第24話・どうしていくかの確認と、俺の秘密の一部がアクアに勘づかれていたとは……
アクアにガクガク揺らされてギブアップ宣言をした後。
なんとか気持ち悪さがマシになったので、息を整えながら続きを話していく。
「まず初めにレアボスは通常ボスよりかなり出にくいのは3人も知っているよな」
「そうなんスか?」「私も知らなかったです」「ワシは一応しっておるぞ」
「……ルイスはともかく、アクアはリザードランドの時を思い出して欲しい」
「あー、あのイキリ男と腹黒女と再会した場所ッスね」
「ワシにはよくわからないが、そんな奴らがいたのじゃな」
ま、まあ、いちおう原作の主人公とメインヒロインなんだけどな。
確かに悪く言いたい気持ちは俺もあるが、今は周回の話がメインなのでソッチを喋る。
「クズ2人はいったん置いてボス周回の方だけど、今回の狙いである神秘の雫はレアボスからドロップするんだよ」
「それってレアボスが出るまで通常ボスをぶっ倒せばいいんスか?」
「いやいや!? そんな簡単に通常ボスを倒せるのかの!?」
「うーん、倒せるかはやってみないとわからない」
「なんか一気に不安になってきましたね……」
自分の計算上ではいけるはず。
ただあくまでゲームの話で、コンテニューなしのリアルではわからない。
そこが引っかかるから、少し悩んでいるとアクアが苦笑いを浮かべながら俺の手を握った。
「試しに行くだけでも良さそうッスね」
「確かに無駄に考えるよりは行動する方がよろしいかもです」
「2人とも、そうだな……」
焦りすぎだったかも。
ディアの件は解決した気持ちが先攻して、視野が狭まっていたな。
内心で反省していると、目の前の先に座っているディアが呆れたようにハアァとため息を吐いた。
「ワシの火傷を治してくれるのはありがたいが、それでバルク達が傷つくのは見たくないのじゃ」
「ああ、すまない」
「フフッ、でもまあ。個人的にすごく嬉しいのう」
「バルクさんはウチのッスよ!」
「それはどうかの?」
わあぁ、なんだろう。
軽く頭を下げた後、顔を上げてディアと視線を合わせる。
すると彼女はドロっとした赤い瞳でコチラを見てきたので、ゾワっと寒気を感じた。
「バルク様は愛が重い方々に好まれるのですね」
「お、おう。ま、まあ、話をまとめると試しに水上の社に行って判断するのがいいんだな」
「そうッス!」
とりあえず話がまとまってきてよかった。
ただゲーム時代の神秘の雫はレアボスから低ドロップなので、出来れば百周くらいはしたいが。
まあでも、ゲームならともかくリアルで百周なんてめっちゃ時間がかかるし、体力や装備の耐久値的にきつそうだな。
「そうなると準備を整えて明日の朝から行くのが良さそうだな」
「ではコチラの方で馬車の手配とアイテムの準備をしておきますね」
「頼んだ」
「はっ、おまかせを!」
ルイスが動いてくれるのは個人的にありがたい。
そう思いながらデザートのクッキーが運ばれてきたので、俺はポリポリとかじりながら不安そうなディアに声をかける。
「不安に思うのはあるかもだけど、無理なら速攻で引き返すよ」
「ほんとかの?」
「もちろん。てか、お前らには死んでほしくないからな」
「ッ! う、うん!」
「「……」」
コイツらは死んでほしくない。
少なくとも俺が主人公や別の聖女、他の誰かに殺されてもコイツらだけは。
自分の中でそう覚悟を決めながら、残りのクッキーを食べていく。
ただこの時、アクアがとても不安そうにしていたことにこの時の俺は気づかなかった。
ーー
星が輝く夜。
今日も1日やる事が終わったのでベッドに入って寝ようとした時、トントンと扉がノックされる音が耳に届いた。
「バルクさん起きているッスか?」
「ん? ああ、起きているぞ」
「それなら入るッスよー」
「お、おう」
どこか不安そうな声をしているアクア。
何かあったのか気になっていると、部屋の中に入ってきた彼女は涙目を浮かべており、どう見ても沈んでいるような感じが。
「な、何かあったのか?」
「ええ、少しお話を聞いて欲しいッス」
「……わかった」
流石にボケられる雰囲気じゃないな。
気楽に話せなさそうなので、俺とアクアは部屋にあるソファーに隣同士に座って話し始める。
その時にアクアが俺の手を握ってきたが、少し震えていた。
「ねぇバルクさんはウチの事をどう思っているッスか?」
「どうって大切な相棒だけど」
「フフッ、バルクさんとウチは相棒ッスよね」
やべぇ、どうすればいいんだ?
重苦しい空気が流れる中、アクアが辛そうな表情を浮かべながら抱きついてきた。
どこか崩れそうになっている彼女に、俺は痛みを耐える感じで歯を食いしばる。
「ウチはバルクさんに救われたッス。でもバルクさんは
「……それは」
「今なら誰もいないのでバルクさんの秘密を話せるッスよ」
俺の秘密。
この世界はゲームに近い世界で、俺がやっている事はあくまで自分が生き残るために動いている。
その為にアクアやディアを利用して、ゲーム知識を使って救ったつもりになっているだけ。
「俺の秘密……」
「少なくとも何もないわけじゃないッスよね」
「ッ!」
ここまで来たら話すしかないか。
ズシリと重くなる気持ちを感じながら、俺は覚悟を決めながらアクアに話し始めるのだった。
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