第25話・俺の秘密……やばい、自分の不安な気持ちが抑えきれない
俺の秘密。
すごく言いにくい内容なので、不安そうにコチラを見てくるアクアを気にしながら話し始める。
「アクアは憑依って知っているか?」
「憑依? いや、知らないッス」
「なら簡単に説明するけど、今のアクアが小さな子供に魂と意識だけが移ったらどうする?」
「そんなのあり得ないッス……って、まさか!」
「ああ、そのまさかさ」
初手に爆弾レベルの発言。
コチラの言葉を聞いたアクアは口を大きく開けたが、何か納得がいったのか軽く頷いた。
「ディアやルイスさんから聞いていたバルクさんの変化は、その憑依が理由なんスね」
「元の俺はその辺にいる20代後半の平民だけどな」
「ああ、それで市場に行ってもそこまで驚かなかったッスか」
「そうそう」
元の世界の話は一旦置いといて。
最初の問題がなんとか解決したので、ここからが本番だと思い続きを話していく。
「でだ、俺が怯えている理由は憑依したコイツ、バルクが結果的にアルスと聖女に殺されるからなんだよ」
「ッ!? そんなことが……」
「
この世界にはテレビゲームは存在してないので説明が難しいが。
もはや原型が残ってなさそうなレベルで驚いているアクアを見ながら、自分の選択が合っているか不安になってくる。
たたココまだ話したので、もう一度覚悟を決めながら口を開く。
「あくまで俺が知っているのは物語のお話なんだが……。その内容と登場人物や隠しエリアの場所がほとんどおんなじだったんだよ」
「で、でも、あくまで物語の世界ッスよね」
「そうなんだけど、本来のバルクのやらかしをアクアは知っているだろ」
「ッ! 確かに大問題で更に悪化すると考えると、よくて追放ッスよね」
そうなんだよ。
今のバルクは、元の世界の俺が憑依したことでまだマシになっている。
でもそのまま成長したバルクは、物語的にカマセ犬になって間接的に主人公達に殺される。
「そうなる……。でだ、予測できる未来を知っている俺は抗うために色々とやっていたんだよ」
「ああ! それでウチやディアを勧誘したんスね」
「いや待って、ディアは勧誘したけどお前はゴリ押しでウチに来ただろ!?」
「そうだったッスか? まあでも、細かいことは気にするだけ負けッスよ」
「お前な……」
ほんとアクアは顔の皮が厚いな。
さっきまでの不安が飛んでいったのか、今の彼女は嬉しそうに俺の膝の上に乗ってきた。
というか、いやらしそうに自分の唇を舌でペロッと舐めており、小柄なのに美しく見えてしまう。
「確かにバルクさんが知っている未来が物語の現実かも知れないッス。でも未来なんて変えられるッスよね」
「ッ! それは」
「少なくとも聖女のウチはイキリ男とじゃなくてバルクさんと契約を結んだッスよ」
「た、確かに。カマセ犬キャラのバルクにはありえないことだけど」
「ソユコトッス」
アクアに言われてその通りと頷いてしまった。
自分でなんでも知った気になって、原作基準に考えすぎてたな。
反省する事が多すぎるので、気分が重くなっていると彼女がニッコリと優しそうな笑みを浮かべた。
「物語のウチがどうなっていたか知らないッスけど、今のウチはバルクさんと一緒にいるのが楽しいッス」
「ハハッ、アクアがそう思ってくれるのはありがたいよ」
「ッス! それに今のバルクさんなら救いたいッス」
「ッ!? こ、これは俺の問題でお前は……」
「ウチらは
つっ!?
なんで俺はこんな簡単な事も気づけないんだろうな。
つくづく自己嫌悪に落ちいるが、今は真剣な表情をしているアクアから目を逸らさないようにしないとな。
内心でビクビクと怯える気持ちをコントロールしながら、改めて彼女の話に耳を傾ける。
「こんな俺でもか?」
「もちろん! バルクさんはバルクさんですし、落ちこぼれのウチを救ってくれた貴方なら一生ついていけるッス!」
「お、お前な……。まあでも、これで踏ん切りはついたよ」
「おお! やっとウチと婚約するッスか?」
「なんでそうなるんだよ!?」
確かにクラッときたが、結婚とか婚約とかわからないんだよ。
なのにめっちゃ頬を膨らませながら、俺を押し倒そうとするな!?
色んな意味でガードを固めていたが、ふとした拍子に隙をつかれて彼女の唇が俺の唇に直撃した。
「むぐっ!?」「ムフフッ!」
あ、やべぇ。
ぶつかった衝撃で歯が痛いのはあるが、アクアが嬉しそうな声を上げながら舌を入れ込んできた。
なので俺の口内は彼女の舌に蹂躙し始め、しかも強化魔法を使っているのか、ガッチリと抱きしめられているので離れられない。
むむむう!?」
「ぷはぁ、ご馳走様ッス!」
「はは、お前な……」
『バルク・カーマセルとアクア・ハルカナのソウルリンク完了。互いにユニークスキルを獲得しました』
「「へ??」」
どこか聞き覚えのある女性寄りの機械音。
ソファーの上で重なり合っている俺達は、互いに顔を合わせながら目が点になった。
「ゆ、ユニークスキル〈聖源魔法〉ってなんスか?」
「こっちもユニークスキル〈空神魔法〉と言われたんだけど?」
「「え?」」
俺の知らないユニークスキル。
まあ、〈反射〉もユニークスキルではあるが、名前的にわかりやすかったのと転生報酬で割り切ってはいた。
ただアクアとキスする事で、知らないユニークスキルが発現したのは流石に想定外。
「と、とりあえず今日は寝るか」
「そ、そうッスね。あ、自室に戻るのめんどいのでこのままベットインしましょう!」
「おまっ、はぁ……。ただ添い寝するだけだぞ」
「フフッ、もちろんッスよ」
恋愛をしたことがない俺には今の気持ちがよくわからない。
ただアクアと一緒にいるのは楽しいので。
苦笑いをしながら、ラッコみたいにへばりついてくる彼女と共に部屋のベッドに戻るのだった。
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