第26話・アクアはバカ火力だから比べなくてもいいと思うぞ(後への伏線)
次の日。
アクアが俺と一緒に寝ているという朝のトラブルをなんとか乗り越えた後。
今日は実戦訓練をする日なので、ダンジョン・リザードランドに潜っているのだが。
「アクアが怖い夢を見てバルクと一緒に寝たのはわかるが、他に何かあったじゃろ」
「な、なんでそう思うんだ?」
「そりゃあ、今のアクアを見れば誰でもわかるの!」
「あー……」
長槍を持っているディアが全く働けてない。
その理由はテンションマックスのアクアが、モブ敵が現れた瞬間に魔法銃で撃ち殺してしまうから。
その姿は理由を知っている俺でも苦笑いを浮かべるしかなく、ディアに感じては何かあっただろと鋭い視線を向けてきた。
「もしかして子作りでもしたか?」
「す、すとれーと……。てか、俺と同い年のディアに子作りと言われると反応に困るんだけど?」
「ほうほう、その戸惑い的にはやってなさそうじゃな」
「昨日は添い寝したくらいだよ」
ディープキスをしてユニークスキルを手に入れましたとは言いにくい。
なので頬が熱くなりながら、目を逸らしていると魔法銃でブラウンリザードを討伐したアクアが嬉しそうに戻ってきた。
「バルクー!」
「ちょっ!? まだ敵がいるかもしれないんだぞ!」
「大丈夫、もし現れたらディアが倒してくれるッスよ」
「わ、ワシの負担が大きすぎないかの?」
昨日の出来事で呼び捨てになったが、こちらの方がしっくり来るのは気のせいだろうか?
ウキウキで抱きついてくるアクアを受け止めつつ、俺は彼女の頭を優しく撫でていく。
「いちおうダンジョンの中なんだが」
「ムフフ、そこはバルクの索敵力を信じているッスよ」
「お、おう。っと、ディアもドロップアイテムを拾ってくれてありがとう」
「今のところはこれくらいしか出来ないからのう」
「いやいや、ソロでブラウンリザードを倒せるから充分だろ」
アクアが無双する前に、ディアもソロではぐれのブラウンリザードを討伐していた。
少なくとも足手纏いではないのはわかるので、良さそうな言葉を返すが本人の気持ちが沈んでいるように見える。
「あくまではぐれじゃがな」
「……魔法銃を持ったアクアと比べなくてもいいぞ」
「そ、そうかの?」
「誰にだって適正があるからな」
魔法銃装備のアクアはハッキリ言えば他の聖女よりも強い。
というか、化け物火力すぎて攻撃タイプである武術の聖女の立場がなくなるレベル。
まあ向こうは
「アクアがすごいのはあるけど、ディアだって地面に落ちている素材を積極的に見つけてくれるじゃん」
「それならよかったのじゃ!」
「おう、ってお前も抱きついてくるのかよ」
「横からだから大丈夫なのじゃよ!」
背中は収納鞄を背負っているから無理だけど。
2人に前と右横から抱きつかれた為、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
そして2人が満足するまで俺は動けなくなるのだった。
ーー
次々と現れるブラウンリザードを蹴散らしながらボス部屋に到着。
最初の1回は連携の練習をしたいので、俺達は打ち合わせをしてから突っ込む。
「ガオオォ!!」
「2人とも来るぞ!」
「ッス!」「のじゃ!」
前回と同じく通常ボスのグランドリザード。
相手は勢いよく突っ込んできたので、まず前衛に俺が立って空月のツルギを構える。
「ハアァ、
「きゃううぅ!?!?」
「あ、パワーショット!」
「ギャッウ!?」
「え、え、ボスの巨体を吹き飛ばしたのじゃ!?」
一応ディアに〈反射〉のユニークスキルは説明したが、五メートルを超えるグランドリザードが吹き飛ぶのは予想外だったみたいだな。
ただ、今は突っ込む暇がないので、俺は戸惑っているディアに指示を出す。
「ボスはひっくり返したし、柔らかいお腹を攻撃してくれ!」
「わ、わかったのじゃ!」
「ウチは邪魔にならないところから射撃するッス!」
「おう!」
俺が左でディアは右、中央はアクアが魔法銃の射撃で援護。
この動きが俺達の中では基本的な動きなので、息を合わせながら攻めていく。
「ツインスラッシュ、アクセルターン!」
「トリプル突き、一閃ストライクなのじゃ!」
武術系のスキルを使い、ヒックリ帰っているグランドリザード。
一方的にボコボコにされているボスは、バタバタともがき始めたが、チャンスなのは変わらない。
「ぐ、ぐおおぉ!!」
「ツッ! 少し下がるぞ!」
「了解なの!」
「ならクラスターブラスト!!」
「「あ」」
グランドリザードが起き上がるタイミングで、俺とディアは退避したが。
ボスが起き上がる時にアクアの大業であるビーム砲が相手にささった。
「ぐ、グアアオォ!?!?」
「あの、バルク。アクアって攻撃に関してはめちゃくちゃ強くないかの?」
「だ、だな……。まあでも、俺の想像よりもかなり強いぞ」
アクアの弾丸を受けて紫色の煙になって消えていくボス。
トドメはさせたのでドロップアイテムが落ちていく中、俺とディアは互いに顔を見合わせる。
「フフッ、役に立ててよかったッス!」
「役に立つどころかお前1人で無双してないか?」
「そこはノーコメントッス。あ、ディアはボス戦どうだったッスか?」
「なんというか、2人がここまで強いとワシの立場がないのじゃ」
あー、使っている武器がアイアンランスだからな……。
こちらが使っている装備よりも数段落ちる性能だし、ソッチの事も考えないとな。
「うーん、装備がよくなればディアも火力を出せそうだな」
「でもいい装備は高くないかの?」
「お金ならコイツを倒しまくれば稼げそうッスよ」
「た、確かに……。って、ボスを何回も倒す気なのかの!?」
「へ? そんなの当たり前じゃないッスか!」
というか、数日前にボス周回で驚いていた側なのに、今は真顔で頷いている。
その代わり身の早さに、俺が突っ込む間も無くアクアはバッと動き始めるのだった。
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