俺よりも、半年前まで実家にいたディアの方が詳しい。

 なのでここは彼女に任せ、首をコテンと横に曲げているアクアと共に耳を傾ける。

 

「そもそも貴族は基本的に国王派、貴族派、教会派のどれかに所属しているのじゃ」

「ほうほう。そうなると他の派閥とはあまり仲がよくないとかあるッスか」

「仲が悪いくらいならまだマシじゃな」

「え? ドユコトッス?」


 大体はディアの言う通りなんだよな。

 ただこれ以上は冒険者ギルド内で話すのはヤバそうなので、俺は真顔を作りながら2人に言葉を返す。


「今更だけどその話は別の場所でした方がいいかもな」

「確かに……。そうなると前に行った個室があるレストランが良さそうじゃな」

「あー、あの料理が美味しかった場所ッスね」

「そうそう。なら、今から移動するか」

「のじゃ!」「ッス!」


 これでコチラを伺っている奴らを気にしなくてもよくなるな。

 冒険者に紛れて怪しい奴らを見つけたので、俺は内心でドキドキしながら2人を連れて冒険者ギルドから出ていくのだった。

 あ、ついでに今の情報を密偵に報告だけしておくか。


「てなわけでよろしくお願いします」

「はっ!」


 とりあえずカーマセル家の密偵に情報は伝えた。

 なので俺は不思議そうに頭を傾けているアクアとディアを連れ、改めて冒険者ギルドから離れていく。


 ーー

 

 個室付きのレストラン。

 飛び込みでいく場合は部屋代として銀貨1枚100エランが必要になるが、状況が状況なので割り切って払う。


「ではごゆるりとしてください」

「ありがとうございます」


 これで外に声が漏れるリスクはかなり減った。

 なので俺は内心でホッとしながら席に座り、ディアに向けて優しめの言葉を口にする。


「貴族社会の続きを話して貰ってもいいか?」

「もちろんじゃが、それなら最初から個室に来ればよくなったかの?」

「それはウチも思ったッスけどバルクさんは何か狙いがあったッスか?」

「うーん、まあ、俺よりもリーナや王都に戻ってきた時に呼んだ影の護衛に対してだな」

「へ? ドユコト?」「あー、理解したのじゃ」


 不思議そうに頭を傾けているアクアと、何かを察したのか口角を吊り上げたディア。

 ここは貴族社会での経験差があるので仕方ないところなので、割り切りながら続きを話していく。


「表向きには言ってないが、俺達3人は一応ワケアリで正体を知っている奴らから警戒されてそうなんだよな」

「ほうほう。そうなると冒険者ギルドに監視がいたんスかね?」

「ワシはわからないけどおそらくいるのじゃ」

「あー、下僕の件を思い出せばよかったッスね」

「そうそう」


 隠密系のスキルを使ってリザードランドに隠れてついてきた偵察係のリーナさん。

 あの時はゲームの知識や勘とかで看破が出来たけど、今回は人が多すぎて特定までは出来なかったんだよな。


「話をまとめるとウチらの正体に気づいている何者かが監視しているって事ッスよね」

「ソユコト。でだ、少し強引だけど冒険者ギルドで話していた貴族の派閥に繋がるんだよな」

「ウチらがは多そうッス」

「出禁貴族と落ちこぼれ聖女、トドメに家を追い出されたワシじゃからな」


 どう考えても名前に傷ありの3人だからな。

 一番マシに見えるアクアも平民生まれの聖女だし、上流階級からすれば気に入らないだろうな。

 なので問題大アリの俺達は互いに苦笑いを浮かべた後、改めて話し始めるのだった。

 

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